大不況に追い打ちをかけそうな豚インフルエンザ
2009年 04月 28日
■豚インフルエンザの拡大が懸念されてきた。WHO(世界保健機関)は警戒レベルをワンランクあげて「フェーズ4」にした。このインフルエンザが4000万人が死んだといわれるスペイン風邪のように「パンデミック」(世界的大流行)の兆しをはっきり見せ始めたということだろう。
■100人を超す死者のでているメキシコでは、壮健な20代に死者が多くなっているとのことで、これは典型的なパンデミックの特徴である、と専門家が昨日、どこぞのテレビで語っていた。アメリカ発の「世界」大不況にみまわれたと思ったら、追い打ちをかけるようにメキシコ発の「世界」大流行にみまわれ可能性がでてきた。
■スペイン風の大流行で世界はすくなからずかわった。同じように豚インフルエンザが大流行し、100万単位の人が死亡したとしたら、世界はかわる。どのような世界にかわるのか、予測がつかないところが、怖い。そうでなくとも将来に希望がもてず不安になっている人に、パンデミックは追い打ちをかけるにちがない。
■文明が「進歩」し、便利で効率的な社会になっても、いっこうに人は幸せにならない。戦後日本についていえば、1990年代初期のバブル崩壊のころから、幸福感をいだく人が急激にへっているという気がする。社会から、「夢」や「希望」が減ってしまったということである。なぜこういうことになったのか、理由はそう単純ではなく、いろいろなものが複合して、社会の空気を「複合汚染」させてしまった、といえそうだ。
■では「複合汚染」の空気を誰がつくりだしたのか。「拝金主義」が是認される世相になったことも、大きな要因だろう。これに大きく「貢献」したのは、政治家であり官僚であり、財界であり、そしてマスメディア……といっていいだろう。つまり、社会に強い力や影響力をもった層の「心の劣化」が、空気の複合汚染を加速した……と指摘できそうだ。
■彼等指導層にすべてとはいわないが、過半数の人には「謙譲の美徳」などという言葉は無縁のようだ。「足を知る」「辛抱」などという言葉とともに死語になってしまった。今を救うには「死語」になっている言葉を生き返らせることからはじめる必要がありそうだ。死語になった言葉を自身の生活のなかにとりこみ、その言葉を生きている人の、なんと少なくなったことか。ただ、まだ10人に1人ぐらいはいそうなので、そこに希望がある。