コラム


by katorishu
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マニフェストもいいが、日本を引っ張ってきた政権への検証が大事

  8月12日(水)
■麻生政権の緊急経済対策が、すこしは効果を発揮したのか、最近、株価がやや上昇している。アメリカでもオバマ政権が異例の財政支出策をとったおかげで、株価はさげどまり、一部には経済崩落は底をとうち今後は上昇するのでは、という期待感が漂っている。一方で、それは見せかけだけで、「二番底」がやってくると懸念する声もある。世界の経済システムが、とにかくアメリカを中心にまわっているので、ここが「景気回復」をしないことには、ほかも回復のしようがない。
 じっさい、日本の諸業種での落ち込みはひどいものだ。一例として、今年1-7月に発生した病院・開業医の倒産は38件で、昨年1年間の35件を7月の段階で上回ったという。負債総額は204億9300万円で、これも昨年の累計182億2400万円を超えたそうだ。( 医療介護CBニュース)

■「世界第二の経済大国」としてアメリカを補完してきた日本政府の責任は重い。例の「竹中・小泉改革」である。この突然変異のように出現した政権の評価は、10年くらいたってみないと本当のところはわからないのだが。
 今のところ、この政権の果たした「負」の役割は大きい。とくにブッシュのネオコン一派が打ち出した「市場経済原理主義」やイラク戦争を推進した「補助エンジン」としての役割。これはそう簡単に忘れてはいけないことだろう。

■小泉氏はブッシュの内外政策にいち早く反応し、これへの全面的支持を表明した。日本はアメリカの国債を大量に買っており、これは「返還の可能性」が少なく、アメリカに「さしあげた税金」のようなもの――といっても過言ではない。宗主国への上納金といってよいほどで、この上納金がなかったらブッシュ政権のうちだした金融政策も、これほど一時的な成功をおさめなかったであろうし、その崩壊による損害も、すくなかったにちがいない。

■そこまでアメリカに寄り添い、二人三脚でやってきて、結果として、日本の伝統文化を崩壊の危機に追い込んだ点は、否定できない。この政権の功罪や公約の実現の程度を、いまこそ厳しく検証する必要があるのだが、マスコミはどうも、この検証から逃げている気がする。政権とともに、「改革」を煽ったことの疚しさがあるのかもしれない。

■お人好しで我慢強い国民も、さすがにここ何年かの格差の拡大や種々の劣化には、怒りをおさえかねている。週刊誌の記事などでも、怒りの端的な現れとして、自民圧勝、自民大敗が毎週のように報じられている。ただ、善し悪しは別にして、根は保守的な国民である。ごく少数の果敢な人間をのぞいて、小心翼々、右を見て左を見てから自分の意見をはく――というのが、一般的傾向である。

■民主党が政権をとったとして、現状を大きく変えることには大変な抵抗が生じるに違いない。鳩山党首が首相になる可能性が強いが、日本的な「和」が働き、妥協、妥協の連続で、ダッチロールがはじまる可能性も強い。そこをどう乗り切り、国民の活力を引き出し、多くの国民が生き生きと日々を生きられる社会を築くことができるか。期待したところだが、過剰な期待は禁物である。

■それにしても、05年の「小泉選挙」での、国民の投票行動には驚き呆れ、失望したことを、思い出す。語弊があるが、あいかわらず「民度」は低いと、あの選挙にフィーバー振りを見て思ったことだった。「理」よりも「情」で動いてしまうのである。こういう「民」は、じつは指導層にとって「都合の良い」存在である。日露戦争後、ポーツマスの講和会議の結果に怒って「日比谷焼き討ち事件」が発生したが、あのころより「情報」が膨大に増えていているのに、国民の気分は、さして変わっていないなと思ったりする。

■日比谷焼打事件については、以下に平凡社百科事典から一部引用します。
日比谷焼き討ち事件とは、《日露講和条約に反対する民衆暴動。日露講和反対運動は1905年8月末,講和会議の内容が報道されて以降,約1ヵ月間全国的展開をみたが,その頂点となった,都市型暴動の最初の事件である。ポーツマス条約に不満を抱く国民の一部は,かねて20億円の償金,沿海州の割地などを主張しており,《万朝報》《大阪朝日新聞》をはじめ各紙は条約破棄の論調に終始した。条約締結日の9月5日,対露同志会,黒竜会を中心とする対外強硬論者の9団体が主催して東京日比谷公園で〈講和条約反対国民大会〉を計画した。政府は治安警察法によって大会を禁止したが,会場周辺には数万の民衆がつめかけ,警官隊と衝突して公園内になだれ込んだ。大会幹部は開会を宣言し,憲政本党の河野広中が座長をつとめ〈講和条約破棄決議〉〈満州各軍に打電すべき決議〉〈枢密顧問官に対する決議〉を採択し約30分で終わった》

■このあと、自然発生的な暴動が起こったのである。国民の多くは、戦勝の報道と過大な講和条件への期待を裏切られたことに加え、戦争で多大な犠牲が生じたことで、怒りを爆発させた。そうして、桂太郎内閣の御用新聞である国民新聞社,内相官邸を襲い,市内二つの警察署,大部分の分署・派出所・交番を焼き打ちし,キリスト教会を打ちこわしたりした。《翌6日もその事態が続き,深夜緊急勅令をもって戒厳令の一部を東京市および周辺5郡に施行して近衛師団を出動させた。言論統制,新聞・雑誌の発行停止を行ったため,暴動はしだいに鎮静し,戒厳令は11月29日に解除された。死者17人,負傷者2000人,検束者2000人に及んだ。兇徒聚衆罪で起訴された者は311人,うち有罪87人でその大部分は職工,人足,車夫などの都市民衆であった》

■《東京の暴動は大きな反響を呼び,全国各地の講和反対運動は急速に広がった。県・市・町民大会等の反対決議は165を超え,ほとんどの地方大都市で大規模な集会が開催された。これは国民とくに都市民衆による排外主義・膨張主義的行動の全国的あらわれであったが,他面では藩閥専制に対する抵抗運動でもあり,大正デモクラシー運動の出発を意味するものであった。(橋本 哲哉)》

■日露戦争は「連合艦隊の奇蹟の勝利」などと喧伝され、日本の「大勝利」のように思っている人が多いと思うが、実情は「かろうじて」講和にこぎつけたもので、息も絶え絶えの勝利であった。そんな実情を政府は国民に秘匿して戦争を遂行してきたので、あんな結果になったのだが、いつの時代でも、マス(大衆)は煽動にのりやすい。個としては冷静な判断をくだす同じ人間が集団の中にあると「マス・ヒステリー」にまきこまれてしまう。

■人間の弱さなのかもしれない。だからこそ、CMというメディアが機能する。この機能を最大限発揮して繁栄を誇ってきたのが、テレビである。今、テレビメディアの危機がいわれ、次はインターネットが本流に……ということになっていくであろうが、今度はインターネットという新しいメディアによってでマスが巧みに煽動され、別種の形の「マス・ヒステリー」が生まれるに違いない。こういう呪縛から、残念ながら人類は逃れられないようだ。少々の知恵をもったが故に、つまずき、怒り、涙し、そして愚かさから抜け出せない人間という種。こういう種の一員である自分。この視点から世の中を見ていくと、また違った光景が展開する。この光景を形にしたいと、いつも思っているのだが……。言うは易く、書くは難しである。
 本日も半分、妄想の世界にひたりながら、漫画と昭和のエロ・グロ・ナンセンスについての資料類を読んだ。本という形に結実させて、公表したいと思っているのだが、うまく形になるかどうか。おなぐさみである。
 
by katorishu | 2009-08-12 23:26 | 政治