コラム


by katorishu
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タクシーの運転手がいきなりいった。「最近のテレビはひどいね」と

 11月18(水)
■新公益法人移行についての説明会に霞ヶ関までいく。官庁、官僚ともにあまり好きではないのだが、立場上、よく足を運ぶことになってしまった。分厚い書類をわたされ、説明をうけたが、もともと法律的知識に弱く、経済関連と法律関連はあまり関心をもてなかったので、不勉強でもあり、この類の文書は外国語のようだ。

■午前中早起きして出向いたのだが、そのあと放送作家協会の事務局にいき、さらに某シナリオ学校にいき、夕方には江戸東京博物館に、いずれも「打合せ」「取材」等でいった。そのため、原稿書きは1時間ほどしかできなかった。1000枚以上になってしまった時代ものの小説の改稿を行っている。500枚に縮めて編集者にわたしたのだが、無理があったようで、説明的になっている部分も多い。要素を減らす作業をしているが、この作業を行うと、中盤が全面的な改訂になりそう。この部分日本ではなく、しかも古い昔の話なので、わからないことばかりで、難渋している。最終目的は映画化なのだが、10億円の製作費が必要なので、いまだ足踏み状態が続く。

■他にも大きな仕事になりそうな作品があるのだが、結論が出ないまま「待機中」のものばかり。「冷蔵」になり「冬眠」してしまいそうだ。景気の急落とからんでいることはいうまでもない。名目のGDPはちょっとあがったようだが、政権交代をもってしても、日本経済が「二番底」に沈む懸念は次第に高まってきた。税収が40兆円を切ってしまい、財政が深刻な状態なので、政府は有効な政策をうちだせない。すでに完全なデフレであり、さらに消費は冷え込み、倒産や失業が世にあふれそうだ。「食えない人」の急増は世を暗くさせる。すでに鬱の空気がエーテルのように社会を覆っている。

■こんな惨状をつくりだしたのは、バブル崩壊後、歴代の自民党政権のとった経済政策であったことは、忘れないほうがいい。欧米の先進国も大不景気の嵐のなかにいるようだが、ひとりひとりの暮らしぶりを見てみると、日本ほど悪くはないようだ。「世界第二」とふくらみすぎた経済だからこそ、しぼんだときの落ち込みもひどく、傷みも大きい。ついに11年連続で自殺者が3万人を越えたという。

■ところで。本日、久しぶりに乗ったタクシーの運転手が、いきなり「お客さん、最近のテレビはひどいね。安っぽくてどうしようもない。仕事を終えて家に帰ると、やることもないからテレビをつけるんだが、ひどすぎて。もともとテレビドラマなんか好きだったんだけどね」と話していた。六本木から乗ったのでこちらがテレビ関係者と思っていったのかどうか。(どう見ても普通のサラリーマンにも年金生活者にも見えないので)有料で見られるテレビでは、それなりのものをやっていますよ、といっておいたが。ぼくも、どちらかといえばテレビは好きで毎日、テレビをつけっぱなしで仕事をしていたのだが、今は有料のテレビ以外はあまり見ることもない。なかには味のある番組もあるのだろうが、見つけるのに苦労する。

■「わかりやすさ」ばかりを追求してきた果てに「幼稚化」がきわまった、というべきだろう。なんにでもすぐにスーパーをくどいようにいれる番組の氾濫である。スーパーの文字を読んでいたら、発言者の表情の揺れなども、わからなくなるのに。本の編集者までが「わかりやすく」「わかりやすく」とバカの一つ覚えのようにいう。誰にでもわかることは、類型的で面白いはずもないのに。もっとも、何度読んでも「わからない」文章は、単なる駄文で、書き手の頭の悪さを示しているだけである。二度読んで、なるほどと思わせる文章や、二度見てなるほどと思えるような映像作品は、たいてい深い内容のものが多い。もっとも、ぼくの文も比較的、わかりやすいとよくいわれる。ということは、面白くないということなのか……。
by katorishu | 2009-11-19 01:42 | 文化一般