マイケル・ムーア監督の新作映画『キャピタリズム』はドキュメンタリーの傑作
2009年 12月 05日
■本日公開のマイケル・ムーア監督の『キャピタリズム』を日比谷のシャンテ・シネで見た。マイケル・ムーア監督のドキュメントは諷刺と笑いがあり、独特の角度から問題の本質に切り込むので、大変興味深い。今回は世界経済大不況をまねいたアメリカの金融資本の横暴さ、非人間性を容赦なくえぐり出す。
■強い雨が降ったにもかかわらず、シャンテ・シネは9割近い客のいり。この映画館、いつもは若い女性が多いのだが、本日は男性客が多かった。それも経済の第一線で働いていると思われる30代から40代にかけての男性が多かった。定年で年金暮らしと思われる引退層はあまりいなかった。2時間で小学生にもわかるようにアメリカ金融資本の本質を描いたとのことで、アメリカの一部富裕層や銀行資本のやり方をこてんぱんにけなす。富裕層以外の人は、思わず拍手したくなるのではないか。
■1%の富裕層がすべての富を独占し、90%の貧困層をうみだすアメリカの「デリバティブ」等の金融資本主義。こんな面妖な制度が一歩間違えば日本にも本格的に導入されかねなかった。「小泉改革」の本質はアメリカ型の金融資本主義を日本へ導入することである。すでにかなりの部分、日本社会にも伝染してしまったが、郵貯などの巨大な資産をアメリカの金融資本に奪われることは、かろうじて制止できた。危なかった、とあらためて思う。
■共産主義は破綻したが、資本主義も破綻に瀕しているといっていいだろう。この映画にはマイケル・ムーア監督一流の「プロパガンダ」がこめられているが、今ほどマイケル・ムーア監督流のプロパガンダが必要なときはない。アメリカという世界最強国家の歪みは世界に伝染する。1%の富裕層のためにある世界など、まがまがしく、おぞましい。日本はつい20年ほど前までは9割が中流意識をもっており、中間層が厚い社会だった。それがバブル崩壊後、中間層が消えて一握りの富裕層と多くの貧困層という二極分化した社会になってしまった。こういう社会から早く決別する必要がある、と映画を見つつ思ったことだった。
■「会社は株主のもの」などといってアメリカ式金融資本主義を賞賛していた、テレビ等で声高に話していたエコノミストや某有名テレビキャスター。彼等はこの映画を見てどんな感想をもらすだろうか。多分、見ないのでしょうね。政治家はもちろん、ビジネスマンや自営業者等々、社会とかかわって懸命に生きている人々必見の映画である。笑えるシーン、泣けるシーンも随所にあり、「エンターテインメント作品」としても一級の作品である。こういう映画を作って配給できるアメリカ社会の懐の深さも、またすごいと思ったことだった。