コラム


by katorishu
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 リュック・ベンソン監督のフランス映画『アデル』は一級のエンターテインメント作品

 7月10日(土)
■ビッグサイトで行われた「デジタル・パブリッシング・フェア」にいった。昨年にもまして入場者数、出展数とも多くなっていると感じた。ぼくもからんでいる「Fan+」の展示もあり、計4時間ほど興味深く見て回った。目玉は有料のセミナーで、これに参加したかったのだが、事前予約をしていないので無理だった。イスラム圏のサウジアラビアやイランなどからの出品もあり、活況をていしていた。世界がデジタルに傾斜しつつあることを、肌で感じる。

■会場で現在仕事をともにやっている関係者にあい、意見交換。疲れたのでレストランにはいりビールを飲んでしまった。で、仕事はあきらめ、あとからカミサンもきたことだし、隣の駅で降り、シネマアメージュでフランス映画『アデル』を見た。リュック・ベンソン監督作品で、SF娯楽ファンタジーといったところ。出だしから面白いカットの連続でひきつけられた。ハリウッド映画とはひと味ちがうパリ風のエスプリのきいた会話がかわされ、知的なエンターテインメントの要素もある。ユーモアたっぷりのやりとりで素直に楽しめた。

■さすがフランス映画と思った。SFXの技術を多用し、そうとう経費と時間をかけている。深みはないが、2時間近く「非現実の世界」に遊べた。残念ながら今の日本映画でこれだけの経費と時間をかけて制作される作品はほとんどないのではないか。外国映画の多くは最初から世界市場で「売れる」ことを前提につくっている。その点、日本はきわめてドメスティックで、外への関心が薄い。企業でも官庁でも「海外留学」を希望しない若い人が増えているという。

■今年、アメリカの名門大学ハーバードに入学した日本人は1人であった、となにかで読んだ記憶がある。外への関心がうすれ、どんどん内向きになっている。文化や文明は「異なったもの同士」「異なった価値観」が激突したところから常に生まれるものである。多くの国民が内向きになり、外にたいしては「観光」などしか関心をもたなくなると、さらに日本は世界の流れからとりのこされる。日本映画も海外市場を重視した作りにかえていかないといけないのに、現実はそうなっていない。日本のいたるところで顕著なのは、「戦略」「世界戦略」の欠如である。
by katorishu | 2010-07-10 22:17 | 映画演劇