コラム


by katorishu
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

理論社が倒産、時代はウェブだが、ビジネス・モデルの構築はそう簡単ではない

 10月7日(木)
■比較的「良書」を出版している理論社が会社更生法を適用され倒産したという。倉本聰氏の脚本集などをだしていて、たしか「シナリオ文学」という言葉を定着させようとした出版社ではなかったか。地味ながらしっかりした版元だと思っていたのだが、倒産とは。

■出帆不況はすでに20年近くつづいていて、どこも体力が弱っている。ここへきて大不況とスマートフォンがあいついで出て電子書籍が注目されるようになり、既存の紙の本は一層厳しい事態にある。早期退職制度のもと定年前に辞めた編集者を何人も知っている。

■本日、ときどき顔をだす大崎の本屋にいったところ、店内の様子がへんだと思った。以前は本棚になっていたところが文具売り場になっていたのだ。それだけ書籍のコーナーが縮小されたということである。書籍の主流は新書本と文庫、それに漫画や雑誌で、ハードカバーの本棚は見る影もないといった惨状だ。

■アマゾンで買う読者が増える一方、電子書籍の登場で「中抜き」がおこり、取次店や書店は苦境にたたされているようだ。日本の書籍の流通には独特のシステムがあり、出版社はたとえ売れなくとも本をだしつづけている限り、一種の「自転車操業」で、なんとか資金繰りができたのだが、それも怪しくなってきた。

■すでにマスメディアのテレビや新聞も相当の苦境にたたされており、関係者が集まると、あのテレビ局はあと×年しかもたないといった話が、まことしやかに流れる。これまでマスメディアはシステムに守られ、それなりの繁栄を享受してきたが、システムそのものが崩壊の危機に瀕していて、どうもこの流れはとどめようがない。

■奢れるもの久しからず――が、世のならいなので、ある時期繁栄を誇った業種や企業が衰退してくこと自体にはなんの不思議もないが、旧メディアが衰退したあと、どのような「新メディア」がうまれ、それが社会にどのように有効に機能していくか。じつは関係者の誰もよくわかっていないのである。

■不安心理から手探りで新メディアであるウェブ、インターネットに立ち向かっているというのが、実情である。ぼくも新メディアに多少ともかかわり、この分野で新しい「表現の場」「表現の形」を作りたいと知恵を絞っている。試みや趣味としてなら実現はそれほど難しくない。しかし「ビジネス」として機能させようとすると、そう簡単ではない。

■なによりインターネットの情報は「タダ」という習慣が世界的に根付いてしまっているので、ビジネスとして成功させるのは容易ではない。ほんとうに意味のある情報はタダでは手にはいらず、有料でしか手にはいらない。そういう空気が主流になっていかないと、むずかしいかもしれない。アメリカでは「価値ある情報は有料」という流れが出来つつあるようだ。

■日本でもゲームや漫画では、それなりの収益をあげ、ビジネスとして機能しているようだが、ほかの分野はまだ「これから」という状態である。どこが「ビジネスモデル」として成功例をだせるか、しのぎを削っていて、これはこれで平和の時代の「戦国時代」とでもいえようか。本日、運転免許の書き換えに鮫洲にいった。ほとんど車に乗らないので、当然「無事故」であり「優良免許」者ということで、書き換えにともなう「講習」の時間も30分ですんだ。都内、それも比較的都心に近い所に住んでいると、車の必要性はまったく感じない。で、都心に住む限り、おそらく今後も車を運転する機会はないと思うのだが、身分証明書としては便利なので更新した。
by katorishu | 2010-10-07 21:36 | 新聞・出版