コラム


by katorishu
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『電子出版の未来図』(立入勝義著)は大変面白い

 12月22日(水)
■政治の混迷が続き、経済政策ひとつとっても有効な手立てを打ち出せないまま、今年もおわり近づく。マスコミは相変わらず小沢一郎の国会での説明責任などといっているが、この問題は司直の手で裁かれることになっているのだし、国会はそんな悠長なことをやっている時ではない。ずるずると底なし沼のように沈む日本をなんとか救う。そのためにこそ、国民が選ばれた政治家が全力をつくすべきなのに。

■劣化のいちじるしいマスメディアの凋落の引き金を退くのは、やはりウェブである。最近出た『電子出版の未来図』(PHP新書、立入勝義著)を一気に読了した。電子出版やウェブ関係の本を何冊か読んだが、本書がもっとも的を射ている。最近の世界の動向、とりわけITの本家アメリカでの動きを紹介しているので、大変参考になった。

■筆者の竹入氏はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)卒で2004年に日系企業の子会社代表として渡米し独立。オンラインゲームや映像字幕の翻訳事業、北米のIT事情についてのマーケティングリサーチなどを手がける。時代の最先端でビジネスに直接かかわっているので、説得力のある論を展開している。

■電子書籍を一言でいえば「誰でもがクリエーターになれる」時代が到来したということである。今は揺籃期であり、関係者は試行錯誤を繰り返しており、その過程で「誤った」ものがでてきたり、ビジネスとして不成功におわったり、大損をするものもでてくるだろう。そこを指摘し、だからダメなどといっていては、時代に取り残されるだけである。

■すでに流れはウェブである。とくにITに馴染みやすい言葉、映像等々は今後、こちらはメイン・ステージになることは間違いない。過去の「成功体験」にしがみつきたい人たちは、どうしても新しいもの、それも革命的に新しいものに対しては、警戒し、身構え、あら探しをしたりして、様子見をする。しかし変化の著しい時代、様子見をしているところからは何も新しいものは生まれない。

■数多ある電子書籍関係の図書のなかで『電子出版の未来図』はもっともおすすめ出来る本です。新書が洪水のように出て、なかには中身の薄い雑なものも多いが、それも電子出版の普及で解決されるだろう。

■村上龍が先日のテレビ東京の電子書籍についての特集番組で、「作家は編集者が育てるといわれるが、ぼくは別に編集者に育てられた覚えはない」と語っていた。村上氏は自ら電子出版会社を設立し、独自の配信をはじめた。ウェブでは音楽や映像も加味した、まったく新しい形の「出版」が可能であり、その利点を取り入れているようだ。チャレンジ精神を高く評価したい。「既得権益」にしがみつく「ロートル」は脇において、「これからの時代」を生きる若い人は、チャレンジ精神を発揮して、新しい表現の形、表現の場をつくるよう努力をして欲しい、と読了後、あらためて思ったことだった。
by katorishu | 2010-12-22 10:38 | 新聞・出版