コラム


by katorishu
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『オキナワの少年』で芥川賞を受賞した東峰夫さんの今

 2月14日(火)
■朝日新聞の夕刊で「沖縄の40年」を特集しているが、13日は「表現者たち」とサブタイトルをつけ、東峰夫さん(73)をあつかっている。東さんが沖縄が本土に復帰した1972年、『オキナワの少年』で芥川賞をとった作家であることを知る人はすくないだろう。米兵相手の商売で生計をたてる家庭の少年を描いた作品で、一種清涼感のただよう作品であった、と記憶する。

■最近の「芥川賞作家」のようにつぎつぎ本をだすこともなく、東峰夫という作家はその後、日雇いなどもしている、と週刊誌にでていた。40年たった今、東さんは東京・多摩地区の木造アパートに一人で住んでいるという。6畳1間で家賃3万5千円。生活保護をうけ、100円ショップのパンと缶詰で空腹を満たす、と記事は記す。

■芥川受賞後、東さんは「これからは書きたいものが書ける」と思った。聖書やユングに触発され、夢の話を書きたいと思ったが、編集者の要求するものは、「沖縄の現実」を描いた『オキナワの少年』の続編であり、夢の話など荒唐無稽であるとして、しりぞけられた。自説を主張する東さんは次第に出版界から遠ざけられ、結局この40年間でだした本は5冊。

■今も東さんは夢の本に固執しており、毎日見る夢の内容をメモしたノートが300冊ほどになったという。パソコンで打ち込んだ小説は8冊分になったとのことだが、出版するあてはない。日本には何千という出版社があるのに、1社ぐらい東さんの本をだすところはないのだろうか。記事の傍らに、未刊の原稿を手にした、人の良さそうな東さんの写真が載っている。東さんの夢の話をぜひ読んでみたいし、ドラマなりドキュメンタリーにしたい、と思ったりした。
by katorishu | 2012-02-14 02:44 | 文化一般