アカデミー賞受賞作の映画『アーティスト』を見た
2012年 04月 11日
■ハリウッド映画がサイレントからトーキーにかわる時代を背景に、サイレントのスターがトーキーの女優にとてかわられる悲喜劇を描いた、モノクロ映画『アーティスト』には、かなり期待していた。今年のアカデミー賞受賞作であるし、ぜひとも見なくてはと思っていたのだが、なかなか時間がとれなかった。本日、銀座へ出たので、ぼくの割合すきな映画館であるシネスイッチ銀座で見た。全編をモノクロのサイレントで見せる手法は面白かったが、中身がちょっと単純すぎて、センチメンタリズムでもあり、もうすこしなんとかならなかたのか、という思いを抱いた。
■サイレント映画時代の男性スターが、エキストラで撮影所にきた若い女性にちょっとひかれ、彼の力で映画に出演させる。撮影所はスターである彼をあがめ奉る。が、そこに技術革新でトーキー映画が出現し、こちらが一気に主流になっていく。すると、スターであった彼の仕事は激減。一方ちょい役をやっていた若い女性はトーキー映画に新しい活躍の場を見いだしていく。1929年、折から世界大恐慌に見舞われ、彼が私財を投じ起死回生のために作った映画は不入りで彼は破産し、妻との家庭生活も破綻する。
■一方、彼の映画と同じ時に封切られた若い女性の映画は大ヒット。彼女は一躍スターの座にのぼる。落剥した彼は酒におぼれ、自殺をこころみたり救いのない生活に陥る。最後に、スターになった彼女が彼に救いの手をさしのべる。台詞のないタップ場面で彼を起用することで、彼はカムバックを果たす、という予感で終わる。いかにもハリウッド映画らしい、楽しめる作品ではあるが、内容が単純すぎて、パターン通りの展開であり、少々ものたりない。期待が大きすぎたのかもしれないが。犬の演技は出色で、これだけでも見るに値する。そしてモノクロとサイレントイレントで通した制作陣の意欲は買える。