コラム


by katorishu
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歓迎すべき自転車ブーム、ここから新しい町づくりが始まる可能性

8月26日(日)
■毎年毎年「ブーム」なるものが泡のように生まれ泡のように消えていく。ほとんどはこの世にあってもなくてもいいような類のものだが、100に1つくらいは歓迎すべきもがある。数年前から自転車に乗る人が多くなっている。それもいわゆるママチャリではなく、変速ギヤつきで荷台などのないスポーツサイクルである。競輪の選手に近い格好をして7、8人で車道を走っている姿を、先ほども近所で見かけた。通勤に使っているひともいるようだ。

■友人のなかに何人かスポーツサイクルの愛好者がいて、ぜひやるといいとすすめられていた。愛好者のほとんどがスリムな体つきで凛々しくさえあり「きっとやみつきになるから」という。気まぐれが好きなので集団で走るのは無理と思っていたところ、数ヶ月前、カミさんが友人からスポーツサイクルをもらった。競争用の細いタイヤで、本格的なサイクル車だ。試乗してみるとかなりのスピードがでる。

■もらったからには乗らないと。当初は夫婦で走るのがいいと思い、2台必要と思った。で、近所に新しくできた自転車屋にいき、中級者むきのスポーツサイクルを買った。かなり高いものもあるが、試みなので比較的安いものにした。とりあえず、図書館や品川駅や大崎駅などの近場にカミさんとでかけ、公共の駐輪場にいれ2時間ほどコーヒー店で読書や仕事をする。気がかわるとまた自転車にのって2、30分走り駅前の駐輪場にあずけて「仕事」。移動しながら仕事をする僕には向いているようで、今や自転車での移動が日常化している。もっとも、ラフな格好なので仕事で人にあうときや都心にいくときは地下鉄を利用しているが。

■とにかく風を切ってすすむので気持ちが良い。車の走らない運河ぞいの道を多くはしる。走り始めて1ヶ月余り。腹の肉がちょっと締まったようだ。公共の駐輪場が都内では整備されていて、2時間以内は無料というのも「売れない物書き」にはありがたい。かねてから自転車は人間が発明した乗り物のなかで最高のものと思っているので、昨今の「自転車ブーム」は大歓迎である。

■石油資源も無尽蔵ではないし、原発もダメ、かといって江戸時代にもどるわけにもいかない。そんななか、人力で動く自転車にもっと注目すべきである。極論めくが、人力による移動を基本にして新しい都市文明、都市文化を構築していく時期にきていると思うのである。オランダなどは自転車専用道路が完備されていて、都市のエコ化が進んでいる。江戸という究極の「エコ社会」の歴史をもつ日本である。今こそ率先して「自転車を基軸とするエコ社会」の模範をしめすべきではないのか。自動車産業の関係者などは猛反対するに違いなく、エコノミストなども経済が停滞すると反対をとなえそうだが、今やそのくらいの思い切ったシステムの変更をすべき「文明の転換期」にきているのである。

■じっさい今のような「近代文明」を続けていって、果たして今後、70億から80、90億とふえていく人類を支えきれるのか。できるというのなら教えてほしいものだ。ひところ中国では、庶民の移動手段は自転車であり、北京の町がテレビなどに映ると自転車の洪水であった。自転車は「貧しさ」の象徴と見なされたようで、改革開放以後、中国人はひたすら車に乗れる社会をめざして沸騰し、今や北京などで自転車はあまり見られなくなった。韓国においても同様で、自転車に乗っていると「貧乏人」であるとしてバカにされるという。愚かなことである。そんな国こそ、田舎者、遅れている文化、遅れている社会であることを図らずも示している。

■新しい「国づくり」の柱の一つとして日本が「自転車社会」のモデル構築を世界にむかって示せば、きっと世界から尊敬される。車で通過して「見る町・見える町や村」と、「歩行ないし自転車で移動して目に入る町や村の風景」は違うのである。不幸なことに、現在の政治家や経団連、高級官僚など社会を牛耳っているひとは、車で移動するひとが大半なので、この微妙な違いを肌でわからない。もちろん自動車をなくせといっているのではない。荷運びその他で大いに活用すべきだが、人の近距離の移動手段の主軸は自転車にして、そのためのシステム作りを率先して行う時にきていると思うのである。

■一見奇異に思えるかもしれないが、自転車という人力で動く交通手段を基軸にした社会になれば、もうすこし暮らしやすい世の中になるのではないか。以前から一つの「仮説」として考えていたが、じっさいに自転車を自分の「足」として使うようになってその思いを一層強くする。
しかし、便利さ効率の良さにどっぷり首までひたってしまった「現代人」には 、意識改革は容易ではない。結局、どんずまりになって、どうしようもなくなるまで、このまま行くのでしょうね。やれやれ。
by katorishu | 2012-08-26 10:52 | 社会問題