コラム


by katorishu
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

安倍政権のインフレターゲットは一種の博打、吉とでるか凶とでるか

12月21(金)
■昨日も昼間7時間ほど国会図書館で昭和戦前期の雑誌や新聞の調べごと。昭和2年、日本もアメリカに端を発した世界大恐慌の嵐に見舞われ、倒産や失業者が激増した。東北では娘を苦界に売るケースが急増したり自殺も急増。一方大都会では、エロ・グロ・ナンセンスが徒花のように花開いた。

■文化が爛熟すると必ずエロ・グロ・ナンセンスに類するものが出てくるものである。その中から新しい文化の芽がでてくるはず、というのがぼくの仮説で、むしろこの現象は現状打破に役立つ。その観点からWEBRONZAで連載している。
さて総選挙での自民圧勝をうけ近々安倍政権が実現する。とりあえずの政策として「2%のインフレターゲット」をあげており、渋る日銀総裁に迫って、120兆円もの日銀買い入れを認めさせた。政府からの独立を維持してきた日銀史上初めてのことである。

■これが吉とでるか凶とでるか、未来のことは誰にもわからないので、一種の博打である。自民党政府の「お家芸」の大規模公共事業を実施し「デフレ脱却」をめざすとのことだが、これは消費税増税を念頭においた施策であり、背後に財務省がいると考えるべきだろう。国民の暮らしより国の財政の方が大事。これが、大蔵省時代から一貫してかわらない財務省の伝統である。安倍政権が、この伝統を断ち切ることができるかどうか、候補にあがっている閣僚候補を見ているとあまり期待できそうもない。

■大規模な公共事業を実施すればゼネコンなど土木建築関係は潤い、波及効果で株価も多少上昇する。物価もあがる。それに連動して賃金もあがればよいのだが、中韓の企業などと激しい価格競争をしているなか、果たして企業が賃金を上げることができるのかどうか。一部の大企業、優良企業は可能であろうが、圧倒的多数の企業に出来るとは思えない。

■すると、収入が増えない中での物価上昇がやってきかねない。家電製品の価格下落のなか2%の物価上昇をもたらすには食料品などの生活必需品を2ケタ上昇させなければならないという見方もある。(クレディスイス証券の白川浩道氏)。

■何れにしても劣化してしまった日本経済を立て直すことは容易ではない。忘れていけないことは、こうも財政が悪化した原因はバブル崩壊後の自公政権による「大バラマキ政治」にあることだ。その反省の上にたって、安倍政権は本気で(一部の日本人だけではなく)多くの日本人の暮らしを立て直し、安心して暮らせる日本にすることができるかどうか。来年が、日本にとって正念場である。
by katorishu | 2012-12-21 09:38 | 政治