三国連太郎さん逝く。今村昌平監督とのロケでの鬼気迫る確執は映画関係者の語りぐさ
2013年 04月 15日
■三国連太郎さんが90歳で亡くなった。得難い個性の役者であり、一本筋の通ったところのある魅力ある人であったと思う。10年ほど前、『今村昌平伝説』を書くため新宿の京王プラザホテルでインタビューしたことが懐かしく思い出される。今村監督との確執ほか、日本映画などについて大変興味深い話をされていた。
■ゆっくりした口調になっていて、やはり寄る年波には勝てないと思ったりしたが。その後、役者の柄本明氏にインタビューしたとき、今村昌平監督と三国連太郎の鬼気迫る確執を聞いた。今村昌平の映画『カンゾー先生』で三国連太郎は主演をつとめたが、岡山であったかロケ先の撮影で、「リテイク100回」があったという。三国連太郎が何度演じても今村監督はOKをいわず、「もう一度、もう一度」と繰り返した。本番での演技である。ついにそれが100回に達したという。現場はシーンとして誰も声もです、この二人の火花を散らすような「対決」を見守っていたという。
■ロケが終わったあと、三国連太郎は「カンゾー先生の役は今村昌平監督自身がやればいい」といって降板したとか。今村監督の父親は個性ある開業医で、今村監督はカンゾー先生を父親へのオマージュの意味をこめて作ったといわれる。父親と俳優三国連太郎との間に落差があり、それを埋められないまま「両巨匠」の決裂となってしまった。代役として急遽、柄本明氏が決まったのである。「あの対決は日本の映画史に残るものでしょうね」と柄本氏は話していた。当時インタビューした今村監督も、緒形拳氏も三国連太郎氏も、あの世にいってしまった。大変残念で寂しいことだが、これも天命というのだろう。合掌。