コラム


by katorishu
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イタリア映画『ブルーノのしあわせガイド』は心温まる父子の物語で楽しめる

 4月17日(水)
■単館映画には小品ながらじつにいい味をだしている作品が多い。昨日、銀座四丁目の交差点近くのシネスイッチ銀座でイタリア映画『ブルーノのしあわせガイド』を見た。『リメンバー・ミー』などで知られるファブリッツィオ・ベンティヴォリオが、サエない中年の主人公を演じる。脚本家のフランチェスコ・ブルーニの監督作品。主人公の「売れない」作家は、15年前にある女性とホテルにとまったことで男の子が生まれたのだが、彼は今までその事実を知らなかった。彼は芸能人やスポーツマンらの「自伝」の代筆で食べていて、どうもホモっ気があるようだ。

■昔の女と出会い、15年前にあなたの子を産んだと知らされる。女はマリ共和国にいくので、その間、「息子」をあずかって欲しいと。どこか人の良い売れない作家は、16歳を目前にした中学生の「息子」を引き受け、同居するハメに。彼は副業として学習塾をやっているのである。この息子、人間はいいのだが、不良であり、学業成績は悪く落第確実。父は息子に読み書きなどを日課として教える。最初、彼は我が息子であることを不良少年にいわないが、やがて父親であることが明らかになる。前後して、息子は不良仲間とある事件にまきこまれ、父子ともにマフィアにいためつけられそうになる。驚いたことに、マフィアのボスは父が教師をしていたころの教え子だった。マフィアのボスのあだ名は「詩人」で、背徳の監督・作家であるパゾリーニの書いた詩を暗唱したりして笑わせる。

■最後にちょっとしたドンデンがあって、息子がまっとうに生きていく予感。父親は教え子のマフィアのボスから「自伝」執筆を頼まれ、執筆する。ボスから映画化権を買いたい人がいるので最後は派手な戦いの場面に書き直してくれといわれるが、きっぱりと断る。父子ともに、どこかいい加減でアバウトなのだが、一本筋が通ったところがある。それが味である。パゾリーニの詩を暗唱するマフィアのボスの出し方もうまい。笑えて楽しめ、ちょっと人生を親子というものを、考えさせてくれ、そして癒される。小品だが味のある作品だ。こういう作品が東京でも1,2館でしか見られないのは、いつも思うことだが、大変残念である。
by katorishu | 2013-04-17 09:48 | 映画演劇