シナトラの「マイ・ウエイ」は仏のスーパー・スターの創ったもの。仏映画「最後のマイ・ウエイ」で知った。
2013年 05月 29日
■脳が疲れているときや癒しをもとめたいときは、映画を見ることにしている。家でDVDなどで見るのではなく、暗い映画館で見るのがいい。毎月「マスコミ試写」の案内状がきて、ぼくのところにくるのは大手メジャーからはほとんどなく、単館上映のあまり派手な宣伝をしない地味な映画がほとんど。それだけに、胸にしみこむ作品が多く、癒されるのである。
■昨日、市ヶ谷のシネアーツ試写室で見たのはフランス映画『最後のマイ・ウエイ』。70年代から80年代にかけてフランスのスーパー・スターとして人気を博したクロード・フランソワの生涯を描いた作だ。ぼくはほとんど知らなかったが、クロード・フランソワはシンガー・ソング・ライターで、39歳で夭折した。その間レコードの売り上げは総計6700万枚に達したという。フランク・シナトラの有名な曲「マイ・ウエイ」は、じつはクロード・フランソワの創った歌である。そのことを、この映画で僕も初めて知った。
■クロード・フランソワはスエズ運河を管理する裕福な実業家のもとに生まれたが、第二次中東戦争で一家は財産を失いモナコに移住。経済的困難の中、クロードは銀行をやめ音楽にのめりこむ。なかなか芽がでず落ち込むが、フィリップス・レコードでソロ・デビューした「ベルベル」が大ヒット。やがてフランス有数のスーパー・スターになる。もともと小心で神経質であったが、人気がでるとともに傲慢で女好きな面が強くでて、周囲は振り回される。しかし、自分の失恋などに材をとった歌は人気をよび、雑誌社やレコード会社までつくる。一方、母親がギャンブル狂いで財産を食いつぶす。赤字がかさむなか起死回生を期して英米への進出を目指すが、事故死。39才の若さあった。
■2時間29分の長い映画だが、数十曲のロックやバラッドとダンス等が披露され、楽しい。心が弾み、それだけでも十分酔せ疲れた脳を休めてくれる。ハリウッドのミュージカル映画のような派手さはないものの、心に沁みる。主役のジェレミー・レニエが、小心で神経質そして傲慢なクロード・フランソワ役を見事に演じている。歌にはクロード・フランソワの失恋や父への思い等々「私」の部分がこめられていて、親しめる。 7月20日より渋谷BUNKAMURA他で公開。癒やしを求めたい人にお勧めの1作です。