ボーカロイド小説を知ってますか?これが女子中高生に売れているらしい
2013年 09月 06日
■ボーカロイド小説というものがあることを、最近知った。略して「ボカロ小説」といったりするが、出版不況のおり興味をもち試みに何冊か読んでみた。途中で放棄しなければならなかったものもあるが、例えば「人生リセットボタン」などなかなか巧みなストーリーで、ひきつける。原案KEMU VOXX、著:本木雅彦、イラストhatsuko。
■普通の小説と違ってユーチューブなどに「素人」が作詞作曲して投稿した音楽に登場するキャラクターをもとに、小説を再構築するもの。投稿した音楽は初音ミクという人工音声で歌う「歌手」の歌で、簡単に音楽をつくれるソフトがあるらしい。「素人」といってもセミプロかもしれず、その点よくわからないが、この小説は元になる音楽にキャラクターらしいものは特にないとのことで、登場する「少年」は誰にでもなり得るとのこと。
■読者はユーチューブでまず音楽に接してその曲のファンになり、その関連商品である「ボカロ小説」に手をのばす。そのため、10万部近い売れ行きになるとか、出版関係者が話していた。人生のミスを消すため、時間を戻して「リセット」することで、もう一度やりなおしてミスから逃れ、完璧な人生を‥‥目指す。
これは「現実感」があるが、多くのボカロ小説は天使がでてくる架空の国や、非現実のなかでの友情とか恋が物語られる。
■いわゆる「ライトノベル」とちがって「純」「純愛」が基調のトーンになっているようだ。これは「現代のオトギバナシ」ではないかと思った。時代が行き詰まると「エロ・グロ・ナンセンス」が流行るという「仮説」のもと「昭和エロ・グロ・ナンセンス」を朝日新聞WEBRONZAに連載しているが、その逆をいくようだ。世相ウオッチャーとしてはそこに惹かれて読んでみたのである。
■エロやナンセンス、お笑いの氾濫するなか、逆にもっと純なものをもとめ、そこに癒やしを見いだそうとする女子中高生。先行きにちょっと希望がもてる、と積極的に評価しよう。なかには上下二段組で400ページもの作品がある。活字離れがいわれるが、こんな多くの活字を読む若い人が増えているのである。他の作品はともかく「人生リセットボタン」には、かなり癒やされたと告白しよう。