コラム


by katorishu
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アメリカの敵はアメリカ自身だと、ニューズウィークが特集。興味深い

 10月19日(土)
■10月22日づけのニューズウイーク日本版が「亡国のアメリカ・自壊する超大国」という特集をしている。政府機関の閉鎖やデフォルトは土俵際でなんとか回避されたが、この国の前途は多難だ。現代のローマ帝国といわれたアメリカの凋落が次第に顕著になりつつある。アフガン戦争、イラク戦争等の後遺症がいまになって顕在化してきたというべきだろう。平家物語ではないが、盛者必衰はいつの時代でもあてはまる。果実のようアメリカの敵はアメリカ自身だと、ニューズウィークが特集。興味深い_b0028235_9143583.jpgに熟れれば必ず枯れる。人の一生だって同じ。もちろん国も同じ。国は人体の拡大版のようなものであり、熟れたアメリカは涸れる運命にある。

■そんな中、我が国にはアメリカ大好き人間がいぜんとして多い。太平洋戦争による敗戦のあとのGHQの占領政策でアメリカ化(植民地化)がすすんだと思っている人が多いようだが、じつは戦前、満州事変あたりまで、日本人の多くは大変なアメリカ好きだったのである。アメリカはすごい、アメリカに一歩でも近づこう、アメリカではやるものは必ず日本でもはやる。そういう傾向が明治、大正のころから日本にあった。当時の新聞雑誌をよむと歴然である。ハリウッド映画の影響もあるが、いってみればそれだけ日本が「田舎」であったということ。イナカモンほど都会に憧れるのです。





■さて、アメリカである。ニューズウィークは、アメリカの威信を揺るがしているのはもはや外国でも金融市場でもない。今やアメリカ最大の敵はアメリカ自身だ、と書く。アメリカ内部で自壊作用が起きているというのである。第二次世界大戦後、民主主義とヒューマニズムの本家としての自信を強め、世界の指導者としてソ連と対決していたアメリカ。ソ連の崩壊で「我が世の春」をむかえ、自己中心主義が一層強くはばをきかせてきたが、自然の摂理にしたがい、熟れたものは落ちて涸れる。この公理からアメリカも逃れることはできない。

■アメリカの凋落傾向について、いろいろな理由が考えられるが、そのひとつは「職人文化」を衰退させ、金融至上主義をはびこらせたことだろう。歴史の浅いアメリカにとって「伝統文化」の面で世界に誇れるものは、ほとんどなかった。で、ヨーロッパや東洋の「伝統」に対抗すべく「新文化」を打ち立てようとした。数々の戦争によって、軍事と金が最大の武器であるとさとり、そちらの強化に全力をかたむけ、成功した。それを基盤にして「アメリカ文化」の誕生となったのだが、熟れによる「制度疲労」が顕著になってきた。

■ところで、我が日本である。伝統的な職人文化をほこり中間層の豊かであった日本が、アメリカの真似をして、金融ビッグバンとかの旗印をかかげて、アメリカ化に拍車をかけ、二一世紀、見事「アメリカ的な社会」を完成させた。悪い面ばかり真似て。一方、軍事で守ってやるから金をだせ、というアメリカの論理に日本は抵抗できなかった。

■バブル経済の時期までは、社会の中堅層に戦前の教育をうけた人が多く、「武士は食わねど高楊枝」の人も一定数いて、日本のアメリカ化にブレーキをかけていた。彼らが次第に第一線から消え、アメリカ化の申し子である「団塊の世代」とそのジュニアが社会の中核を担うようになって、日本社会は一気にアメリカ化がすすんだ。まだわずかに熾火(おきび)が残っているが、良い意味の「武士道精神」は消えたといってよい。「伝統文化」「伝統的な慣習、生き方」を、短期間にこんなにもあっさりと捨てた民族も珍しい。世界の七不思議といってもよいくらいだ。

■多民族国家アメリカは、つねに新しい物や人を受け入れているので、また復活してくるであろうが、以前のような「覇権主義的超大国」になることはありえない。アメリカの物まねで「進歩」してきた「後進国」も、そろそろアメリカ式生活が、夢のような世界ではないことに気づきはじめた。アメリカを象徴する自動車に、日本の若者がほとんど関心を見せなくなったことも、その現れのひとつ。もしかして、ここに「希望」があるのかもしれない。

■ところで。アングロ・サクソンの主導した産業革命のいきつく果てを象徴しているもの、それは原発である。福島原発にばかり目がいっているが、年々膨大なる使用済み核燃料を、いったいどうやって処理するのか。この素朴な疑問に科学者の誰一人明確な答えをだせない。地上にあふれる「処理不可能」な厄介で危険な「ゴミ」が、人類の未来に悪影響をあたえ、いずれ衰亡に追い込むにちがいない。やれやれである。
by katorishu | 2013-10-19 09:15 | 政治