「出版不況」という言葉は聞きあきた。「売るための努力」を、物書きもしないといけない時代
2014年 07月 18日
■いろいろなものにガタがきている。家の中を見回しても冷蔵庫に水がたまるようになったし、クローゼットの戸はしまらないし、電気カミソリは切れ味が鈍くなったし、10万以上だして買ったレーザープリンターは故障し、修理にくるだけで7万円かかり、さらに7万円かかる(驚きですね)というので放置したまま。粗大ゴミ化している。昨夜は携帯パソコンに「修復回復中」という文字がでて起動しない。リフレッシュという機能があり、クリックしたら初期化して、多くのデータは消えた。WIFIはつながらないし……。そんなことの連続でストレスがかなり加わった。
■僕はこれまで別名もふくめれば30冊以上の紙の本をだしているが、「営業」で書店まわりをするのは初めてである。従来だと、原稿を編集者にわたしゲラがでるとそれをチェックし、間違い等がなければ、あとは編集者まかせ。書店に本が並ぶまで何もしない。しかし、若者層の減少のなか、膨大な数の本がでている現在、そんな「殿さま商売」をしていてはダメである。ごくひと握りの「売れっ子作家」「売れっ子エコノミスト」以外、たとえ中身が良くとも売れない。人の目につかないまま、返品されてしまうのである。
■写真はリブロ池袋本店の棚。こういうところに並んだり、平積みにされないと、中身が良くて面白くても、なかなか売れない。久々に大型書店をいくつかまわってみて、「売れないからこそ」関係者が知恵を絞っていることも、よくわかった。キワモノも増えているが、数のうちには質的にも高い本が出ていて、本はじつに多彩であり、圧倒される。
手にとりぱらぱらとめくるだけで、なんだか嬉しくなった。
■表紙のイラストも書いた田中氏が、あらためてイラストを色紙に描き、ぼくが自筆で例えばこんな言葉を書いた。「富岡製糸工場を作った渋沢栄一が、すでに『世界遺産』なのです」。これが本の脇に置かれる。手書きの文字が案外効果を発揮するそうだ。「売るための」努力をする過程で、ひごろ人の目につかないところで努力をされている出版社の営業マンや書店員の仕事や苦労も、よくわかった。「人間力」を高めるためにもなった。何事も試みてみるものである、渋沢栄一はいっている。「結末より過程が大事である」と。