コラム


by katorishu
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昭和19年制作の陸軍省後援映画『陸軍』(木下恵介監督)は興味深い作品

12月某日
昭和19年に制作された映画「陸軍」。
監督が木下恵介で、監修が石原莞爾なので興味深く見た。

昭和19年制作の陸軍省後援映画『陸軍』(木下恵介監督)は興味深い作品_b0028235_15594577.jpg
既に日本軍はミッドウェイ海戦に破れ敗色が濃い中、戦意高揚を目論み作ったのだろうが、さすが木下恵介監督である。ありきたりの戦意高揚作になっていない。

福岡の商人一家が幕末からいろいろな戦乱に巻き込まれていく歴史を点描しながら、戦争で子供を失う親、とりわけ母親の懸念や複雑な心境を、見事描きだしている。

母親役に田中絹代、父親役に笠智衆。ほかに上原謙、東野英治郎。杉村春子等がでている。
笠智衆がこんなにも雄弁に語る映画を初めて見た。それだけでも見る価値がある。

ラスト、田中絹代が帰還兵のなかに我が子を探す、かなり長いシーンは映画史に残る名場面。

陸軍の異端児、アンチ東條首相の石原莞爾が、おそらくバックアップしたからこそ、厳しい検閲を通ったのではないか。

木下恵介監督は、この作で軍部に睨まれ、戦後まで映画を撮れなかった。

YouTubeで見ることができます。
by katorishu | 2015-12-09 16:00 | 映画演劇