四方田犬彦の『「7人の侍」と現代』は秀逸な黒澤明論。
2016年 12月 08日
12月8日(木)
■「『7人の侍』と現代」(四方田犬彦著・岩波新書)を読みつつある。時代背景を頭にいれてこの映画を見ると、作品の意味合いがかわってくる。製作されたのは1952年から3年にかけて。アメリカの占領政策が終わり、敗戦国日本はいちおう「独立」国になったのだが。まだ、社会は混沌としていた。
この映画は、そんな社会的背景――大量の引き揚げ者の存在、朝鮮戦争、自衛隊の前身の警察予備隊等の創設などと無縁ではない。侵略する外敵からいかに身を守れるかという政治的文脈のなかで、しばしば論じられた「問題作」だが、この映画が根底に宿す『メッセージ性』はいまなお生きている。いや、ますます意味をもってきたというべきだろう。
■「黒澤本」はいろいろと読んだが、四方田氏の本書がもっとも面白く、するどく深い洞察力に満ちている。図書館で借りたものの、ずっとそばに置いておきたくなりAMAZONで買った。