カンヌ映画祭の「常連」小林政弘監督
2005年 05月 23日
テレビを見ていたら、今年度のカンヌ映画祭で、51歳の日本人「新人監督」の作品がコンペティション部門の最終審査に残ったとのこと。日本から出品された中で唯1作残ったもので、小林政弘監督の「バッシング」。小林氏とは10数年前からに知り合いだ。
彼がまだテレビドラマの脚本を書いていたころで、何度も歓談したが、控えめな書生風の人だった。その後、彼が自分で監督して作品を作ると聞いたとき、大丈夫かなと思ったことを覚えている。
しかし、彼はなかなか粘り強く、自費で何本も低予算の映画をつくりつづけた。すでに3本ほどがカンヌ映画祭の「ある視点」部門に出されている。
今回はコンペティション部門という晴れ舞台に登場した。受賞は逃したものの、全国的な知名度ができたので、今後は少しは映画を作りやすくなるのではないか。
これまでの作は、資金を出すひともなく、配給館も決まらず「自主上映」のようなものだった。最初の作品の予算は500万円、2作目が800万円ほどで作ったと聞いている。
「バッシング」はイラクでの拉致事件に巻き込まれた日本人女性をモデルにしたもので、低予算であったが、カンヌ映画祭の審査員からは評価され、最後の23作に残り、小林氏はカンヌ映画祭に招かれ赤絨毯をふんだ。
照れくさそうにインタビューを受ける彼のシャイな表情はいいと思った。『神楽坂・映画通り』という自伝的な小説を以前、贈ってもらった。郵便配達をしながら、なんとか映画監督になろうと、悪戦苦闘する彼の半生が恋愛模様をからめて描かれ、面白く読んだことを覚えている。
地味ながら着々と地歩を築いている人間が、まだいろいろな所にいるということは、心強い。