汚職の土壌を国民もつくっているのでは
2007年 01月 04日
■脱税容疑の中堅ゼネコン水谷建設が、隠した所得38億円のうち15億円を、関西国際空港と中部国際空港の建設工事を下請け受注するため、暴力団幹部や国会議員秘書らに裏金として支出していた、と今日の朝日新聞が一面トップで報じている。いつになっても繰り返される汚職の典型である。
■ある種の人たちにとって「汚職はビジネス」になっているようだ。税金に寄生して生きる「利権ビジネス」「口利きビジネス」が厳然と存在しているのである。こういう事態を生む土壌に対しては国民にも責任がる。例えばマンションの管理組合で経理をあつかっている理事などが、3000万円でできる補修工事を、特定の業者に4000万で発注し、キックバックとしてそこから数百万を受け取っていたら、理事会は紛糾しマンションの住民は強い怒りを発するだろう。
■同じ事が大規模に組織的に行われているのだが、こちらは規模が格段に大きく、間に税務署ほか、いろいろな組織、機関がはいっているので、あまり騒ぎにならない。税金は自分たちが出した「血税」という意識が薄いのである。ものを買うと取られる消費税でも、国民は相当額を払っているのだが、相も変わらず不正に着服する人や組織があっても、鷹揚である。この鷹揚さが汚職をもたらす土壌になっているではないか。税金の「不正奪取」については納税者として強い怒りをむけ、こういう汚職にからんだ議員は選挙で落とす。そういう土壌があれば、この種の事件は減るはずだと思うのだが。
■こんな状態では、役人の横領など汚職が文化になっている中国やインドネシアなどとあまり変わらなくなる。去年は県知事の逮捕などが相次いだが、決して汚職が増えたわけではなく、検察がかなり意欲的に動いた結果、それまで隠れていたものが表に出てきたのだという。検察の摘発を「検察ファッショ」などという人がいるが、どういう立場に立ってそういう発言をしているのか吟味したほうがいい。
■水谷建設の裏金に群がった暴力団や国会議員等を、検察は徹底的に摘出し白日のもとにさらして欲しいものだ。マスコミも総力をあげて真相究明につとめなければ「ジャーナリズム」の名前に値しない。
こういうところから(直接間接に、あるいは周辺を迂回する形で)「裏金」を受けている国会議員が、えてして「モラル」や「道徳」「美しい日本」などというものである。それこそブラックジョークである。
■指導層の劣化こそ、今の日本の最大の問題である。自分さえよければ、自分さえ儲かればあとは野となれ山となれの経営者も多いし、そういう人が短期的には「数字」をあげるので、評価されやすい。天下り先をまず念頭において身を処する官僚も多いし、困ったものである。
■今年は、すこしでも世の流れが変わり、言葉の本当の意味で「美しい国」へ近づいて欲しいものだが、むずかしいでしょうね。なにしろ、世のリーダー層になるのは、欲望をより強くもち、人一倍「悪知恵」の働く人が多いのですから。やはり日本は行き着くところまで行かないとダメなのか。新年早々から明るい気持ちになれないニュースが続く。