コラム


by katorishu
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クーラーの効き過ぎと「マクド難民」

  6月28日(木)
■過剰なサービスというものがある。喫茶店に長い時間いることが多いが、夏になると閉口する。クーラーが効きすぎるのである。昼間の暑い時間に温度設定をしたまま夕方になってもそのままにしているのだろう。とにかく寒い。暑ければ暑いほど、寒い。防寒具をもっていかないと風邪をひいてしまいそうで、ブラックジョークのようだ。

■電車に乗っても車内がすいていると、クーラーがきつい。本日電車で移動していて寒さには腹立たしくさえあった。満員電車や昼間の暑い時間の設定のままなのかどうか。熱い戸外を歩いてきて、クーラーのよく効いた電車に乗ったりすれば、そのときは快感を覚えるかもしれない。しかし、20分、30分乗っていると、体が冷え切ってしまう。エネルギーの過剰消費にもつながるし、なんとかならないものか。

■遅い夕食後、近所の24時間営業のマクドナルドに久しぶりに足を運んでみた。ぼくはハンバーガーはほとんど食べないので、空間を借用させてもらう。2時間近く原稿書きをしたが、その間、母娘と思われる人がはいってきた。二人とも大きなバッグをもっており、長袖を着ている。飲み物は頼まず一番安いと思われるスティックを頼んでいた。会話をほとんどせず、すぐ二人とも目を閉じた。

■寝場所としてマクドナルドにやってきたのだとすぐにわかった。娘さんは色白で美形であったが、顔色は悪かった。本日一日だけではなく、長い間、こういう暮らしをしているのだろうか。以前、常連であった70歳前後と見られる男女のカップルズは最近見かけなくなった。常連であったオバサンの姿も見ない。疲れている様子であったから、あるいは病気で倒れてしまったのか。あるいはマクドナルドに払うお金がなくなってしまったのか。

■「マック難民」といわれる人たちである。一方、ずっと勉強を続ける若者やパソコンに向かっているサラリーマン風の人もいる。たまたま終電車に乗り遅れて、ここで一夜を過ごす人もいる。彼らのことはどうでもいいが、マクドナルドを「泊まりの場」と見なすか、そうせざるを得ない人たちの存在が気になる。深夜営業のマクドナルドに足を運ばなければ、気づかないことで、自宅で快適な眠りのできる人には無縁の世界かもしれないが。
 
■いまだ世界第二といわれる「経済大国」日本の影の一部である。座ると会話もせず、目を閉じて眠り始めた親子。人間がよさそうで「自己主張」もあまりしなさそうな「善人」のようで、それが顔にも態度にも出ていた。どんな事情や背景があるのかわからないが、こういう人が増えている事実は頭の片隅に置いておいたほうがいい。

■午前2時前に自宅にもどり今村昌平監督の、ドキュメントともフィクションともいえない作品『人間蒸発』を2時間20分ほどにわたってCS放送で見た。拙作『今村昌平伝説』で記したので詳しく触れないが、「うーん」という溜息が出そうな作品だった。予定していたような「素材」「材料」が集まらないドキュメントほど、始末におえないものはない。フィクションとノンフィクションについて、あらためていろいろ考えさせてくれる「奇作」である。
by katorishu | 2007-06-29 04:59