コラム


by katorishu
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

絶やしてはいけない歳時記と年中行事

12月29日(土)
■昔流にいうと、いよいよ今年も「押し詰まって」きた。近くのスーパー・イオンに足を運ぶと、お節料理の材料を買い求める客でにぎわっていた。お節料理もコンビニで買える時代だが、出来るだけ家で手間暇かけて作りたいもの。ぼくも多分、数品はつくる。

■本日も品川シーサイド駅と大井町駅周辺で、資料読みなどをしながら時間をつぶす。時にぼやっとしながら、来し方、行く末を考える。懸念されるのは日本の医療制度である。財政赤字を解消しようとキャリア官僚が真っ先に思いついたことは、医療費を削るということだった。

■中曽根政権時代から、イギリスのサッチャー首相の「改革」を見習って医師の削減をはじめ医療改革に手をつけてきたが、根底にあるのは「アメリカモデル」である。サッチャーの医療改革はイギリスではとっくに破綻し、アメリカモデルから離反しているのに、日本だけが未だにこの路線を追っている。

■朝日ニュースターの「ニュースにだまされるな」の年末特集に出ていた東大先端技術研究所の児玉教授の話では、1980年代、日本の1000人あたりの死亡率は世界一低いものだった。が、90年代にはいり「医療改革」という名の政策によって、今後日本人の死亡率は増え続け先進国中、ダントツでトップになる見通しだという。高齢者の増加も死亡率の高さの一因だが、やはり医療制度改革が「弱者」である年寄りをむしばんでいるようだ。

■現在、日本では1000万人が年収200円以下の所得しかなく、当然高齢者が多い。(多分、世帯別年収)この人たちにとって国民健康保険の支払いは大変な難事であり、払えない人も多い。日本は国民皆保険制度をとっているが、現在、健康保険にはいっていない人は480万人になるらしい。保険に入っていない人が5000万人もいるアメリカとは比較にならないが、この人たちはひとたび病気になると、あとは「死ね」といわんばかりの窮状に陥ってしまう。

■こういう制度を改善することの出来るのは政治家である。政治が指導力を発揮して、「弱者」に優しい社会にしていかないと、「日本の良さ」は消えてしまう。日本はアメリカの51番目の州ではないのだから、アメリカの真似ばかりする必要もない。

■もちろんアメリかの良さはあるし、そういうところは積極的に取り入れるべきなのだが、それも「日本の良さ」を損なわない範囲である。日本の良さは歳時記にある。春夏秋冬、時間をかけて日本人が築き上げてきた「年中行事」と日本語の豊穣さだけは、絶やしてはいけないのだと思う。

■今年はどういう年であったのだろう。私見では、言葉の貧困が文化やモラルの荒廃を生む――ということを改めて実感する1年であった。「売文」を生業としている者として、来年も引き続き「言葉、言葉、言葉」とバカのひとつ覚えのように言い続けようと思う。

■本日「論座」2月号が送られてきた。拙作の連載はさておき、「日本の課題・文明・生命・環境・秩序」という特集は面白そうである。それと「『残す』ということ・アーカイブの哲学」は読んで損はないかと思います。
 この雑誌の編集部、半分以上が女性で、恐らく30代、40代である。そのせいか、若い世代の執筆者が増えている。それぞれ個性的な書き手であり、こういう若者がいる限り、先行き期待ももてる。なんとなく疲れ気味の中高年も、95歳にして映画を撮った新藤兼人監督を見習い頑張って欲しいものである。
by katorishu | 2007-12-30 00:57 | 文化一般