コラム


by katorishu
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アメリカ次期大統領はオバマ氏で決まり、か

  
1月5日(土)
■アメリカ大統領選挙の民主党候補のうち、ヒラリー氏とオバマ氏のどちらかが選ばれ次期アメリカ大統領に当選するに違いない、と「なんとなく」感じています。ヒラリー氏は女性でオバマ氏はアフリカ系移民であり、いずれも当選すればアメリカ政治史上画期的な出来事で、あるいは世界情勢にもかなりの変化が訪れるかもしれません。

■先日のオハイオ州の予備選挙でオバマ氏が勝ちました。オバマ氏の父はケニヤ出身で、祖母は今もケニヤに住んでいるとのこと。過日、ケニヤを訪れたオバマ氏をケニヤ国民が熱狂的に歓迎する風景がテレビに映し出されていましたが、清潔感があり自分の言葉で語る姿勢が清心でもあります。オバマ氏は演説で「白人もアフリカ系もプエルトリコ系もない、差別をなくし、みんな同じアメリカ国民である。今アメリカに必要なのは『変化』であり、私が大統領になったら必ずアメリカに変化をもたらします」と強調していましたが、その言やよし、と思いました。

■ヒラリー氏も夫のクリントン元大統領の協力を得て巻き返しをはかるのでしょうが、オバマ氏の演説を聞き、ケニヤからかけつけた実姉の姿などを見ると、次期大統領はオバマ氏で決まりかなと思いたくなります。アフリカ系初の大統領となるわけで、これこそ多文化、多民族国家アメリカを象徴する出来事となるでしょう。
 無謀なイラク戦争に突入して、のたうつ恐竜のような状態のアメリカに、今もっとも必要なのは「変化」です。「自分たちこそ正しい」というのはいいのですが、「自分たちこそ正しい、だから正しいことを世界に教えてやる」というのは、そろそろ願い下げにしてもらいたいものです。

■軍事力だけは圧倒的に強いものの経済も深く傷ついているし、貧富の格差によるモラルの崩壊も進んでいます。地球温暖化の現況である化石燃料の消費システムを、「超大国」アメリカこそ率先して変えていかないと、今後人類は深刻な事態に見舞われる――という認識をアメリカ国民の多くがもってもらいたいし、それこそがアメリカの変化の端緒になるのではないかと思います。

■イギリスの産業革命に端を発した近代文明が、そろそろ行き詰まってきているのです。歴史を読むと自明のことですが、永遠につづく文明はないし、「盛者必衰」が世の常であります。アメリカがそう簡単に没落はしないでしょうが、今のようなシステムをつづけていけば、今後衰亡の坂を転げ落ちていくでしょう。21世紀はアングロサクソン主流のシステムを転換させ、人間の物的欲望に少しブレーキをかけることが大事です。それで多くの人が物的には少々「貧しく」なるかもしれませんが、そのかわり仲良く暮らしていけるシステムが構築できれば、それで人類の繁栄も少々長引くでしょう。

■「みんなが仲良く暮らす」といっても、人口過剰なこの地球上で具体的にどうすればいいのか。言うは易く行うは難し、なのですが、そこにむかって先進国が努力をしないことには、人類そのものが衰亡の坂を転げ落ちてしまいます。ここからは希望的観測ですが、恐らくオバマ氏が大統領になれば、日本の政治もかわるでしょう。淀み汚れた空気を一掃するには、なにより指導層の人心一新が不可欠です。誰が首相になっても同じという人が相変わらずいるようですが、それこそ日本の政治(税金分配のシステム)を官僚が支配している証拠です。

■長年にわたってつきかためてきた堅固な地盤なので、そう簡単に崩れるわけもありませんが、変えなければと本気で考え実行する人が政権を握れば、変化の風が吹くに違いありません。仕事の必要から、16,17世紀の日本と日本を取り巻く国との政治・軍事の動きについて集中的に本や資料を読み込んでいたので、その思いを新たにします。
 仕事の延長上で、昨晩から今朝にかけて久々に司馬遼太郎の小説を読みましたが、文章の運びにあらためて感心しました。読みやすく、心のヒダに心地よい音楽ように滑りこんでくるのです。氏の小説がベストセラーになっているのもうなずけます。喩えれば浪曲のメローディアスなリズムに通じ合う心地よさがあるといっていいでしょう。

■「司馬史観」には必ずしも賛成するものではないのですが、とにかく人を「酔わせる文体」であると再認識しました。浪曲のメローディアスな節回しが、昭和前期に日本の大衆の感性に訴えかけ、国民意識をある方向に導くのに効果を発揮した――という論を展開した本を以前読み、なるほどと感心したことがあります。手元にその本がなく、著者名も書名も思い出せませんが、一般論として「酔わせ」「魅惑する」ものというのは諸刃の刃であり、毒をすべりこませるのも容易である――ということは頭の片隅に置いておいたほうがいいようですが。
by katorishu | 2008-01-06 00:54