コラム


by katorishu
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自費出版大手の「新風舎」が倒産 

  
 1月7日(月)
■自費出版大手の「新風舎」が会社更生法を申請したという。倒産である。負債額は約20億円になるらしい。「新風舎」の営業について苦情をいったり強く批判する人がいてネット上で暴露していた。そんなネット情報にマスコミが飛びつき報じたことで、新風社では売り上げが急落し、支払いがとどこおってしまったのだという。売り上げは03年が12億円であったのが、06年には52億円にのびたらしいが、それが仇となったようだ。

■早くのびる樹木は早く枯れるというが、会社にしても同じである。出版不況の中、急激に売り上げをのばし多額のもうけをだすこと自体「異常」であり、どこかに無理があったのだろう。1万5000人の著作者がいて、現在1100人が自費出版契約をむすび制作進行中であるとのこと。

■大手有名出版社でも「自費出版」に手をだしているところが多い。本を読む人は増えていないのに、本を出したい人は増加の一途のようで、そんな「出したい心理」をうまく刺激して営業を伸ばしてきたのだろう。以前から、自費出版で大もうけをしているところは「怪しい」という声を聞いていた。

■ところで、ぼくも少々絡んでいる携帯電話で小説を読ませる有料のサイトが、運用を始めたとの知らせを受けた。
 ★サイト名:作家直営BOOKS
 ★アドレス:http://sbooks.jp
 ★対応メーカー:au
 清水義典氏や勝目梓氏など「エンターテインメント系」の作家が「出品」していて、「既成作家」に関しては過去の作品だが、「新人作家」や作家予備軍の作にはオリジナルが多い。一種の本の「バザー」のような試みである。ぼくも知り合いの編集者の呼びかけで、かつてエンターテインメント系の雑誌に発表したものや、未だ発表されない過去に書いたものなどを「出品」した。

■このサイト、今のところどうも若い人向けにつくっているようで、アクセス・ランキングには官能系の小説が上位をしめており、イラストも漫画チック。書き手にはいる「ギャラ」はほんの雀の涙のようだが、こういう試みの中から何か新しい可能性が開けてくるかもしれない。携帯電話も日進月歩で、画面が見開きになるのも時間の問題だし、風景などの動画や音声をいれることができれば、新しい表現のジャンルに育つ可能性もある。

■「香取のやつ、携帯小説などにも手を出しているのか」などと揶揄するムキがあるかもしれませんが、若い人の新しい試みに接することも時代を読む上で大事なことです。興味のある方は一度アクセスしてみてください。(現在はauでしかアクセスできませんが、いずれドコモやヤフーでもアクセスできるようになるとのこと)。
 携帯も含めたインターネットがこれからの時代の主流であり、これを有効活用しない手はないと思っています。

■過日、アメリカでストライキを続けている脚本家の集まりであるライターズ・ギルドの作家と接触して直接聞いたのだが、アメリカでは映像作品に関して、インターネット上でダウンロードしたものが、売り上げ全体の6割を超えたとか。インターネット上の配分で、脚本家側が制作側にくらべ極めて不利になっているので、その改善のためにストライキを開始した。すでに8週間以上つづき、映像制作に少なからぬ影響が出ているようだ。
 日本の「映像産業」も、いずれインターネットでのダウンロードが主流になるだろう。その場合、どのような問題が出てくるか、「収入に直結する」問題だし、他人事ではない。

■昨日、「超大作映画」の企画書を仕上げた。このために過去数ヶ月、相当量の史料を読み込んだ。「異文化摩擦」が柱であり、ぼくとしても大いに乗って書いた。書いていて、興奮を禁じ得なかった。「大変面白い物語でよく出来ているけど、膨大なお金がかかるねえ」と読んですぐ電話をくれたプロデューサー氏。株価が低落し景気の急降下が懸念される中、膨大な制作資金を果たして集められるかどうか。

■もっとも実際に制作される過程で、さまざまな「障碍」があって諸々変更を余儀なくされるかもしれない。ともあれ、今年はこの作に賭けたい気分である。
 新藤兼人監督が95歳で新作の映画を監督したが、「人はこうありたいもの」という見本である。監督の「爪の垢」でも煎じて飲みたい気分でもある。
by katorishu | 2008-01-08 00:51 | 文化一般