ドキュメンタリー映画「いのちの食べかた」の衝撃
2008年 01月 10日
■今年の仕事が本格的に始動を開始した。このブログ、思いがけない人が読んでくれていて、インターネットの伝播力には改めて驚くが、今年は特に本腰をいれてとりかからなければならないことが山積しており、あまり時間もないことから毎日記すことは難しいかと思います――とまず「愛読者」にお断りします。
■本日、仕事の合間に渋谷のイメージフォーラムで上映中のドキュメンタリー映画「いのちの食べ方」を見た。牛肉や豚肉、鶏肉、それに野菜や果物などの「生産の現場」を、カメラで凝視したもので、オートリア生まれのニコラウス・ゲイハルター監督作品。
肉や野菜が、まるでトヨタの流れ作業式のような「工場」で生産されていく。それを、音楽も字幕もナレーションもなしで、ただ映像と現場音だけで表現する。90分弱が短いと感じた。「命」が単なる部品のようにあつかわれ消される「非情さ」はビジネス論理から必要なのだろうが――しばらく肉類を食べる気がしなくなる。
■アート系の映画を思わせるほど、画像が「きれい」なのが、逆に怖い。相当衝撃的な作品で、近代文明社会について根本から疑義をはさみたくなる。入れ替え制で、前の回を見終わった観客がみんな一様に強ばった表情で劇場から出てきた。見終わって多分、ぼくの表情も硬くなっていたと思う。
都内では、現在、イメージフォーラムの単館上映のようだが、多くの人にぜひ見て欲しいドキュメンタリーである。きっと世界の見方が少しかわる。イメージフォーラムは、独特の作品を上映する映画館であり、ここで見た映画には人間存在の奥深さやおぞましさに触れたものが多い。小屋主に今時めずらしく明確な主張があり、敬意を表したい。