コラム


by katorishu
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東大主催のデジタルアーカイブとユビキタスのシンポジウム

 1月15日(火)
■東大大学院情報学環主催のシンポジウム『デジタルアーカイブの「標準化」に向けて・次世代アーカイブとユビキタス技術が開く未来」に出席。13時30分より18時まで東大医学部の鉄門記念講堂で。

■日本におけるユビキタスの「第一人者」坂村健教授の基調講演「ユビキタス情報社会基盤としてのデジタルアーカイブ」ではじまった。坂村教授は「東京大学21世紀CEO」(chief executive officer・最高経営責任者)拠点リーダーとのこと。氏の著書「ユビキタスとは何か」(岩波新書)を読んでいたが、生の声を聞くのは初めてだった。

■ユビキタスとは「どこでも」「いつでも」コンピューターがあるという意味で、デジタル技術の「理想」を追求しようとするものである。善し悪しは別にして、今後、ユビキタスが社会の至る所に浸透し、人と人とのコミュニュケーションの形を変えていくにちがいない。デジタルアーカイブは、そのための情報基盤として極めて重要であるとのこと。
 いろいろ問題があるにしても、世界が「ユビキタス社会」にむかって劇的にかわっていくことは間違いないようだ。

■「便利さ」は確実に増す。それが多くの人の幸福感につながっていくか、どうか。坂村教授は理系なので、その面には踏み込まない。東大の情報学環は理系と文系が一緒になって新たな情報社会の構築についての研究をすすめている。日頃縁の薄い研究者たちとの交流は大いに刺激になるし、学ぶべきことが多い。

■今という時代を見据えるためにも、この方面について勉強の必要があるなとあらためて実感したことだった。本日、本郷三丁目の赤門近くあった喫茶店「ルオー」が20数年前に閉店し画廊にかわっていることを知った。古雅な趣の喫茶店で絵画が飾られ、奧に「中庭」のある店だった。地下的駅近くの地下にあったクラシック喫茶「麦」もとっくに閉店になってしまったし、知り合いの女学生のお母さんが経営していた「赤門」も消えてしまった。「本郷もかねやすまでは江戸のうち」といわれた「かねやす」はまだ残っていたが、以前の本郷らしい落ち着いた雰囲気の店は、ほとんど消えた。

■「デジタル技術で美術館などのいろいろな情報をいくら簡単に得られ便利になっても、自分の目で見て価値判断をする眼力が衰えるのではなっか。素直には喜べない」とシンポジウムのあと、喫茶店で雑談した同業者の一人は話していた。便利さの代償は、人間が本来もっていた「自然の力」を削ぐことになる。それが人類の未来にとって、善か悪か、今のところ判断がつかない。ある意味で「とんでもない地点」にまで人類がきてしまったことは否定できない。懸念される自然環境の悪化にユビキタス情報技術がどう効果を発揮するか。それが未来を占うカギとなるかもしれない。
by katorishu | 2008-01-16 00:09 | 文化一般