コラム


by katorishu
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株の暴落は、日米中発「大恐慌」の序曲?

  1月16(水)
■東京株式市場の株価の急激な値下がりがとまらない。去年の夏の時点でアメリカのサブプライムローンの危機が本格化するのは、年明け(08年)2月ごろから……という観測が流されていたが、不幸なことにこの観測が当たってしまったようだ。

■日本の金融政策担当者や金融に強い影響力をもつ関係者は、自分の「責任」を」回避するため、なんとか「悪材料」を隠して楽観的な見通しを語っていた。日本の強みであった厚い「中間層」を崩してしまったことも、「日本売り」の遠因になっているのではないか。

■世界の経済が蜘蛛の巣状にからみあっている中、世界一の大消費国アメリカの経済劣化は、とくにアメリカべったりの政策をつづける日本に津波のように押し寄せる。この津波は小泉・安倍と続く政策の中、傷みに傷んだ国民の生活を直撃することになる。日本は虚弱体質になり、抵抗力の弱い「虚弱児童」のようになってしまっているようだ。従ってアメリカがくしゃみをすれば、風邪をひくどころか肺炎を起こす。

■アメリカ経済の劣化には、イラク戦争も影響しているにちがいない。戦争は膨大な消費を促すので、戦争当初は好景気にわいた。戦前、日本軍が満州事変を起こしたときも、一時的に軍需景気にわいたものである。ところが、この戦争、満州事変のときと同様、現地住民の「支持」どころか「反抗気分」を醸成しつづけているので終わらない。泥沼化し、日々、多額の戦費を垂れ流すことになる。

■結局、大もうけしたのは軍需産業関連である。一時の「戦時景気」にのって、「危ない」サブプライムローンなるものを構築したが、しょせん「虚業」の世界である。失敗して、そのツケを世界にまわしつつある「ブッシュのアメリカ」。軍需産業がダントツの成果をあげる中、他の製造業の凋落は著しく、それを「金融ビジネス」でカバーしようとしたのだが、すでに金融ビジネスは「臨界状態に達し、制御不能になりつつある」とアメリカ・ウオッチャーは指摘する。
 最近アメリカから帰国したエコノミストの話では、ニューヨークのマンハッタンに物乞いの姿が目立つようになったとい。昨年12月、ぼくもニューヨークの中心んで物乞いを見た。
 
■「市場原理主義」のゆきつく果てとして、貧富の格差が極端についてしまったアメリカ。次のアメリカ大統領選挙で、ネオコン的「市場原理主義経済」からアメリカは確実に離別するはず、とは素人考えでもわかる。しかし、日本政府は「アメリカべったり派」の多い外務省のミスリードなどもあって、未だ「ブッシュ追随政策」から政策転換することができていない。

■政財官ともに、アメリカと中国にあまりに深くコミットしているので、なかなか政策転換が出来にくいのだろうが、指導層が「我欲」を排して、よほど賢明な選択をしないと、日本というより日本国民の生活は本当に危ない。

■総選挙がいつ実施されるかわからないので、大半の政治家は「自分が当選する」ことしか念頭にないといってもいいだろう。日本の立場を冷静に分析し、どういう内外政策を打ち出したらいいのか、的確に自分の頭で考え自分の言葉で、「我欲」を脇において語れる国会議員が、果たして何人いるだろうか。

■以前、公明党であったか、景気浮揚のため税金をつかって「商品券」まがいのものをばらまいたことがあった。依然として官僚の天下りや談合などが繰り返され、財政を悪化させ危機に対処する「体力」をなくしてしまった。(もっとも、「財政悪化」というのは消費税をあげたたくて仕方のない財務官僚の「目くらまし」で、あると指摘する識者もいるが)

■心あるエコノミストや現場で汗水たらしている人間は、指導層の無策によって、このまま日本は沈みつづける、と本気で心配している。今年の北京オリンピック後の中国経済についても、中国事情通は心配している。アメリカと中国から押し寄せる「津波」に、為政者および政策に強い影響力をもつ関係者は、とにかく「我欲」を排して賢明な選択をして欲しいものだ。

■「美しい日本」などといっていた首相が、まことに「美しくない」かっこうで辞任し、政策を頓挫させたことも、世界に「駄目な日本」のイメージを広めることに役立っただけだろう。今、日本の指導層に求められているのは「自己犠牲」や「潔さ」かもしれない。「既得権益」を引き継ぐ(ことを周囲から期待されている)「世襲議員」に、今の日本をまかせていると、本当に危ない。
 日米中発の「世界恐慌」の可能性が出てきた今、危機回避のため、為政者は「自己犠牲」も厭わず全力を傾けて欲しいものだ。
by katorishu | 2008-01-16 23:13