コラム


by katorishu
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横浜の「現代川柳」句会に行く

  
 1月20日(日)
■12時から港の見える丘公園内にある横浜文学館で行われた横浜川柳句会に出席。久々の出席で、川柳の勘がとりもどしにくかった。諷刺を旨とするサラリーマン川柳や江戸の柳樽の伝統川柳とはちがった「人生を5・7・5に詠み込む」もので、去年亡くなった時実新子氏が創り出した。「現代川柳」という言い方をしており、実際につくってみると、サラリーマン川柳などよりずっと難しい。サラリーマン川柳ならたちどころに、5,6句出来るのだが。

■情景や風景を詠む俳句よりつくりにくい、という印象だ。前もって「題」が与えられ、これを「兼題」とよび、当日、しめされる題を「席題」という。それぞれ5題あり、本日、兼題は「惜しい」「恩」「終わり」「多い」「温泉」で、席題は「老い」「オン」「重い」「送る」「親子」である。それぞれ2句を投句し、題ごとに選者がついて「選句」する。選者になるのは、それなりのキャリアのある人である。当然のことだが、選者の好み、価値観、美意識などがはいりこみ、「客観的物差し」はない。

■「遊び」の世界であり、当初軽い気持ちでいったのだが、例えば席題で10句を2時間で作るとなると、そう簡単ではなく、四苦八苦する。それも「愉しみ」のうちなのだが。 句会のあとの懇談までふくめて色々な個性との出会いも楽しい。「プロ」といっていいひともいて、カルチャーセンターの川柳講座で教えている人もいる。幹事役の杉山昌善氏はNHKの関東ローカル番組「いっと6県」(毎週火曜、午前11時から12時)の川柳コーナーを担当している。関東地方にお住まいで興味のある方は、一度ごらんになってください。初心者向けの解説で、視聴者から寄せられた川柳の講評などが中心ですが、現代川柳の概要はわかるはずです。

■ぼくはまだ数えるほどしか参加していない「初心者」だが、今回「重い」の席題で初めて「特選」をとった。『母を抱くこの重さなら生きられる』で、川瀬晶子選。川瀬氏は乃木坂のシアター・バー「コレド」で月一回、川柳句会を主催している。特選とはその題で詠み込まれた句のなかで「優秀」と判定されたもの。本日、30名ちょっとが出席したので、計60句の中から選ばれた。そのほか、「入選句」があって、それには2句選ばれただけ。この川柳句会の「常連」であるカミサンは8句の入選句があった。

■選ばれた、といっても他の選者であったら、また別の句を選んだかもしれない。「落ちた」人は、それで救われるというもの。新年初の句会なので、そのあと元町中華街の中華料理店で新年会が行われた。20代から70代後半の老若男女があつまって和気藹々の中、歓談した。平均年齢は50代半ばといったところか。主婦や定年退職者もいるが、現役で仕事をしている人も多く、はからずも「異業種交換」の場になる。

■当然のことながら、みんな言葉に関して敏感で造詣が深い。年ふった人はそれなりの味わいのある句をつくる。一方、この句会に出席する若い女性の言葉のセンスの良さにも注目する。男女比は本日は6・4で女性が多かった。残念ながら、「若い男」は皆無。このへんにも、日本文化、日本社会の「問題点」がひそんでいそうである。日本語という言葉の豊饒さをフル活用した「遊び」であり、「創る」という喜びにひたることが出来るので、もっと多くの人に広まってほしいと願う。「創る」とは「混沌に秩序を与えること」と言い換えてもよく、現代川柳は地味ながらそのための基礎の基礎になる。それが文化の豊かさにつながる。政治家や官僚、大企業経営者などもゴルフに行く回数を1回でも減らして、時にはこういう地味な場所に足を運んでみて欲しい、と思うのだが。
by katorishu | 2008-01-21 00:00 | 文化一般