コラム


by katorishu
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初代松本白鸚、27回忌追善歌舞伎を見る

 2月19日(火)
■久々に歌舞伎を見た。東銀座の歌舞伎座で公演中の「初代松本白鸚27回忌追善興行」で、息子の松本幸四郎が「座長」である。夜の部、といっても16時半開始で、終わるのが20時50分の長丁場。(間に長い休憩がある)。
 叔父の88歳になる雀右衛門や弟の吉右衛門、息子の染五郎をしたがえて、幸四郎が「口上」を述べたが、これがなかなかのものだった。声がよく通り、ユーモアをまじえて父の思い出などを語った。

■三つの演し物があったが、源平の合戦で活躍した熊谷直実を主人公にした「熊谷陣屋」が、よかった。幸四郎が熱演し、完成された「様式美」の舞台の芸を見せてくれた。「型にはまった」芝居だが、最近、型もなにもない「素人芝居」が多いなか、さすが伝統の堆積を感じさせる舞台だった。女形の役者ともども、大変な熱演で、大衆演劇の基礎の基礎がここにあると思った。

■テレビの舞台中継でときどき歌舞伎を見ているものの、やはり劇場に足を運び、劇場の雰囲気を五感で感じつつ見ないと、ほんとうの良さは味わえない。「テレビ役者」としての幸四郎はあまり「買えない」が、歌舞伎役者としては、さすが、と改めて思った。

■昔、古今亭新志ん朝師匠が主演の「単身赴任」の問題をあつかう連続ドラマを書いたことがある。志ん朝さんの落語の流ちょうな味のある語り口が頭にあったもので、台詞も多めにしたのだが、落語とドラマではどうも勝手が違ったようだ。落語は一人で演ずるが、ドラマでは相手があり、稽古などもほとんどなく、ぶっつけ本番といった収録作業をする。勝手違った志ん朝さんは苦慮され、寄席での味をだせなかった。ぼくの脚本も、誇れるものではなかったが。

■今回、松本幸四郎(先代、染五郎)の歌舞伎座での演技をみて、役者がもてる力を最大限に発揮できるのは「本来の場」なのだな、とあらためて思ったことだった。テレビや映画でしか松本幸四郎の演技を見たことがない方には、一度歌舞伎の舞台で見られることをおすすめします。きっと認識を改めるのではないか、と思います。
by katorishu | 2008-02-20 12:46 | 映画演劇