コラム


by katorishu
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中世は案外、生き生きとした時代だった

 7月13日(日)
■このところ、仕事の必要から中世、室町末期から戦国時代をへて徳川幕府設立のころの資料漬けになっているが、「中世は暗い」「戦国時代は暗黒」という「常識」に反して、案外、生き生きとしていた時代であったと気づかされる。

■百姓と侍が未分化で、「地方分権」の時代であり、戦争で多くの人命が失われたことをのぞけば、「庶民が輝いていた時代」といえないこともない。とくに女性の発言力は強く、江戸時代のように男の「従属物」というわけでもなかった。いわゆる「賤民」といわれた人たちも天皇に直属する形で、それなりの存在を誇示していたようだ。

■キリスト教の宣教師ルイス・フロイスが当時の日本の女についてこう記している。(「フロイスの日本覚書」)
①日本の女性は処女の純潔をなんら重んじない。それを欠いても、栄誉も結婚(する資格)も失いはしない。
②日本では、各々が自分のわけまえを所有しており、ときには妻が夫に高利で貸しつける。
③日本では、望みのまま幾人でも離別する。彼女たちはそれによって栄誉も結婚(する資格)も失わない。
④日本では、しばしば妻たちのほうが夫を離別する。
⑤日本の女性は、夫に知らさず、また両親と相談することもなく、自由に行きたいところに行く。
⑥日本では、夫が後方を、そして妻が前方を歩く。
⑦日本では(女性の飲酒が)非常に頻繁であり、祭礼においてはたびたび酩酊するまで飲む。

■夫に従属し、付属物として従来描かれた女性とはちがう、案外生き生きした姿が彷彿される。そういえば、原始女性は太陽であった、と平塚雷鳥女史がかつて宣言した。人類は年をおって「進歩」したという史観が主流だが、果たしてそれが正しいのか、どうか。人間の「幸福度」や「感動力」という物差しから見ると、どうも人類は「退歩」に向かって歩んでいるのではないか。

■いずれにしても、中世は面白い。ところで知人の瀬川貴一郎氏(ペンネーム)が徳間文庫から「のらくら同心手控え帳」という時代小説をだした。定町廻り同心であった父のあとを継いだ独身の、のらりくらり男が、いどむ捕り物帳である。ミステリーなどを何冊も刊行した手練れの物語作家であるし、はじめて書いた時代ものとか。数ページ読んだだけだが、面白そうな予感がする。気軽にさらっと読めそうで、かたの凝らない娯楽小説としておすすめしたい。定価は629円プラス消費税。

by katorishu | 2008-07-13 23:12 | 文化一般