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不良老人伝

  2月29日(金)
■放送作家協会理事会に引き続き総会に出席。脚本アーカイブズと東京大学大学院情報学環との提携協力がスタートをきり、東大との提携の「言い出しっぺ」がぼくなので報告したが、「将来的には東大が運営主体になっていくかもしれない」というぼくの発言に対し、理事の中から「東大のためにどうして放送作家協会が協力するのか」といった類の疑念、批判もでた。説明不足であったかと思うが、方向性は間違っていないと思う。

■一般論であるが、なにか新しい試みをすると必ず批判をあびるものである。現状認識に落差があるし、「新しい」ことにはウサンクササも伴いがちである。ただ、日本に数ある社団法人のうち予算規模で恐らくもっとも少ない予算の日本放送作家協会が単独でできる事業ではなく、予算規模や継続性の双方を持ち合わせた組織との提携は必須である。

■脚本アーカイブズがなければ、失われてしまった(しまうであろう)脚本・台本をかなりの程度救済することになる、という一点だけでも試みたことの意味があるのではないか。東京に昭和通りという比較的幅の広い通りがある。東京市長の後藤新平がつくったと記憶しているが、当初道路を造るとき、なんでこんな広い道が必要なんだムダじゃないかといった強い批判、非難があった。

■しかし、その後のモータリゼーションを考えると先見の明があったことで、評価されている。どうか、長い目で見ていただきたいもの。比較が適当ではないかもしれませんが、関係者でこのブログをお読みいただいた方には、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

■雑誌「論座」と「望星」が送られてきた。「論座」にはノンフィクション「妖花」を連載していますので、ぜひお手にとっていただけたらと思います。「スター」という人の特色について、僕自身かかわった「勝新」さんのことにも触れており、読み応えがあるのでは、と思っています。

■「望星」では「不良老人伝」を特集しており、ぼくも「今村昌平」について書いています。ほかに扱っている人物は「上野英信(鎌田慧氏執筆)、「植草甚一」(津野海太郎氏執筆)、「今東光」(大村彦治郎氏執筆)、「本田靖春」(吉田司氏執筆)。極めて面白い特集です。東海大学出版会の出している地味な雑誌ですが、ここに連載したノンフィクションが大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しているし、中味の濃い文章がつまっている、近頃珍しい雑誌です。ぜひ書店でお手にとっていただきたいもの。
 尚「不良老人伝」はいずれ書籍化されるとのことです。出版の暁には、ぜひお読みください。
by katorishu | 2008-02-29 23:21 | 文化一般
 2月27日(水)
■昨日、日比谷のシネシャンテで映画『Lust Caution(ラスト・コーション)』を見た。一度、映画館までいき満員で断られた映画でもあり、一層見たい気分が募った。
 映画らしい映画、といっていい作品で、ぼくは堪能した。たいていの映画や演劇で意見の一致するカミサンは、やや不満であったようだが、ぼくには極めて面白かった。

■舞台は日本軍占領下の上海と香港。チャン・アイリンの自伝的短編が原作で監督はアン・リー。トニー・レオンと互角に渡り合うヒロインは、1万人のオーディションで選ばれたというタン・ウェイで、鮮烈な性描写に体を張ってチャレンジしており、感嘆した。
 総製作費40億円だという。上海の街角を再演した映像ほか、なるほどそれだけの費用をかけたと思わせる。

■日本軍占領下の上海で日本に協力的な特務機関長をトニー・レオンが演じる。クールな役づくりもいい。女スパイとして送り込まれた女性が、この特務機関長を『籠絡」し暗殺寸前に至るのだが、直前に特務機関長への「愛」が災いし、彼女をふくめた抗日組織は摘発され、銃殺される。

■サスペンスあふれる展開で、濃厚な性描写で、誰をも信じられない特務機関長の孤独で殺伐とした心理をするどくえぐっている。映画ならではの作品であり、劇場は7割ほど埋まっていた。人気のほどがうががえる。
by katorishu | 2008-02-28 02:09 | 映画演劇
  2月25日(月)
■中堅の出版社「アスコム」の経営者が夜逃げをしてしまったようだ。「ためしてガッテン」や「英語でしゃべらないと」などNHK関連の本や田原総一郎氏や松山千春氏らの本をだしている出版社だが、21日ごろから会社に連絡がとれなくなっているという。

■取引関係のある編集プロダクションなどは200社で、関係するライターは400人もいて、みんな不安にかられているそうだ。アスコムはアスキーの子会社であったのだが、アスキーの一般書の部局が分離独立することで設立されたという。夕刊フジによれば、従業員は43人で、07年3月期の売り上げは前期比14%減の15億1000万円であった。

■当期は赤字に転落したとのことだが、夜逃げとは穏やかではない。出資者に見切りをつけられ資金をひきあげられたのでは……という噂が流れているという。過日、草思社が倒産しているし、出版不況は相当深刻である。

■複数の出版社にぼくの原稿もいっているが、出版の予定がのびのびになっており、一瞬厭な予感を覚えた。インターネットなどのメディアの出現で本を読む人が減ったうえ、少子化で若者が減り、しかも多くの若者が活字を以前ほど読まなくなっている。そのことも本が売れないことの一因だが、やはり携帯等の普及が最大の理由かもしれない。

■高校生でも携帯の料金に月1万から3万円払っている人はすくなくない。それだけ携帯に費やせば、ほかにまわすお金がなくなる。さらに一日平均3時間も携帯をぴこぴこしていたら、本を読む時間もなくなってしまう。

■日本全土で携帯に費やされるお金と時間の総計は膨大で、天文学的な数字になるだろう。思考力を高め知識を増やす読書に費やす時間の減少は、将来的に日本社会にとって大きなマイナス要因となるのではないか。過日のブログでも触れたが、脳が新鮮でいろいろなものを吸収できる時期に、脳を鍛えることがどれほど大事であるか、脳科学者でなくともわかるはずである。

■中高生が携帯に一日3時間以上を使い、月に万単位のお金を使うなど、愚の骨頂である。お年寄りで暇で暇で仕方がない人なら、日に何時間携帯やテレビで時間つぶしをしようが、「どうぞ」と思うだけであるが。

■IT関連の事業を経営している「中小零細企業主」の記す「木走日記」が面白い記事を載せている。木走氏の会社で新しく社員を募集した。40歳のIT関連の「経験者」が応募してきたが、能力テストで「正社員」としてのスキルに達していなかった。本人の希望もあり、それではと「非正規雇用」として3ヶ月の期限で試験的に働いてもらったところ、技術力で期待できるものをもっていなかった。そのため、当初の3ヶ月でやめてもらうことにした。ところが、本人からの申し出で更に三ヶ月働いてもらった。

■結果は同じで期待する能力を発揮できなかった。で、やめてもらったのだが、当人からメールがきた。その趣旨は「正社員希望で入社したにもかかわらず、半年もパート雇用で使われ、あげくに一方的に解雇された、しかるべき公的機関に相談して法的な対処をするつもりだ」とのこと。
 驚いた木走氏は、すぐに関連資料を鞄につめて、池袋の労働相談センターに事の経緯を説明に行った。結局、40歳の非正規雇用者は、法的な対処を引っ込めたとのこと。

■確かに「非正規雇用」を「正規雇用」にすることは大事なことだが、能力のない人を正規雇用として傭ったりしたら、大企業や官庁ならともかく零細企業ではつぶれる原因になってしまう。朝日新聞の社説を批判する形で、木走氏は論理展開しているのだが、一定レベルのスキルをもたない人がふえていることも、労働問題を難しくしている。
 いくら真面目に一所懸命働いても、「結果」を出せない人がいる。能力で勝負する「フリーランス」など、いくら当人が「死ぬほど努力して」も、発注側の期待の水準に達しなかったら、「お引き取り願う」しかない。それが「現実」というものである。

■フリーターや非正規雇用者の中には、残念ながら「水準に達しないスキル」の持ち主も多い。右肩上がりの成長の時代なら、そういう人を「正規雇用」として雇うことも出来たのだろうが……倒産してしまっては元も子もない。
 いろいろと考えさせられる問題をふくんだブログ記事である。木走氏のブログは以下のURLです。
  http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/
by katorishu | 2008-02-26 01:37
 2月24日(日)
■昨日に引き続き都心部は強い風で砂塵がまっていた。一歩外へでると、街が赤黄色に染まっており、近頃では珍しい風景だった。新橋、銀座までいき、喫茶店で仕事。最近、銀座を歩いていて気づくのだが、中国人が多い。デパートでも上海などからやってくる観光客が上得意になっており、彼らなしでは商売が成り立ちにくくなっている。

■新橋駅近くで、今年初めて牛丼を食べたが、店を切り盛りしている二人の店員は中国人だった。中国からの冷凍食品が問題になっているが、日本は今や中国なしでは成り立たなくなっている。すでに衣類の7割が中国製品だし、食品の原料なども相当程度中国品である。

■ところで、ご飯一杯の値段はいくらだと思いますか。昨日、CSの番組で「季刊現代農業」の編集長が語っていたが、たった12円だという。茶碗一杯の米は60グラムほどで、その米の値段が12円であり、じつに安い。安いのは結構といってもいられない。
 この値段では米作りをする専業農家はやっていけないのである。今や農業を続けられるのは「余裕のある農家」という妙なことになっているという。

■バブル崩壊後、日本では格差が拡大し、年収200万円以下の人が急増しているが、彼らがそんな低賃金でもなんとか生活していけるのは、安い中国製品が大量にはいってきているからである。衣食住のうち、衣と食が「中国製品」のおかげで安く手にはいるので、なんとか生活できるのだが、考えてみると、いささか哀しい光景である。

■それで結構ではないかという人がいるかもしれないが、そんな安い製品をつくっている中国人労働者の工場での賃金は月1万円程度であるという。中国の低賃金労働者のおかげで、日本の低賃金労働者がかろうじて生きているという構図。一方で、日本でも中国でも巨万の富を築いている人間がいる。中間層の減少は社会を不安定にするし、長い目でみて国力の劣化につながる。

■日本の食料の自給率は先進国では最低であるが、例えばご飯一杯に12円ではなく、その倍の24円を日本人が支払うようになれば、日本の米作農業は復活する――といった意味のことを、「季刊現代農業」の編集長は話していた。一杯24円でも安い。ちなみに、中国産の冷凍餃子一個の値段は7円だという。食堂などでご飯類は100円から200円で売っており、コンビニのおにぎりは100円前後か。ご飯一杯の原価は12円程度と知ると、うーんとうなってしまう。

■米は栄養価も高いし日本人は長年、米を主食として生きてきた。24円で一杯のご飯を食べられるのなら、ファーストフード店で食べたりするより、もっと家でご飯を炊いて食べたほうがいい。賢明な「生活人」はとっくの昔から実施しているのだろうが。
 地方でもいろいろなところで、自分たちの食べるものは自分たちでつくり、その土地にとどまろうという人が増えているという。これは良い傾向だが、やはり食料の自給率を5割以上にあげるには政治の力を借りなければ。先行き、地球規模で食料難が発生する可能性が強いが、そのための備えが日本はまるで出来ていない。
by katorishu | 2008-02-25 00:34
 2月23日(土)
■携帯大手3社が未成年者の携帯サイトへのアクセスに規制をかけることになった、と過日新聞でも報じられた。「有害サイト」へ未成年者がアクセスし、それが犯罪に結びついているので、規制を加えなくてはということのようだ。

■業界では規制のことを「フィルタリング」といっているようだ。携帯3社は今後、新規契約者が20歳未満(ソフトバンクは18歳未満)、親権者がフィルタリングサービスを使わないことに同意しない限り、フィルタリングを設定するとのこと。

■このフィルタリングを適用すると、ケータイ小説も読めなくなるらしい。携帯サイトの「魔法のiらんど」の会員数は570万人で、その6割が中高生と20代前半の若者であるという。こうしたフィルタリングが実施されると「若者文化」が失われるという意見がある。
 一方、中高生が一日に携帯に接している時間が平均3時間という調査もある。知り合いの子供が最近、携帯の通話料に3万も使ったとか、ある人は娘の携帯料金が8万にもなって驚き呆れ怒ったとの話も聞いた。怒ったものの、結局親が払ったようだ。

■払う親も親だと思うが、携帯にかける時間と費用が気になる。それだけの時間と金を使えば、ほかに「まわす」分が減るというのは、算数の常識である。とくに携帯をいじっている時間が一日平均3時間というのは、暇をもてあましている老人ならともかく、中高生にはいかにも多すぎる。中高生は、いろいろな知識や物事の考え方の基礎を学ぶべきときで、この時期にしっかりした思考力や基礎知識をつける、つけないが、その後の人生に大きく影響する。脳が柔軟で吸収力のあるときに、基礎の基礎を植え付けることが、どんなに大事なことか。若者の多くは、あまりわかっていないようだ。

■ケータイ小説やメールの交換に長時間使えば、脳を鍛える時間が減る。それが問題である。携帯を使用すること自体は、悪くないと思うが、それによって「その時期に学ぶべきこと」を学んでいないことが、問題なのである。
 最近、大学の教官がよく「近頃の新入生は基礎知識がなさすぎる」「自己主張だけはうまいが、説得力に欠ける」「国語力がまるでなく、単語を知らなすぎる」といっており、ぼく自身、彼らから直接耳にする。

■少子化で競争がなくなり、大学の敷居が低くなったことも影響しているのだろうが、本を読む時間の少なさが一因であると思う。
 もともと本を読まないのに、携帯に費やす時間が増え、ますます本を読まず、自分の頭で思考することが出来なくなる。出来なくなっていることを、当人は自覚していないようでもある。

■携帯やその関連企業で利益をあげているところには、申し訳ないが、日本の文化水準を劣化させないためにも、中高生への携帯のフィルタリング、つまり規制は必要である、と思う。お年寄りなどは、脳の劣化をふせぐために、どんどん使ったほうがいいとは思うが。

■ただ、脳の劣化を防ぐというのなら、活字を読んだり、声を出して読んだりしたり、直接人と会って話したりしたほうが、はるかに効果的である。人間、楽をすると諸機能が劣化する。このことを、忘れてはいけないのだろう。「若いときは苦労を買ってでもしろ」と昔の人はいいことをいった。
by katorishu | 2008-02-23 21:49 | 文化一般
 2月21日(木)
■本日の衆議院予算委員会で、国交省のいい加減さを象徴することが明らかになった。国土交通省所管の公益法人「国際建設技術協会」が07年、道路特定財源約9200万円で作成した海外の道路事情の調査報告書が、わずか3部しか作られず、インターネット上の百科事典「ウィキペディア」の表を丸写しするなどずさんな内容だったというのである。(毎日新聞web版)

■報告書は約1100ページで、06年末に国交省が随意契約で同協会に発注したという。。報告書は米国各州の郡の数や、法定速度に関する表などをウィキペディアから引用。その他の参考資料も大半がインターネットからの引用だったそうだ。

■道路特定財源は年金と同じで、まるで天から降ってくるような金かなにかと、彼らに思われているのだろうか。この種のことはまだ他にも数多くあるに違いない。「国際建設技術協会」とかいう公益法人には多分、天下り役人が数多くいるのだろう。
 中国の党官僚などの汚職とたいしてかわらない深刻な事態というべきである。

■日本人の多くは真面目で勤勉だし、仕事の能力も高い。なのに、「豊かさの実感」をもてない人が多いのではないか。CSテレビでエコノミストの森永卓郎氏が、日本人があまり豊かさを実感できないことのひとつに「円安」があるといっていたが、あたっている。ロンドンでは地下鉄の初乗り運賃が日本円に換算すると1000円であると、過日、日経の役員であった人に直接聞いた。

■森永氏によれば、円の実力は80円から90円ぐらいであるという。最近、中国人の買い物客を銀座などで数多く見受けるが、彼らが一様に口にするのは「東京は物価が安い」である。
 円安で彼らは恩恵をうけているが、その分、多くの日本人は損をしている、ということだろう。上海のホテルは一泊4万円であるという。去年、ニューヨークで泊まったホテルはビジネスホテルに毛のはえた程度の部屋であったが、3万円を超えていたと記憶する。

■日本人が懸命に働いて得た「円」の価値が、世界の他の国の通過の価値に比べて安すぎるので、結果として高い輸入品を買う羽目になり、豊かさを実感できなくなっている――ことのようだ。政治が解決する問題であるが、「円安」で儲けているところもあり、そういうところに配慮しているのかどうか、金融政策担当者は思い切った手をうたないようだ。「ブッシュ退陣で、中東和平になれば、円は80円ぐらいになり、日本人はもっと豊かさを実感できるのでは」という意味のことを森永氏は発言していたが、その言葉を信じたい。
by katorishu | 2008-02-21 22:41
 2月20日(水)
■久しぶりにテレビ東京のワールドビジネスサテライトを見たところ、厚生年金の支払いが経営に重くのしかかり倒産する地方の企業が増えているとして、タクシー業界の厚生年金問題をとりあげていた。初めて知ったことだが、厚生年金の支払いが出来なくなった会社の支払い分は、その地方の同業の他社で負担するのだという。

■ある県には25のタクシー会社があり、そのうち5社が倒産すると、25のタクシー会社は年金支払いの負担がのしかかって、全社が連鎖倒産してしまうとのこと。じつに深刻な事態が日本のいたるところに生まれているようだ。繁栄を謳歌している一部企業や大企業社員、公務員などには、実感がないかもしれないが。

■自衛隊のイージス艦によってまっぷたつに裂かれ沈没した銚子のマグロ漁船なども、日々懸命に働いている零細漁民が担っている。衝突の真相をめぐって自衛隊側から漏れてくる情報が二転三転している。どうも「何かを隠している」のではないかと想像してしまう。
 そのうち、とんでもないことが表面化するのではないか。防衛省への機材等の納入疑惑も解明とはほど遠い状態だし、どうも検察の動きが鈍い。

■このところ、朝の7時、8時に起きるようになっている。朝の光の中をリュックを背負って、2,30分歩いて喫茶店、コーヒー店にいき、数時間執筆や資料読みなどをして昼頃帰宅する生活が根付いている。多くの人が当たり前に実行している「朝起きる」という習慣を持続したいものだ。こういう時代である。健康を害して寝込んだりしないよう「自己防衛」するしかない。せいぜい長生きして、産業革命によって生まれた「近代文明」がどのような所に行き着くのか、この眼でその一端を見てみたいものだ。
by katorishu | 2008-02-21 00:39
 2月19日(火)
■久々に歌舞伎を見た。東銀座の歌舞伎座で公演中の「初代松本白鸚27回忌追善興行」で、息子の松本幸四郎が「座長」である。夜の部、といっても16時半開始で、終わるのが20時50分の長丁場。(間に長い休憩がある)。
 叔父の88歳になる雀右衛門や弟の吉右衛門、息子の染五郎をしたがえて、幸四郎が「口上」を述べたが、これがなかなかのものだった。声がよく通り、ユーモアをまじえて父の思い出などを語った。

■三つの演し物があったが、源平の合戦で活躍した熊谷直実を主人公にした「熊谷陣屋」が、よかった。幸四郎が熱演し、完成された「様式美」の舞台の芸を見せてくれた。「型にはまった」芝居だが、最近、型もなにもない「素人芝居」が多いなか、さすが伝統の堆積を感じさせる舞台だった。女形の役者ともども、大変な熱演で、大衆演劇の基礎の基礎がここにあると思った。

■テレビの舞台中継でときどき歌舞伎を見ているものの、やはり劇場に足を運び、劇場の雰囲気を五感で感じつつ見ないと、ほんとうの良さは味わえない。「テレビ役者」としての幸四郎はあまり「買えない」が、歌舞伎役者としては、さすが、と改めて思った。

■昔、古今亭新志ん朝師匠が主演の「単身赴任」の問題をあつかう連続ドラマを書いたことがある。志ん朝さんの落語の流ちょうな味のある語り口が頭にあったもので、台詞も多めにしたのだが、落語とドラマではどうも勝手が違ったようだ。落語は一人で演ずるが、ドラマでは相手があり、稽古などもほとんどなく、ぶっつけ本番といった収録作業をする。勝手違った志ん朝さんは苦慮され、寄席での味をだせなかった。ぼくの脚本も、誇れるものではなかったが。

■今回、松本幸四郎(先代、染五郎)の歌舞伎座での演技をみて、役者がもてる力を最大限に発揮できるのは「本来の場」なのだな、とあらためて思ったことだった。テレビや映画でしか松本幸四郎の演技を見たことがない方には、一度歌舞伎の舞台で見られることをおすすめします。きっと認識を改めるのではないか、と思います。
by katorishu | 2008-02-20 12:46 | 映画演劇
 2月18日(月)
■週間ポストに「天下りの道路役人が『ガソリン税』で金貸しビジネスを行い、年収1900万の丸儲けをしている」という記事が載っている。ガソリン税のうち最も不透明な使い道は「貸付金」制度であると週間ポストは指摘しているが、驚いたことに、道路特定財源から、約1兆7800億円を融資にまわしているのだという。

■大半は国(国土交通省)から自治体や地方道路公社などに「道路建設資金」として貸し付けられているのだが、そのうち2270億円が同省の天下り財団を通じて『銭湯付き駐輪場』や『駐輪場付き住宅』などの建設資金に貸し付けられている。

■融資の窓口になっているのは国交省認可の「財団法人・道路開発振興センター」で、この財団には一般職員は8人なのに対し、常勤理事が4人、全員が官僚OBで、役員4人の給与は年間で計6700万ほどになるという。「道路特定財源」にはこの種の税のムダづかいがじつに多く、天下り官僚の典型的な「既得権益」になっている。

■「役人天国」日本を象徴する姿で、多額のガソリン税を払っている人はもっと怒らないと。今週のポストには、細川元首相と小泉元首相が「密会している」といった記事も出ており、興味深い。新党の旗揚げを政界ではさまざまに模索しているようだ。魑魅魍魎の住む世界なので、なにがあってもおかしくはない。洞爺湖の環境サミット後に行われるであろう総選挙にむけ、水面下で政治家はいろいろ狐と狸の化かし合いのようなことをやっているにちがいない。

■最近の世の中は複雑微妙なので「水戸黄門」のドラマのように白黒がはっきりしない。権力者についてだが、一見「善人」が結果としてワルであったり、ワルと思われていた人が結果として社会に利益をもたらすこともある。世論調査でしめされる「世論」の選択が「間違い」を犯すこともしばしばである。個人のレベルでも「良かれ」と思ってしたことが、ある人を深く傷つけたり、誤解曲解されて「策略家」と思われたりする。

■こういう時代「世渡り」というのもむずかしいものだ。小さな小さな組織にも、さまざまな確執があって……組織をやめたり、批判したり、根も葉もないことをふりまいたり、逆に興味をもってはいってきたり……いろいろである。
 良否を判定するにも、すこし長い目で見ていかないと、間違いを犯す。もっとも、権力からほど遠い、力のない個人のやることなど、たとえ間違ったとしても、「罪」は軽いものだが。
by katorishu | 2008-02-19 01:57

寒い日曜日、仕事、仕事

 2月17日(日)
■寒い日が続く。昨日、蔵前にあるアドリブ小劇場に足を運んだ・劇団未成年の3本の短編オムニバス作の公演。ときどきインタビューなどのアシスタントをお願いしている門脇順子嬢が脚本を書いているので、見に行った。役者、演出とも、「試みの努力を買う」というにとどめよう。

■テレビのゴールデンアワーの情報バラエティ番組やコマーシャルの影響を如実に受けている舞台が多いという気がする。それも悪くはないのだが、かっちりした昔の新劇を思わせる舞台のほうが、かえって新鮮に感じられるのではないか。
 笑わせることは大事な要素だが、本当の笑いというのは案外むずかしいものだ。

■本日、久々に品川図書館に足を運んだ。ほぼ満席の状態であった。60歳を超えたと思われる男女の姿が目立つ。テレビでベトナムでは30歳以下が人口の半分であると報じていた。日本の昭和30年代の人口構成だと思う。やはり若い人が多くないと、社会から活気が失われる。
 多くの若者が「安心して子供を産める」環境にしていかないと、日本は早晩、自滅の方向にむかう。本日、珍しく外で8時間以上、原稿書きの仕事。眼がしょぼしょぼで風景がかすれて見える。
by katorishu | 2008-02-17 23:25 | 個人的な問題