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10月30日(木)
■昨日、咳があまりに激しいので、今朝、近くのクリニックにいった。あるウイルスが原因という。どうもこのウイルスに対して、ぼくには抗体がないようだ。昨年も一昨年も、この時期、咳がつづきこのクリニックを訪れている。それが診療記録にあるようだ。

■「またでましたか。抗体がないんですよ」と年配の親切そうな医師。7種類ほどの薬をもらった。抗体がないのが、この程度のウイルスでよかったと改めて思ったことだった。もっと重い病気であったら、命取りになる。じっさい、ある種の抗体がないため、「普通の人」には何でもないことで苦しんでいる人も数多くいる。

■「普通の人」にはそれがわからないので、苦しんでいる人のことを「虚弱だ」とか「わがまま病」だとかいって批判する。ひとそれぞれ、弱みも強みも違うのである。だから人間は面白いのだが、この20年ほど「数字」という物差しが絶対の力をもちすぎであり、人間をつまらなくさせている。

■麻生政権、ついにバラマキをはじめたのですね。全家庭に数万円のお金を配っても、景気回復につながりはしないだろう。年収が1億ある人にも配るなんて――。以前、公明党が「地域振興券」なるものを配ったが、まったく景気浮上に効果のなかったことが証明されているというのに。過日、自民党が行った総選挙についての調査で、自公民が過半数割れという数字がはっきりと出てしまった。そのため場当たり的にやったという印象をぬぐえない。

■同じ2兆円を使うなら、もっと日本の将来の発展につながることに、集中的に税金を投入して欲しいものだ。農林中金であったか、天下り理事長の年収が4000万円以上との報道があったが、こういう「無駄」を削ることからはじめないと。すべて税金から出ているのである。
 公共事業も国民の多くにとって有益になることに使うなら結構なことだ。一部族議員やこれに連なる業者、そうして天下りの人たちの「私利益」になっていることが問題なのである。天下りをなくす勇気がないにしても、少なくとも天下りで高給をはんでいる人の年収を半分カットして、カット分を保険証もない3万人以上の子供たちの救済にあてる、とでもいう政策をだせば、もっと人気が出るのに。

■良いニュースといえば、アメリカの株価が続落している中、東京証券取引所の株価が上昇したということである。一時的なものかもしれないが、ビジネス界にはほっとして空気が流れたのかもしれない。本日、薬のおかげで咳もやんだので、大井町界隈に足をのばしたところ、夕方ということもあって、路地の飲み屋街が賑わっていた。立ち飲みやなど満杯で明るい笑い声につつまれている。高級店はこの限りではないのかもしれないが、日々汗水、脂汗たらして働いている人たちに笑顔が浮かぶ――という傾向は歓迎したい。
 
by katorishu | 2008-10-30 20:53 | 政治
 10月29日(水)
■風邪がいったん治ったと思ったのに、咳がでてとまらない。熱はなさそうなのだが、以前咳が長引いたときのことが思い出された。2時間ほど近くのコーヒー店にいった以外はずっと家にいた。こういうときに限って電話が多い。以前とちがって「遊び」の電話はかからない。

■なんらかの形で仕事にからむのだが、かならずしも良いニュースではない。今後どうなるのかといった企画話をはじめ諸々である。一応、社会的な活動をしている証拠だが、この不景気風は現実に相当仕事に響く。

■世間の動きと直接関係はないが、執筆の仕事も、なかなかはかどらず、いたずらに時間がすぎていく。多分、気力の問題なのだろう。体の芯からわきあがる活力が感じられない。日本の経済と同様悪い兆候だ。仕方なしに布団に横になって「大菩薩峠」を読む。
 誤解しているムキもあるようなので、評論家尾崎秀樹の解説を応用して以下簡単に記す。この大長編小説には「特定の主人公」はいない。じっさいに本を読んでいない人の頭に、机龍之助のことが強くはいりこんでいるようだが、これは基本的に群像劇である。

■浪曲や講談にも通じる庶民文芸の伝統にのっとりながら、さらにつきぬけた深さをもった特異な小説である。筆致にシナリオとにた展開、ト書きめいた言葉が記され、あるリズムを刻んでいる。介山自身、じっさいに大菩薩峠のシナリオも書いた。

■識者の評価も高い。谷崎潤一郎は、この作品の気品の高さに触れ「決してチャンチャンバラバラの剣戟小説ではない。チャンチャンバラバラはほんの上っ面にすぎないので、底を流れているのは机龍之助を中心とする氷のような冷ややかさ、骨身に沁むような寒さ」であると記す。また、大宅壮一は「(龍之助を)神そのもののごとき自由人」であるといい、「一切の現世の約束事から完全に解放され、一切の人間的感情を蹂躙して、生と死の間に横たわる目に見えぬ線――幅も厚さもない幾何学的線上で、虚無の舞踏を乱舞し得る超人である」と記す。

■中里介山本人の思想を体現したような人物が多数登場するが、尾崎は介山そのものに「儒教的なもの、武士道的なもの、仏教的なもの、キリスト教的なものが、混沌のままに存在するところがある」と喝破している。 
 宮沢賢治がこの小説の愛読者であったことも興味深い。賢治は即興詩「大菩薩峠を読みて」でつぎのように詠った。
  日は沈み 鳥はねぐらにかへれども
  ひとはかへらぬ 修羅の旅
   その龍之助

■当初この小説、自費出版で200部刷られたという。介山は自由、平等、博愛をかかげた「平民新聞」にひかれ、一時は幸徳秋水などにも心酔した。三多摩壮士の気分をもひくが、多摩の羽村の生まれである。ぼくは比較的近いところに生まれ育ち、近くに三多摩壮士の気分を残した人もいたので、介山にいっそう近しいものを覚える。

■介山は自らの小説を「大乗小説」「宗教小説」と称した。さらに趣意についていう。「人間界の諸相を曲尽して、大乗遊戯の境に参入するカルマ曼荼羅の面影を大凡下の筆にうちし見んとするにあり」

■ずいぶん昔のことだが、羽村にある中里介山記念館を訪れ、介山の確か弟さんに話を聞いたことがある。その方が館長で孤塁を守っている雰囲気があった。記念館はいまでも残っているのだろうか。介山はマスコミに背をむけ、時勢におもねず、戦時中の文学報告会の結成に際して入会を拒否した。昭和19年4月28日、腸チフスで急逝した。今こそ、もっと読まれて良い小説である。あと19巻、時間をかけてゆっくり読む。それが楽しみのひとつに加わった。今書きつつある時代ものの小説に影響するに違いない。この作、もう半分ほどいっていなければいけないのに、まだ第二章あたりで行きつ戻りつしている。
by katorishu | 2008-10-30 00:15 | 文化一般
 10月28日(火)
■グーグルのストリートビューなる面妖なサービスがはじまったらしい。住所がわかれば、世界中どこからでもその家の詳細が映し出される。不動産会社などはこんな便利なものなないと、すでにビジネスにとりいれているようだが、プライバシーや防犯の観点から極めて問題のある「サービス」である。

■ベランダにある洗濯物まで見えてしまい、もちろんその家に出入りする人も写される。顔にはぼかしをいれるといっているが、老人だけの住人で、かなり立派な家――ということなども、さらけだされてしまう。悪企みをする人にはこんなに便利なツールはないかもしれない。

■便利さが最優先される社会は、アメリカの金融原理主義の崩壊とともに終わりにしてほしいものだ。恐らくこのストリート・ビューは、かなりの割合で好奇心、覗きなどの目的で利用されるし、すでに利用されているのだろう。覗き趣味を満足させるツールなど、いくら便利でも、制限を加えなければいけない。

■もっとも、個人のプライバシーを保護するという名目でできた「個人情報保護法」など、じっさいは違う使い方をされており、不正を隠蔽することにも使われている。政治家などの権力者の「悪」をメディアが追求したり、犯罪捜査をする際、「個人情報」だとして取材拒否をされたりして、障害もでている。名目と実際の使われ方はちがうのである。戦前の「治安維持法」など典型例である。治安維持という名目は結構だが、この法律が拡大解釈され、権力にすこしでも批判的な人や組織を強権で弾圧し、言論の自由を封じ込め、特異な社会をつくってしまった。

■ストリート・ビューに話をもどすと、公道から撮影されるものはプライバシー侵害にならないと法律家はいっているが、それが即時に地球全土に公開されてしまうとなると話はべつである。ストーカーや空き巣などにとっては、願ったりかなったりのツールであろう。ネット社会という新しい領域が生まれた以上、これまで適用されてきた法律も見直す必要がある。

■映像ソフトや書物なども、ネットというものを前提としてこなかったので、著作権法も見直しの時にきている。現行の著作権法はソフトの二次利用、三次利用の面でむしろ障害になっている側面もあり、現在、総務省で改正作業が進んでいるときく。旧来の著作権法を守ろうとする文化庁と改正しようとする総務省との間で、かなりの対立があるようだ。著作権をもつ者の意見もまちまちで、あくまで旧来の著作権に固執する人もいる。
 今後、作品がウエブ上で公開されることが多くなるが、旧来の著作権法はそれに大きくブレーキをかけている。ぼくはこの点では総務省の肩をもちたい。もちろん、中身を精査しなければいけないが。
by katorishu | 2008-10-28 22:50 | 社会問題
 10月27日(月)
■株価がバブル崩壊後の底値をわって下落した。本日も新聞のトップ記事である。不動産業の零細な下請けは数百万の代金が払われないと、倒産するところもある。資産もなく、銀行からは門前払い。「倒産しかない。零細には数百万が響くんです」という業者へのインタビューがテレビで流れていた。彼等に救いにてをさしのべるのが、政治の役割のひとつだと思うのだが。高い技術をもった中小零細が、銀行からの資金を絶たれて悲鳴をあげている。1億資金のある「投資家」が「半分になってしまった」と嘆いていたが、会社の倒産は質が違う。死んだら、再生はむずかしいのである。

■本日、外出をしないつもりであったが、落ち着かないので品川シーサイドのビル内にあるコーヒー店に足を運んだ。客がすくない。楽天の本社などが移ってきた今年春から夏ごろまでは賑わっていたのだが。界隈では比較的高い値段の喫茶店なので、敬遠するのか。たまたまだったのか。帰りがけに見た韓国料理屋も客はゼロ。午後8時だというのに。開店したばかりの蕎麦屋も閉店した。

■マスコミ報道の影響もあるのか、全体に多くの人の気持ちが縮こまっているという気がする。以前から満州事変の前の昭和初年の社会の空気と似ていると感じていたが、この傾向に拍車がかかるかもしれない。大正デモクラシーの花が開いて、特に都会ではバブリーな空気が支配的であったのだが、1929年の世界大恐慌が一気に引き飛ばしてしまった。あとにきたのが「エログロナンセンス」であり、右翼や軍部の台頭である。

■当時とはちがって言論の自由が、不自由があるにしても、かなりマシに機能しているので、戦前の二の舞を演じることはないと思うが、テレビのゴールデンアワーで放送される多くの番組は十分に「エログロナンセンス」である。
 昼間、某局で番組制作局長もつとめ、一緒にドラマの仕事をしたIさんから電話。最近のテレビ番組などについて話し合った。制作の現場で企画の取捨選択などを行うプロデューサーなどに「ポリシー」がなく、「物づくり」の面白さ楽しさも知らない、ということで意見が一致した。「現場で汗水たらして鍛えられた」経験のないことが、最大の理由でしょうね、とIさん。「数字」だけで物事の価値を判断する風潮が、今度の「金融危機」で弱くなるといいのだが。
by katorishu | 2008-10-27 21:53 | 社会問題
10月27日(月)
■珍しく寒気がして熱をだした。くしゃみなども出るので風邪に違いない。体調の悪いときは動物から学ぶことにしている。動物は体調が悪いと、なにも食べずにじっとしている。野生の動物だとそうもいかないのだろうが、犬猫などはじっとうずくまり「自然治癒」に身をまかせているようだ。

■それでもよくならないので葛根湯などをのんだが、結局一番効いたのは「富山の置き薬」だった。これを飲んで布団に横になってじっとしていると、半分起きて半分眠っている状態であったが、汗がでて熱もさがったようだ。「動物的」なのである。もちろん、動物だから当たり前だ。人間は動植物から学ぶべきことが多い。そういう謙虚さを失ってしまったのが、「現代人」なのだろう。

■今こそ、地に足をつけて生きていた昔の人から学ばなければいけないのだろう。昨日、駅近くのドトール・コーヒーへはいり、隣を見て「驚いた」。隣に一人できてすわっている男女3人がいずれも本を読んでいたのである。コーヒー店や電車の中で文庫本など本を読む光景は日本では当たり前であったのだが、いつの間にか携帯画面を見る光景にかわってしまった。「本離れ」があいかわらずという声を聞くが、こういう一角にあらわれた、ちょっとした出来事から、時代の変化を感じ取ることができる。

■昨日から中里介山の「大菩薩峠」を読み始めているが、面白い。日本でも一,二を争う大長編小説で、以前、何度か試みたのだが、挫折してしまった。今回、読み始め、以前とは違う印象を抱いた。ニヒルな机龍之介の風貌がひどくリアルに浮かびあがり、改めて「こんなに面白い小説だったのか」と思った。ささやかながら、小さな楽しみがひとつ増えそうだ。
by katorishu | 2008-10-27 14:57 | 文化一般
日本脚本アーカイブズについて、10月27日(月)、13時より14時まで生放送されるNHK「スタジオパークからこんにちは」で紹介されます。13時45分ごろから7分間ほど、NHKの扇谷解説員が解説します。 
日本脚本アーカイブズはどういうものであるのか、その設立の意味と現況、将来展望などについて話されます。生放送なので、突発的事件や重大ニュースなどがあると、前回同様、延期されますが。

■現在、東京大学大学院情報学環と「共同研究」をはじめており、「現物保存」と「デジタル保存」の2本の柱で、これまでは廃棄されてきた脚本・台本を収集し保存、管理し、将来的には「社会還元」をしていこうという組織です。まだ「準備室」段階で、脚本アーカイブズ委員は交通費等はでるものの基本的に「ボランティア」でかかわっています。

■なお日本脚本アーカイブズについて、仮のものですが、ホームページができました。
 以下のURLです。
http://www.nk-archives.com/

■アーカイブというのは、記録を保存して将来につないでいこうとするもので、「記憶の保存」ともいえます。その時点では無駄とか意味がないと思われたものが時代が移ると大きな意味をもってくることは、よくあることです。文化とは、ある意味で伝統の積み重ねでもあり、その意味で脚本アーカイブズをつくることは、映像文化の発展のためにきわめて重要だと思っています。
 中心メンバーのひとりとして、ずっとかかわっています。こういう社会情勢ですから、前途には困さまざまな難が山積していますが、なんとか乗り越えて実現させていきたいと思っています。
by katorishu | 2008-10-26 07:54 | 文化一般
10月25日(土)
■午前1時すぎから始まった「朝まで生テレビ」は案外面白かった。現在、焦眉のアメリカ発金融危機をとりあげていて、堀紘一氏と、民主党議員で元日銀職員氏の発言が面白かった。アメリカの投資銀行の職員等は顔を見ればわかる、と堀氏。人相が悪いというのである。具体的な喩えを用いて、わかりやすく解説してくれた。

■日本政府もアメリカの意を受け、銀行預金より株を買うようにとのキャンペーンをはり、主に「団塊の世代」のサラリーマンの退職金がねらわれ、大損をしたようだ。そんなことも、よくわかる展開だった。一方、ダメなのは自民党の二人の議員。大村某と伊藤某。ともに東大卒の元官僚だが、完全に「過去の遺物」化している。こういう人たちに日本の舵取りをまかせることは出来ない、と改めて感じた。

■それにしても、アメリカのつくりだしたテコの原理を応用した金融証券。金融工学とやらを駆使して、壮大な詐欺の「マジック」を世界にばらまき、大混乱を引き起こした。
 さらに多くの血が流れる可能性が強い。しかし、危機を乗り越えたところから、世界的に新しい、比較的健全なシステムが構築されるにちがいない。そうしないと、人類は滅びる。そんな極点にまできてしまったのである。

■返却が遅れていた港図書館に本を返しに行く。御成門から歩いて新橋まで行き、珈琲店で執筆。向こうの席に国際問題分析家の田中宇氏がいて携帯パソコンで執筆をしていた。田中氏とは台湾問題研究会で名刺交換したりしたが、真剣にパソコンに向かっているので、声をかけるのはさしひかえた。田中氏もこういうところを「仕事場」としているのだと思い、親近感を抱いた。田中氏のメルマガは毎回読んでいるが、海外の新聞の記事を分析して実証的に政治や経済の解析をしており、ためになる。インターネットが生んだ新しい形のジャーナリストである。

■懸念される株価だが、ウオール街の株価はまた下落した。底なしである。週あけの東証の株価がどうなるか。日本経済に決定的な影響をおよぼすので、無関心ではいられない。本日入った駅近くの、別の立ち飲みや。40分ほどいたが、客はほかに誰もいなかった。
by katorishu | 2008-10-26 00:05
 10月24日(金)
■本日、夕刊のトップ記事は株価急落について。東京証券取引所の株価が7649円で取引を終えた。大変な暴落というべきだろう。一年前、株価の総計は503兆円あった。それが本日は258兆円になった。一年で半分になったということである。これでとどまってくれるといいのだが、まだわからないということが、怖い。

■すでに「世界大恐慌」にはいったというべきだろうが、アメリカのグリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長が、下院政府改革委員会で開かれた公聴会で、低所得者向け高金利型(サブプライム)住宅ローン問題に端を発した金融危機に関連し、融資監督で議長時代に「過ちを犯した」と語り、政策運営のミスを認めた。(時事通信)。
 18年間にわたってFRBをひきいて「マエストロ(巨匠)」などといってもてはやされた人だが、とんでもない事態をまねいた「当事者」といっていいだろう。

■ワックスマン委員長(民主)が「サブプライム融資を過熱させた無責任な慣行を止める権限が当時のFRBにあったのでは」などと追及したのに対し、前議長は「(規制よりも)金融機関の自己利益追求が、(結果として)株主や株主資本を最大限に守ることになると考えた。過ちを犯した」と答えたという。
 いまさら謝ってもらっても困る、いったいどういう責任をとるんだ、と思っている人は多いはずである。

■「金融工学」というマジックでバブルをあおり、結局は破綻に追い込んだのである。地に足をつけて汗水ながして働く――という人間が長年かけてつなげてきた「伝統」を破壊したところからは何も生まれない、ということが、改めて証明されたということである。

■金融関係者が破綻するのは自業自得だが、実態経済にまで深刻な影響をおよぼしているので、他人事ではない。質素に地味に人に迷惑をかけないで生きようとしている人たちにも、世界的な株価の下落の波は容赦なく襲いかかる。
 よほど経済に強いリーダーがリーダーシップを発揮しなければいけないのだが、総選挙での当選しか頭にない政治家が大半の日本。打つ手が後手後手にまわったら、日本もアメリカと一緒に沈没してしまう。

■ブッシュ政権も最後を迎えるが、この政権のやったことは、いったいなんだったのか。イラク戦争を起こして「テロ」を拡散し、世界的な経済危機をもたらして多くの人間を不幸にしただけではないのか。ブッシュ政権に全面的に追従し「改革、改革」と叫んでいた連中は今、沈黙をまもっている。ソ連崩壊のあと、「マルクス経済学者」やいわゆる「左翼」が沈黙を守ったことを、想起させる。

■率直にって、第二次大戦後の世界をリードしてきた米ソのふたつの「帝国」が崩壊した、ということである。アメリカそのものはしぶとく生き残るであろうが、「アメリカ式の金融原理主義」は終わりである。「産業革命」以来、アングロ・サクソンの主導で動かしてきた世界が、今大きな変わり目に来ているといっていいだろう。まだまだ大変不幸な事態がやってくる可能性が強いが、これを乗り越えるところから、日本は本当の意味で「戦後(アメリカ占領政策)」から脱却できるのではないか。

■江戸時代の、環境と調和して生きる文化――これを基軸に独自の「日本スタイル」を構築して、世界の中で「名誉ある位置」をしめたいものだ――と口でいうのは簡単だが、さてこの大津波からどうやって身を守るか。「津波」の規模がまだ見えていないので、不安が増幅される。みんなが一斉に財布のひもを締めてしまうと、社会の血液である「金」がまわらなくなり、社会は壊死に近い状態になってしまう。嫌な時代がやってきたものである。
by katorishu | 2008-10-24 22:40
10月23日(金)
■この世には「二つの人種がいる」と思うことがある。ひとつは株価の急速な下落で生活に深刻な影響をうける人と、そんなことは「一部業界や関係者のこと」として他人事と考えている人と。前者には株の取引などまったくしていなものの、株価下落による実態経済の毀損で、売掛金などを回収できず銀行の貸し渋り貸しはがしにあったりで青息吐息の中小零細経営者やそこの従業員などがいる。すでに倒産してしまったり、その崖っぷちにいる人にとっても、大変深刻な事態がつづく。「フリー」の仕事についている人の多くも、こちらサイドにはいるだろう。

■一方で、株に投資して多少の損はしたものの、生活の基盤は「安泰」で「大変だ」などといいながらも、実生活にはあまり響いていない人。比較すれば前者が圧倒的に多いのではないか。戦争や大災害のように目に見える形で「傷」が露呈していないので、後者には深傷を負っている人の深刻度が「見えない」し「気づかない」。

■ぼくの実感では、東京でもぎりぎり切羽詰まっている人が1割、相当深刻な人が2割、今はなんとか「喰える」が、先行きどうなるかわからず不安で気の休まらない人が4割ほどではないか。一方、頭のなかでは深刻さがわかっていても、十分「喰えている」人が2割、「恐慌などどこの世界」と関心もなく影響もほとんどない人が1割。

■崖っぷちにある人から見たら、3割ぐらいの人が「お気楽に」生きている。これは外からではなかなかわからない。とくに「お気楽派」には、相当目を凝らして見ないと「見えてこない」。被害、毀損の質も量も見えないし、わからない、というのが、もっとも深刻かもしれない。見えないし、わからないので、適切な手当のしようがなく、ただ血の流れるのを呆然と見ているだけ――というのが日本の現況ではないのか。

■この世をリードしている政治家、官僚、これに準じる人たちの毀損度は、どうの程度なのか。一般より「情報」をいち早くつかめる立場にいる人も多く、事の深刻さを、身をもってわかっていない人も相当数いそうである。人の懐具合は外から見るのと違う場合が多いので、断定はできないが。
 こういう空気の中で育つ子供たちの心への影響が気になる。ますます「夢のもてない」世界になっていきそうで――。教育現場にまかせておけないという気分になる。
 本日は北千住で脚本アーカイブズと東大大学院の研究者との「定例協議」。
 ついでながら、来週27日(月曜)の13時からのNHK「スタジオパークからこんにちは」で、脚本アーカイブズのことが取り上げられる予定です。13時45分ごろから6,7分、解説員が生放送で解説することになっています。ただし、突発的な事件などがあった場合は延期になりますが。
by katorishu | 2008-10-24 05:06 | 社会問題

世論調査をどう見るか

10月22日(水)
■CNNの世論調査によると、アメリカ人の75%が現在のアメリカの現状を「悪くなっている」と回答したという。CNNとオピニオン・リサーチ社が10月21日に発表した世論調査の結果である。
 全米の成人1058人を対象に電話で実施したとのことだ。対象数が少ないのでは……と思ったりもするが、「世論」の一端を示すもので、対象者の3分の2が状況を怖く感じており、4分の3が現状からストレスを受けていると答えている。

■一方で、国の状況が良くなっていると回答したのは、25%にとどまった、とCNNの記事は記している。世論調査担当者によると、ここまで「不満度」が高かったのは、過去40年間で3度、ウォーターゲート事件、テヘランの米国大使館占拠事件、1992年の不況時だけだったという。

■ぼくには、逆に「良くなった」が25%もいることが、驚きだった。100年に1度という大金融危機に直面し、アメリカという国の根幹がゆらいでいるというのに、4人に1人は「良くなった」と感じているのである。マスコミ報道などを見ていると、10人のうち9人は「悪くなった」と感じている――と思っていたのだが、そうではないということである。

■過日、某エコノミストが、アメリカ人は深刻な状況を深刻ととらえていない人が多い、アメリカよりまだマシなはずの日本人のほうが憂えている、と話していた。なるほどね。ものごとを常に楽観的にとらえるアメリカ人と、悲観的にとらえる日本人との「国民性」の違いなのか。「危機」に直面し、「もう駄目だ」と思うより、「でも希望はある」と思うほうが、より積極的な生き方かもしれない。

■こういう時だからこそ、多少経済的に余裕のある人は、「消費」をして欲しいとも昼間、某氏と話したりした。そうしないと、社会の「血液」である「お金」がまわらなくなり、多くの人が「喰えなく」なる。「喰えなくなれば」人は自死するか、悪でもモラルを欠いたことでも何でもする。そういう傾向が強まれば、当然社会は劣化の度をくわえ、今「喰えている」人の生活をも直撃する。

■アメリカの調査で「良くなった」と答えたひとは、必ずしも収入が増えたということではないだろう。金融原理主義の風潮や、金がすべてという風潮が、すこしは改善されるかもしれないという「期待値」もこもっているにちがない。
 こういう時代だからこそ、「危機」を「再生」へのチャンスととらえ、明日に希望を託すことも、忘れてはいけないのだろう。本日も、鉄道の「人身事故」が理由の遅延にぶつかった。自殺である。じつに多いと感じている。

■本日は、昼に渋谷で仕事の打ち合わせをすませ、急いで六本木のシネコンに行き、東京国際映画祭の映画を見た。東京大学大学院情報学環が製作したドキュメント「ブルー・シンフォニー」。学生の「授業」でつくられたもので、馬場教授からぜひ見て欲しいといわれていたもので。国際映画祭に東大の学生の制作した映画が公開されたのは、131年の東大の歴史のなかでも初めてのこと、と製作総指揮の馬場章教授は終わってからの「ティーチイン」で話していた。「プロ」の視点から見ると、まだ修正すべき点がいくつもあると感じたが、試みは高く評価したい。「もぐりの天才、ジャック・マイヨール」のドキュメントで、九州唐津の「虹の松原」に面した海が舞台。唐津には取材で二度ほどいったことがあるので、懐かしかった。後味の良いドキュメントである。

■学生同士の意見が相反することも多く、ある意味「妥協の産物」でもあったようだ。作品創りにあっては「民主主義」は邪魔になる、と思ったことだった。夜は役者やプロデューサーなど番組製作関係者などが中心の「飲み会」に顔をだす。穏やかに飲み談笑――ということにはならず、危なく役者同士の殴り合いの喧嘩になりそうだった。なんとかおさまって、ぼくは早めに辞したが……。中年から老年にさしかかった人たちのかかえているストレスも、相当なものだと、あらためて思ったことだった。
by katorishu | 2008-10-23 04:29 | 社会問題