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 2月28日(日)
■元NHKの経済記者の池田信夫氏がブログで、『中高年の「終身雇用」や年金の負担を若年層に押しつけ、おまけに所得再分配の原資まで国債で調達して将来世代から1人7000万円も収奪する老人支配が問題の本質なのである。若者は老人から財産を相続しており、これまでの世代の築いた豊かな社会の恩恵を受けているので世代間格差はそれほど大きくないという批判もあるが、深刻なのは所得よりも雇用である』と記している。

■池田氏によると、企業は雇用規制を回避して賃金を実質的に切り下げるテクニックを熟知しており、団塊世代の社員が大量に定年退職する欠員を契約社員で埋める労働人口全体の非正規化が進んでいる、とのことだ。池田氏は「老人支配」が問題であると強調している。ひとくちに「老人」といっても様々で、資産もなく、年金などの恩恵の枠外にある人も多い。「老人支配」の「老人」とは、手厚い年金などで「遊んで暮らしている」年金生活者や、年功序列の賃金体系の恩恵を受けてき、受けている層を主にさしているのだろう。

■自民党は大企業の権益の上にたち、これにかわった民主政権は「正規労働者」の利益代弁である「労組」の権益の上にたっているので、この問題の解決はきわめてむずかしいが、ここを解決しないと、日本に明るさが射さないと池田氏は率直に指摘する。確かに、政権交代をなしとげた民主政権にしても本気で解決する気持ちは薄いようだ。かくて、日本は経済面から見ると、ますます劣化の度がすすむ。経済面では好転の兆しはない。では、どうしたらいいのか。

■私見では、価値観の根本的な転換が、いずれ求められてくるかもしれない。一言でいえば「金銭のあまりかからない暮らし」。「カネはなくとも、そこそこ幸せな暮らし」である。資本主義でも共産主義でもない、べつの社会運営システムである。そんなものがあるのか、夢物語ではないか、という人がいるかもしれないが、人類の歴史とは「夢物語」を実現させる歴史でもあった。今の小学生ほどの人たちに、もしかして希望の灯があるかもしれない。「金銭資本主義」にどっぷりつかった「大人」は、価値観の根本的変換をする柔軟性も膂力(りょりょく)もない。やはり行き着くところまでいって大変な悲惨さを体験しないと、人は現状を根本的には変えたがらない。
by katorishu | 2010-02-28 17:48 | 社会問題
 2月27日(土)
■某所にデジタル・マガジンの連続ものの第一回原稿を送った。「面白い」という反応が返ってきたのでちょっと気分をよくして高円寺まで。明石スタジオで公演中の劇団ギルドの『青い地球の人間図鑑』を見に行く。

■主宰の高谷氏の作・演出。永年の知り合いであるし、なるべく見に行くようにしている。いわゆるウエルメイドな芝居ではなく、アングラでもないが、ややそれに近い演出法で、ぼくなどとは違う分野の芝居を上演しつづけていて、その意欲、エネルギーにはいつも感嘆する。本日の芝居は、これまで見た高谷作・演出作品では、もっとも面白かった。山田風太郎の『人間臨終図鑑』からヒントを得て作ったとのことで、沖田総司、樋口一葉、ラスプーチン、サラ・ベルナール、川島芳子、サン・テクジュペリの臨終のドラマをオムニバス的に描いたもの。

■ミュージカルの色合いも加味して、高谷氏としては新機軸をだしていて、好感をもてた。役者たちも生き生きしていて、時間をつかっていった甲斐があった。3日間の公演ということだが、もったいない。もっと長い期間の公演でも十分もつのでは、と申し上げた。

■久しぶりの高円寺である。街をぶらつくと、古本屋が残っていた。ブックオフなどとは売っている本が違う。こういう古本屋があるかないかで、その街の「文化度」がはかれる。昔中央線沿線に住んでいたので、高円寺や荻窪、西荻窪、吉祥寺などによく降りた。降りると必ずいくのが古本屋であった。昔のことを思い出しつつ歩いた。このところ、いらだつことも多いが、本日はやや良い気分で床につくことができそうだ。
by katorishu | 2010-02-28 00:46 | 映画演劇
 2月26日(金)
■世の中には2通りの人間がいる。何か新しい試みをやろうとする常に「どうせそんなことやったってうまくいかない」「理想論にしか過ぎない」「足が地についていない」「以前同じようなことをやって失敗したケースがある」などと否定的なことばかりいうひとと、一方で「それは面白い」「ぜひチャレンジするといい」「失敗はつきものだし、そこから学ぶこともある」などと前向きに評価する人と。

■いつの時代でも、困難を克服し、新しい時代を切り開いていく人は後者のほうである。体験的に、否定派が6割で、積極推進派が2割、あとの2割は「どうでもよい」派かと思える。否定派の人には往々にしてその道で成功し、過去の成功体験に依拠して物事を考える人が多い。成功体験のある人でも柔軟性があり、世の中は常ならず、いつもダイナミックに動いているもの、とわかっている人もいて、こういう人は、ともに時間をすごして面白く意義がある。ぼくは若い人には、いつも「それは面白い」「チャレンジしたら」というようにしている。

■否定派に凝り固まっている人とは話すだけ無駄。時間の浪費である。本日は社団法人日本放送作家協会の総会。「常務理事」という立場なので、執行部のやりかたに異論がある人の意見もいくつか頂戴した。真摯に聞きたいが、誤解、思い込み、先入観等がある人もいる。建設的な提言なら結構なのだが。物書きの集団なのだし、いろいろな意見があって当然で、なるほどという意見があれば真摯に耳を傾ける柔軟性はもっているつもりだが。

■しかし、言葉をつくしても、わからない人にはわからない。ああいえばこう、こういえばああ……で、揚げ足取りに終始する人がいて、当人はそのことに気づかない。そういう人といくら話しても建設的なものは何も生まれないし、時間の無駄である。そういう人に限って、人の失敗を喜ぶ。自分にもそういう面がないかどうか、常に振り返って「他山の石」としたいものである。
by katorishu | 2010-02-27 00:38 | 文化一般
 2月24日(水)
■ラジオドラマ大賞の第三次審査。今年は低調という声を耳にしていたが、ぼくが読んだなかで1編だけ、読み終わった後、胸に暖かなものがじわっとくる作品があって救われた。時代を反映して、応募作には暗い作品が多い。自殺、鬱、破綻等々。陰々滅々では救われない。フィクションでしかも、新しく世に出ようとする「新人」なのだから、時代の閉塞感をつきやぶるパワフルな作品が欲しい、と思ったことだった。最終審査に8編を選出した。

■ラジオを聞く人が減っていて、民放ラジオ局は広告がはいらず四苦八苦であるという。ラジオというメディアにはまだまだ可能性が残っているし、多くの人に聴いてほしいものだ。アメリカではラジオを聞く人は比較的インテリに多く、たとえば新しく大統領が選ばれると、まずラジオ演説を行い、それが一種の所信表明演説となり、ニュースにもなる。

■日本ではカーラジオでラジオを聞く人が多いと思えるが、車を運転しながらの聴取では、細切れ聴取になり、聞き応えのあるものは敬遠される。今のラジオ聴取者が二倍、三倍に増えれば、日本文化の有り様も変わってくるのだが。

■喉がいたく、気分がすぐれない。見たい映画がいくつもあるのだが、執筆の締め切りその他諸々で時間がとれない。あくせくしているうち、知らぬ間に年をとり、持ち時間が消えていくのだろう。若くして死んだ友人等が夢の中にでてきた。夢は不思議である。過日はどういうワケかわからないが、タレントの香取慎吾と大竹まことがでてきて、親しく話し合った。場所は香取慎吾の棲む高層マンション近くのバスストップ。話しているうち、いつのまにか大竹まことが渡辺いっけいに変わっていた。

■香取慎吾には会ったことはないが、このタレントがテレビに出始めたころ、「香取さんの息子さんですか」と何人かに聞かれた。香取という苗字が比較的珍しいからなのか、目が大きいところは似ているかもしれないが、他は似ていないと思うのだが。大竹まことさんとは何度か歓談したし、インタビューもしている。根はシャイで、気遣いの人。話題豊富で話していて楽しいし、元気がでる。彼の弟さんが経営しているイタリア料理店にも何度かいった。渡辺いっけい氏とは会ったこともないのに、なぜ突如出現したのか。

■そういえば、彼の所属している事務所の社長には何度か会ったことがある。夢とはなんなのか。なぜ夢を見るのか。夢と現実とはどのように関連しているのか。不思議な現象である。振り返ってみると、怖い夢ばかり見ることが多いが、ここ数日はほのぼのとした夢を見る。

■ちなみに夢の中では、香取慎吾の高級マンションのすぐ下に拙宅があるのだが、そこへ行くのに堂々巡りをして結局行き着くかない。迷っているうち目がさめた。枕元には「新選組血風録」(司馬遼太郎)の文庫本があった。仕事の必要があって読んでいたものだ。確か香取慎吾は大河ドラマの「新選組」で近藤勇をやったはず。それで突如、出現したのかどうか。よくわからない。
by katorishu | 2010-02-24 22:09 | 文化一般
 大人の童話 メロドラマ その19 最終回
 駒沢大学駅でおり、階段をあがって玉川通りに出ると、数メートル前を拓郎が歩いていた。前屈みの姿勢で、まるで初老の男のように力なく見えた。こういう男にかつて強く惚れたことがあるのである。そんな自分が、いまいましい。悔しくもあり、情けなくもある。
 あのころは、まだ若かったし今よりずっと見栄えがしたので近づいてくる男は何人もいた。プロポーズもされた。そんな中で、迷いに迷った上、都会育ちながらもっとも野暮ったい感じの拓郎を選んでしまった。選ぶうえで「ある事情」があったのだが、拓郎に話せることではない。
 ただ、あのときの選択が誤りであったとは思いたくなかった。誤りだとすると、これまでの人生が敗北の累積になり、打ちのめされて一歩前にでることもできなくなる。
 
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当初は小さな行き違いであったものが長い時間のなかで拡大され、すでに修復のしようもなくなってきている。それだけは認めるしかなかった。
 手に先ほど理恵の頬を張ったときの、はりつめた感触が残っていた。この感触をストレートに拓郎にぶつけてしまおうか。とぼとぼ歩く拓郎本人はまだ知らないようだが、すでに理恵に用無しとして捨てられているのである。あわれなヤツ。ケーキ屋の前で追いついた。並んで二〇メートルほど歩いたが、拓郎は気づかなかった。
 このぼんくら。
 卑怯者。
 間抜け。
 児童文学者としてはふさわしくない罵りの言葉が体の中で渦巻いた。
「コラ」
 こらえきれなくなって、亜矢が言葉を放った。
「おう。どこへいったんだ?」
 たった今、あなたの愛人に会ってきたのよ、といってやりたかった。出雲雅也とのこともみんなお見通しなんだからね。
 お前は哀れなピエロ。
 若い女にいれこんで弊履のように捨てられたんだ。
 そんな言葉が喉元まで出かかったが、抑えた。もし一言でも口に出したら最後、言葉が言葉を誘発し、すべてが粉々に砕け飛ぶような大爆発に至ってしまいそうな気がした。
 妻としての地位は失ってもいいが、二人の子供の母親としての位置を失うことになる。子供二人をひきとって、一からやり直すこともできないこともないが、自信はない。
 惚けはじめた作治のこともある。拓郎の行為は許せないとしても、作治の世話は別である。少なくとも、一七年ほど一緒に一つ屋根の下でともに暮らしてきたのである。
「こんばんは」
 という声が響いた。振り向くと、駒沢ハウスの住人の銀色の髪をした綾辻夫人が桔梗の花柄の着物姿で立っていた。駒沢病院の前あたりだった。隣には元都庁の役人であったという夫の綾辻康平が立っていて、亜矢と拓郎に軽く会釈をした。ループタイをした姿勢からは、往年のダンディぶりが想像できた。
「お出かけですか」
 思わず、お愛想の言葉が口元をついてしまう。
「はい。三軒茶屋のパブリックシアターで能狂言を拝見しようと」
 白髪の綾辻夫人は上品な声を響かせた。
「それは、楽しそうですね」
 亜矢は儀礼的に言葉を返した。
「仲がおよろしいんですのね」
 綾辻夫人は亜矢と拓郎を交互に見ていった。
「いえ、そんな」
 亜矢は狼狽した。ちらっと拓郎を見ると、拓郎は苦笑いを浮かべていた。笑いの底に流れるどす黒いものを亜矢は想像してしまう。人間は表面柔和に装っていても、心の奥底では何を考えているかわかったものではない。
「それじゃ、失礼いたします」
 丁寧に頭をさげ、綾辻夫人は夫を促すように歩き出した。
 夫婦で仲良く、能狂言の舞台を観劇か。拓郎は古典芸能などほとんど興味をもっていないし、あんな老後は、私たちにはもう永遠にやってこないだろう。老後どころか、拓郎との関係は今年いっぱい、いや今月いっぱいもつかどうか。

 駒沢公園の表門を左手に見ながら、駒沢ハウスの前まで、亜矢と拓郎は無言で歩いた。門の前で拓郎は立ち止まり、
「運動不足だな。犬でも飼うか」
 そういって、大きく伸びをした。バーカ。尻を思い切り蹴飛ばしてやりたい衝動がわいた。不意に拓郎が立ち止まった。なぜか夜空を見て、
「明日、晴れるかなア」
 といった。このヒト、もしかしてすでに理恵から別れ話を宣告されたのではないかと亜矢は思った。
 目の前に瀟洒でモダンなデザイナーズ・ブランドの建物が見えてきた。建築雑誌に写真入りで紹介された建物だが、なにやら薄っぺらな映画のセットのように見えてきた。
 拓郎が中庭にはいっていって、七分咲きの桜の前で立ち止まった。亜矢もつられてはいっていった。ファミリー用の部屋に入居している影佐家の次郎と有佳の姿が、カーテン越しにシルエットとなって垣間見えた。一緒に住む有佳は、ときどきテレビなどに出ている女優である。有佳のシルエットがすっと影佐のシルエットに近寄りひとつになった……。

 拓郎は桜の木の傍らにあった木刀を手にとり、素振りの真似をした。以前、運動不足を補うのだといって、木刀を買ってきてときどき思い出したように素振りをしているのだった。
 拓郎は小さく気合いをいれながら、木刀をヒュッヒュッと風を切って振るった。闇の向こうに、誰を見ているのだろう。中庭の庭園灯に浮かぶ顔には憎悪がこもっているようでもあった。
 拓郎の木刀が今度は亜矢のほうに向いた。亜矢が身構えると、拓郎は大上段に構えて、鋭く振り下ろす。そうして一歩こちらに踏み込む姿勢だ。思わず亜矢は目を閉じた。昔、小田原の実家の剣道場で、五段の段位をもつ父から真剣による居合い抜きの手ほどきをうけたことが、脳裏をよぎった。想像の中で亜矢は父が使っていた居合い用の小刀を腰に、拓郎と相対した。
 拓郎の手にしていた木刀は、月光をあびて冴えかえる真剣に変わっていた。青眼に構え、にじりよってくる。触れあいそうな近さになったとき、亜矢は父に教わった要領で腰をためて小刀を抜きざま、相手の胸から肩に鋭く突き上げた。手応えがあった。数秒後、拓郎の一七〇センチの体はいったんのけぞり、それからゆっくりと丸太が倒れるように崩折れた……。
 目をあけた。拓郎が背を丸め膝を屈している。蝦蟇の夫婦をみつけて、手をさしのべているのだが、崩折れる寸前の姿に見えた。
「二〇年か」
 と亜矢は拓郎と蝦蟇の夫婦を見比べながら思った。長いようでもあり、短いようでもある。喜びも怒りも哀しみも楽しさもすべてひっくるめて、殿村家という御輿を一緒に汗を流してかついできた。近所でも評判の「仲のよい」相棒であったが、とうとうこういう地点にまできてしまった。
 桜の下にいる相棒を、現実に斬って捨てるべきか、どうか。
 自分が今、人生の重大な岐路に立っている、と亜矢はひりひりする気持ちの底で思った。
                      了

by katorishu | 2010-02-23 22:49 | 連載小説
 2月23日(火)
■09年度、ネット広告費が新聞広告費を上回ったという。善し悪しは別にして、これが時代の流れである。ネットつまりインターネットが、ボーダレス化時代の主流となっていくに間違いない。ただ、まだこのメディア、できてからあまり時間がたっていないし、人でいえば「幼稚園」程度である。これから試行錯誤を積み重ねながら、向上していくのか、あるいは人の精神の劣化に貢献するものなのか。人類の未来がこのメディアの運用方法にかかっているといっても過言ではない。

■地方でミュージカル公演をつづけてきた「ふるさときゃらばん」が破綻したという。国交省の税金無駄遣いの一例としてマスコミにたたかれたことが、多分破綻の大きな原因だろう。億単位のお金が国交省からはいっていたという。正しい使い方、地方文化の本当の意味の向上に使われていれば税金を投入しても問題はないと思うのだが。果たして内情はどうであったのか。

■新聞に週刊朝日の広告が載っているが、その特集に「1年後日本経済は破綻する」と大きな文字が躍っている。これから外にでるので買って読んでみよう。破綻はハイパーインフレとう大津波とともにやってくるに違いない。素人考えだが、以前からいずれハイパーインフレがやってき、国民生活は破綻し、日本の「アルゼンチン化」が進むと思っていたが。

■この責任を民主党政権にのみ帰するのは気の毒である。過去20年ほどの自民党政権がつくってきた膨大な財政赤字がもたらすものであるのだから。旧大蔵官僚をふくめ、「経済失政」をつくったマスコミもふくめた指導層は、結局なんの責任もとらず、目下「政治とカネ」の問題ばかりに焦点をあて、迫り来る国家経済の大破綻への効果的な対処を真剣に考えていないようだ。日本は、中国清朝末期、ソ連邦末期とよく似てきたな、とあらためて思う。
by katorishu | 2010-02-23 09:57 | 新聞・出版
 2月22日(月)
■昨日は根を詰めて10数時間、パソコンに向かって執筆作業。本日朝一で送る原稿のためだが、久しぶりに対象に入り込むことができた。「面白かった。ありがとうございます」と電話で受取手の反応。
ところで、ぼくは自分の健康の具合について、手の甲と手の爪で判断することが多い。比較的よく睡眠がとれ、内臓の調子が良いときは手の甲に艶があり、爪も光っている。反対のときは露骨に手の甲が荒れて来る。顔色にも当然、体調が出るのだが、ぼくの場合、基本的に、睡眠がよくとれたか、とれないかによって決まる。日によって声の調子まで極端に違うし、脳の働き具合も別人のように違う。従って、接する相手によって、「この人、ちょっと回転が鈍いな」という人と「頭脳やや明晰」と思う人がいるのではないか、と思ったりする。本日は「頭脳やや明晰」の日であるが、あいにく誰とも会う予定はなく、近々締め切りの原稿書きをする予定。

■本日たまたまテレビで聖路加病院院長の日野原重明氏を見た。97歳で、あの若々しさ、前向きかつ精力的な生き方には感動する。食事も簡素そのもので、エレベーターなどもあまりつかわず、とにかく歩く。労をいとわないのである。氏が20代のころ結核で1年ほど病床にあったということを、本日初めて知った。若いころ病気をしたことで、無理をしない生き方を学んだのかもしれない。

■嫌なこと,不快なことも、天があたえてくれた試練として受け止め、それを乗り越えていくことに、喜びを感じる。そういう生き方をしてきたのだろう。人間、日野原先生のおうでありたいもの。とにかく、この方のでているテレビ番組を見ると、勇気を与えられる。一方、テレビのゴールデンタイムにしばしば顔をだし、品性のないしゃべりを展開している「ゲイニン」や「カイセツシャ」、アホ面の女性タレントを見ていると、気分が盛り下がる。そのため、最近はテレビそのものをあまり見なくなってしまったが。
 修練の結果獲得した芸をもつ「芸人」と「ゲーニン」を、わけて使っていることは、いうまでもない。職人技をもつ「芸人」は一家言もあり、時間を共有して損をすることはないのだが。
by katorishu | 2010-02-22 14:14 | 文化一般
大人の童話 メロドラマ その18
 帰宅したとき、まだ胸の動悸がおさまらなかった。一郎が珍しく弾んだ声で近寄ってきた。
「ママ、喜べ。サッカーの試合で、ぼく二回もゴールしたんだ。城南中学に逆転勝利なんだぜ。奇跡がおこったんだ」
 亜矢は一郎の喜ぶ様子を、遠い景色を見るような気分で見ていた。
 恵美が帰ってきた。亜矢の顔を見るなり、開口一番、
「ママ、出来たよ、英語の検定。完璧だね」
 弾んだ声でいった。
「そう」
「どしたのよ、ママ、元気ないなあ。気分よかったから、ママの大好きな木村屋のあんパン買ってきちゃった」
 恵美は嬉々として包みをあけた。中央のヘソの部分に桜の花をいれたものだった。恵美は珍しく、
「お茶をいれるね」
 といってキッチンにいき、やかんをレンジにのせた。相変わらずスーツにネクタイをしめた作治は、テレビの情報バラエティ番組を見ながら楽しそうに声をたてて笑っていた。 亜矢は作治の背中を注視した。雅也が話していた『アレにまとわりつかないでくれ』という言葉が苦さをともなって蘇った。本当に作治がそんなことをいったのだろうか。確かめたい気持ちと思ったとき、作治の唇が震えた。b0028235_04064.jpg 
「美代さん、わし、まだ朝飯食ってないんだ」
 亜矢の体からすべての力が抜けていくようで、目眩さえ覚えた。
 すでに外は黄昏れていた。池の端の庭園灯が木々を照らし、昼間とはまたちがった風雅な風景を描きはじめた。池にすむ蝦蟇がガーガーと牛の鳴き声のような声を発した。
 中庭に面した駒沢ハウスのリビング一杯に、いつになく明るく華やいだものが漂っている。そこだけ切り取って見たら、それこそテレビのコマーシャルに出てくる、幸せを絵に描いたような「理想の一家」であるのかもしれない。
 見守っていて、殿村亜矢は自分が果たして幸福なのか不幸なのか、わからなくなっていた。ソファの横のサイドテーブルにある電話が鳴った。受話器をとると、一拍あって、
「もしもし」
 女の声だった。
「わたし、川上理恵といいますが」
 亜矢の心臓の鼓動が早くなった。受話器をもちかえ構える姿勢になった。
「失礼ですが、奥様でしょうか」
「はい……」
「じつは、ご主人のことで、折り入って奥様にお話したいことがあるのですが。今、三軒茶屋まできているんです」

 東急世田谷線の三軒茶屋駅の改札口の前が細長い広場になっていて、真向かいのビルの一階に珈琲店コロラドがある。明るく、場所がいいので、いつも満席に近い状態である。
 亜矢がはいっていくと、左手の窓際の椅子に坐っていた痩せぎすの髪の長い女が手をあげた。白黒のチェック柄のセーターを着ていた。
 亜矢はゆっくりと近づいていった。落ち着かなければと思うのだが、喉がかわき、頬もひきつっているようだ。真向かいに坐って、まっすぐに相手を見据えた。目が少々横につり気味で、キツネを連想してしまった。
 川上理恵は故意につくったような微笑を浮かべた。過日、ベランダで目にしたときは、のっぺらぼうに見えたが、化粧をするとなかなか見栄えがし目に光りがあった。こういう女を前にすると、拓郎の雄としての能力が復活するのか。
 コーヒーを前にして二人はしばらくのあいだ無言だった。沈黙に耐えきれず亜矢がいった。
「あなたは……うちの亭主と……そうなんでしょ」
 どう答えるか、注視していると、理恵は、
「ごめんなさい」
 といって頭をさげた。
「あなたねエ、ごめんなさいで、すむと思ってるんですか」
 ヒステリックになるのを抑えなくてはいけないと思うのだが、震え声になってしまう。
「いったい、あなた、ど、どんな」 
 テクニックを仕掛けたの、といいかけて、飲み込んだ。
「ごめんなさい」
 理恵は再びいって頭をさげ、案外落ち着いた声でつけくわえた。
「気のすむようにしてください。なぐってくださってもいいです。わたしは、覚悟していますから」
 開き直るつもりなのか、このオンナ。亜矢の指に力がはいった。しかし、まさか多くのお客がいるなか、なぐるわけにはいかない。この女のどこに拓郎は惹かれたのだろうか。若さにであろうか。エキセントリックなところにであろうか。川上理恵は痩せぎすで胸のふくらみも小さく、それほどセクシャルとは思えず、ややボーイッシュな印象である。考えてみれば、亜矢自身、子供を産む前は痩せぎすで、どちらかといえばボーイッシュなところがあり、このオンナに似ていなくもない。それも亜矢にはいまいましいことだった。

 それより、理恵がなぜわざわざ連絡をしてきたかである。拓郎の意向を受けてやってきたことも考えられ、亜矢は警戒の姿勢を崩せなかった。
「断っておきますけど、わたし、もう別れます」
 理恵の赤く塗った唇が震えた。
「別れるって……」
「わたし、ほかに好きな人がいるんです。でも、そのこと、拓郎さんに、いいだしにくくって。どうやって別れ話をもちだそうかと、ずっと悩んでました」
「だから、妻であるわたしに、いおうってことなの」
「はい。そのほうが角がたたなくていいかなって」
 もう充分すぎるほど角がたっているわよ。
 角がたって、傷んだ傷口に塩をぐりぐりすりこまれているのよ。
 あなたも相当非常識な女。沸きたつ気持ちを敢えて強く抑えこみ、亜矢は平静を装っていった。
「あなたが、拓郎に直接いうべきことでしょうが。なにを考えてるんですか」
「こんなこという立場にないこと、充分わかっていますけど、敢えていわせてください。拓郎さん、奥様のところが一番あっています。黙って、拓郎さんを受け入れてやってください。お願いします」
 理恵はさらに深く頭をさげた。
 あなた、なにを勘違いしているの。
 のしをつけて、差し上げたいのは、こっちのほうよ。
「拓郎さん、二言目には、いうんですよ。カミさんが作った料理がどうのこうのとか。カミさん、結構、ねばり強くて努力家でとか、カミさん、カミさんて。わたし、いつも、あてられてました。拓郎さんに今、一番必要なのは、奥様です。奥様しかいません」
 わたしは拓郎の母じゃあないのよ。拓郎が手にあまって邪魔になったから、お返ししますって、そんな理屈が通ると思っているの?
 胸の奥で言葉が激しく渦巻いていた。素直に口元から罵倒の言葉となって発射してしまったほうがいいのだろうが、なぜか抑制がきいてしまう。
「わたし、父がいないもので、どうしても父性的なものにあこがれるんです。拓郎さんには、デザインの仕事にも、いろいろアドバイスをいただいて、感謝しています。わたし、拓郎さんにあらためてメールします」
「結構よ。メールも手紙も電話もノー」
 強い調子で亜矢はいった。
「わかりました。そうします。失礼しました」
 理恵は長い髪をかきあげながら立ち上がると、くるりと背を向け、出口のほうに歩いていった。
 見守るうち亜矢の中で何かが沸きたち、どう処理をしてよいかわからない。気がつくと、理恵のあとを追っていた。キャロットタワー裏の人けのすくない駐車場の前あたりで追いついた。
「なんですか」
 理恵が気づいて立ち止まった。亜矢より首ひとつ背が高く、当然、肌も艶やかだ。
「やっぱり、わたし、気がすまないので、ぶたして」
 いいざま亜矢は左手で思い切り理恵の頬を張った。パシッという乾いた音で、街路樹の上にいた黒く艶のあるカラスが飛び立った。理恵がなにかいったようだが、亜矢の耳には意味をもった言葉として届かなかった。
 気がすむどころか、いっそう自己嫌悪が募り、生きているのが、ひたすら恥ずかしい気がした。これに耐えなければと思った。耐えて強くならなければ生きていけない。自分自身にそう言い聞かせながら、手で頬をおさえている理恵に背を向け、駅のほうに歩き出した。

by katorishu | 2010-02-22 00:05 | 連載小説
 大人の童話 メロドラマ その17

「どういうことなんですか。ちゃんと説明して」
 エスプレッソ・コーヒーを頼むと、亜矢は鋭く詰問する調子でいった。雅也は拓郎と偶然出会ったようなことを、くどくど弁解するようにいっていた。しかし、亜矢が、
「出雲くんらしくないじゃない。あなた、いやしくもスポーツマンでしょうが」
 そういって迫ると、雅也はテーブルに両手をつき頭をさげた。
「申し訳ない。じつは、ぼく、ご主人から頼まれたんです」
「頼まれた……?」
「話せば長くなるんですが」
 と前置きして雅也は悪びれずに、次のような話をした。
「二ヶ月前、あるパーティで、ご主人と知り合ったんです。ぼくはなかなか再就職が決まらなくて、暗い気分になっていました。二次会でご主人と隣り合わせに座ったとき、亜矢さんのご主人であるとわかった。懐かしい気がして、高校時代に横浜にいった話とかをした。すると、ご主人が今でも妻はあなたのことを覚えているだろうかって聞くんです。二年前、高校の同窓会で、亜矢さんがぼくのことをいろいろ聞いていたようだって話したところ、ご主人は、ぼくの顔を五分ほどじっと見つめていた。それからこういったんです。できればぼくの妻の相手になってやってくれないかって」
 まるで、わからない。b0028235_061427.jpg
 そういうことを頼む夫がわからないし、引き受ける雅也がわからない。
「ぼくは、断りましたよ。でも、ご主人は翌日、電話をかけてきて、駒沢ハウスにちょうど空き室ができたし、そこに入ってくれればいいというんです。最初冗談かと思ったのですが、ご主人は真顔でした」
 うそ寒いものが亜矢の胸元を走り抜け、肌に鳥肌がたつようだ。すべては拓郎の仕組んだことで、わたしはそこで猿回しの猿のように踊らされていたのか。戦慄にも似た感情が背筋をはしりぬけた。
 拓郎という男が別に人格者でもモラリストでもなく、大部分の男と同じように適度にいい加減で、適度に真面目な人間であることはわかっている。しかし、ここまで愚かしくも、いい加減で、モラルを欠いた人とは思わなかった。
「結局、わたしは拓郎と出雲くんにオモチャにされたってことね」
「ちがう。ぼくは、ご主人が忙しくて、亜矢さんの相手ができないから、亜矢さんが寂しがっているのではないかと解釈してました。住む場所を探しているときだったので、願ってもないことだと」
 辻褄会わせ、ないしは、弁解ではないか。疑惑はまだあった。
「さっき、拓郎が紙に包んだもの渡したでしょう。お金じゃないの」
「はい」
「やっぱり、お金で取り引きしたのね」
「いえ」
 と雅也はいって、一拍おいてからこういった。
「じつは……ぼくがご主人にお金を貸してたんです」
 なんですって。
 新たな混乱が亜矢を襲い、体が震え吐き気さえ覚える。
 手で口元をおさえ呼吸を整えてから怒りの言葉を発しようとした。が、口元をついたのは、
「いくら」
 という言葉だった。咎めるつもりが、怯える調子になっていた。
「五〇〇万ですけど」
「そんな大金……」
 深い溜息がでた。
「とりあえず二〇〇万返済してもらいました。ご主人を責めないでください。会社をやっていると、急な資金繰りが必要になってくるんです。断っておきますが、これはぼくのほうから言い出したことです」
「わからない。どうして拓郎がわたしに話してくれないのか、わからない」
「男の一分というものじゃないでしょうか。夫として妻には弱みを見せたくない場合もあるのだと思います」
「ずいぶん古風なことをいうのね」
「すみません。でも、ご主人、ヤミ金融みたいなところで借りるしかないといっていたもので、それだったら三ヶ月で絶対に返済するという条件で貸しました」
「なんの担保もとらずに?」
「はい、ご主人の人間を信用したんです」
「随分、鷹揚で、お金持ちなのね」
 亜矢は強い皮肉をこめていった。
「開業資金にと貯めていたお金です」
「どうして、そんな大事なお金を貸したの?それが本当なら、あなたはバカよ」
 貸すほうも貸すほうだが、雅也から借りるほうも借りるほうである。妻であるわたしに黙っていたということは、拓郎の中に疚しい気分があったということだろう。
「バカよ」
 という言葉が亜矢の口から再びもれた。雅也ばかりでなく、拓郎にも向けた言葉であった。
「確かにバカかもしれない。もちろん、亜矢さんのご主人じゃなかったら、びた一文も貸さない。でも、拓郎さんのジャパン企画、亜矢さんが思っている以上に経営が悪いみたいです。ここだけの話にして欲しいんだけど、拓郎さんが今、かかわっている編集プロダクション、じつはぼくの大学時代の友人がからんでいるんだ」
「……」
「ジョイント・ビジネスなんで、拓郎さんの会社がつぶれると相手も困る」
「それじゃ、拓郎が出雲くんに仕事を紹介してもらったってこと?」
「早くいってしまえば……」
 亜矢は思わず手で顔をおおった。泣きたくなるのをこらえ、
「それはいつのこと?正確な日をおっしゃって?」
 もし、横浜にいったあの日のあとであったら、許せないと亜矢は思った。
「今月の一〇日です」
 と雅也はいった。あの日の二日前であった。しかし、それで安堵できるものではない。胸のあたりに無数の虫がはいまわっているような不快な気分がわいてくる。
「人をバカにするのも、いい加減にしてよ」
 亜矢はそこまでいうのが精一杯だった。さらに声を発しようとしたのだが、体が小刻みに震え、呼気がつまり、声にならなかった。結局、あふれ出たのは涙の塊だった。雅也が慰めるようにいった。
「じつは、三年ほど前、ぼくは田園都市線の電車のなかで亜矢さんを見かけた」
「……」
「亜矢さんだとわかったとき、たまらない気持ちになった……懐かしいというより、なんだか大事な忘れ物をして生きてきてしまったような気がしたんです。カミサンが一緒だったもので、ただ駒沢大学の駅で降りる亜矢さんの後ろ姿を見送るだけだった」
「……」
「高校のとき、横浜にいったあとだけど、ぼく、小田原の亜矢さんの家に何度かいっている。でも、お父さんに、娘にまとわりつかないでくれってしかられて。それでも諦めきれなくて、何度か手紙も出しました」
「受け取っていない、手紙なんてわ」
「多分、お父さんのとこで止められてしまったんだと思う」
 一層強い悲しみが体の芯からわいてくる。
「亜矢さんとは、ぼく、そういう運命の星の下にあるんだと思って忘れることにしたんだ。でも、結婚して子供ができてからも、忘れられない……ヘンなヤツと思われるかもしれませんけど、ほんとうです」
「……」
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「夢の中にも亜矢さんが何度も出てきました。じつはつい最近も出てきた……占いで観てもらったところ、亜矢さんとは来世で結ばれるけど、努力次第で現世でもなんとかなるって。で、高校の同窓会名簿で調べて、亜矢さんの家までいきました」
「……」
「亜矢さんが今どんな生活をしているのか、知りたくて。もし亜矢さんが不幸であったら、僭越だけど、ぼくが手をさしのべることも出来るのではないかと。ようやく亜矢さんの家を探し当てました。入り口で迷っていたとき、ステッキをもった白髪のおじいさんが出てきて、亜矢さんの小田原のお父さんと同じことをいったのです」
「同じこと……」
「アレにまとわりつかないでくれって」
「……」
「アレって、亜矢さんのことだと直感しました。おじいさんが目で促すように中庭のほうを見た……そこに亜矢さんがいて、鳩にエサをやっていた……」
「……」
「信じてくれないかもしれないが、事実です。あれはご主人のお父さんだったんだね。ぼくは黙って立ち去った。お父さんは認知症のようだけど、ある感覚は異常に鋭くなっているんじゃないかな」
 雅也の話は出来すぎている。辻褄あわせの作り話だ。
 亜矢は雅也の言葉の裏にあるものを読み取ろうと目を凝らした。雅也は目を合わせず淡々と続けた。
「それから間もなくご主人と偶然出会って、カミサンの相手にっていわれたとき、これはカミサマが引き合わせてくれたんだと思った」
「どうして、今まで黙っていたの」
「このあいだ亜矢さんと横浜にいったとき、本当のことを話してしまおうと何度思ったかしれない。すべてを捨てて亜矢さんと一緒にって」
「出雲くん、いいのよ、わたしを慰めるための、お伽話は結構」
「お伽話じゃない。事実だ。ぼくは横浜の夜を決して忘れない。ぼくの生涯の思い出として大事にしていく」
「いまさら空々しいこといわないでちょうだい。あなた、奥さんと離婚してるというのも、嘘なのね?」
「いや、それは本当です。ぼくの負債が彼女にかぶるのをさけたいと思って、離婚の手続きをしたんだ」
「そう、愛妻家なのね」
 皮肉をこめた調子でいい、さらに刃を突きつける気分で畳みかけるようにいった。
「あなた、奥さんを捨てられますか」
「……」
「子供を捨てられますか」
 雅也は黙りこんでしまった。やがて小声でこういった。
「亜矢さんは、どうなのかな。ご主人や子供や、あのハウスを捨てられますか」
「捨てられるわよ。真実の愛のためなら、旦那でも子供でも、家でもなんでも、かなぐり捨てる。それが愛ってものよ」
 啖呵をはくようにいって亜矢は席を立った。

by katorishu | 2010-02-21 00:13 | 連載小説
 2月19日(金)
■冬期オリンピックで高橋大輔が銅メダルを獲得した。ひさびさに明るいニュースである。冬期は夏期ほどオリンピックに興味はもてないが、それでもテレビニュースで見る高橋の演技は素晴らしかった。最初に手をついてしまうミスをおかしたが、それで滅入ることなく、ラストに向けて盛り上げていく気力に拍手を送りたい。

■今の若者は総じて無気力で意欲、向上心に欠けるといわれる。そういう人はいつの時代にもいた。一方で、すこしでも自分を向上させようと日々、努力を積み重ねている若者も多いにちがいない。スポーツは適当にちゃらんぽらんにやっているより、全力で立ち向かい、自己の能力に限界に挑戦したほうが、面白い。人生一般も同じ事で、自己の能力の限界に挑戦するくらいの気概をもって立ち向かったほうが面白いはず。高橋選手の活躍をテレビで見ていて思ったことだった。

■長友啓典氏など3人のグラフィック・デザイナー3人の「古稀展示会」が銀座であるので、見にいった。カミサンの仕事面での「関係者」である。見覚えのあるポスター、チラシなど楽しい作品がならんでいた。その足で新橋から虎ノ門と歩き、例によってコーヒー店で4時間ほど仕事。1日、最低8時間は仕事をしないといけないと思うのだが。

■加齢の波には抗しがたく、以前であったら10数時間ぶっつづけて仕事をし、気がつくと朝日がさしていた――といったこともよくあったのだが。粘りがない。特に目が疲れ、文字が二重に見えたりするので、休み休みの作業になる。年はとりたくないものである。
by katorishu | 2010-02-20 02:57 | 文化一般