9割が中流意識の国はどこに消えた
2008年 12月 14日
■家から歩いていける品川シーサイドのジャスコと大井町のイトーヨーカ堂に足を運んだ。「年末商戦」たけなわの時期のはずだが、例年にくらべ客の数が少ないという気がする。どこも円高差益還元セールを行っているようだ。しかし、とくに買いたいものもない。世の中、特に先進国ではものが余りすぎている。大量生産、大量消費のシステムも見直すときにきているようだ。
■依然として日本では、アメリカ帰りのエコノミストが、市場経済原理主義こそ「正しい」と主張しているようだ。社会主義、共産主義の失敗で、市場経済原理主義こそ正しいシステムということになっているのだが、果たしてそうなのか。経済には門外漢なので、うまくいえないが、多くの人を幸福にする他のシステムがないものかどうか。バブル崩壊前あたりまで、日本は世界で唯一「成功した社会主義」などといわれたものだ。
■おかげで、国民の9割までが中流意識をもっていたのだが。そんな国など世界中でひとつもなかった。古今東西、空前絶後ではないのか。もしかして、それこそ「ユートピア」であったのかもしれない。この体験は無駄にしてはいけないのだと思う。再び、9割もの国民が「中流意識」をもつ国に――これこそ日本の目指すべきことで、世界に誇ってよいものである。物質的にはもう少し貧しくてもいい。幸福感をいかに味わえるか。これが大事である。
■「幸福感」など数字には置き換えることはできないが、そんな目に見えない尺度を、どうやって再び日本社会に取り戻させるか。さまざまなシステムを改めなければいけないだろうが、そういうことにこそ、もっと税金を投入すべきである。政財官の指導層の心の片隅に、そんな考えがすこしでもあれば、世の中かわるのだが。「既得権益」をまもるためには全知全能を傾けるのに、身を捨てて社会のために――ということになると、及び腰になってしまう。
敗戦直後のように「がらがらぽん」をして、ゼロから出直すべき時がきている、と思う。