アメリカの医療費の異常な高さ
2009年 05月 19日
■脚本アーカイブズに元日活の鍛冶昇監督がみえるとのことで、でかけた。鍛冶監督のかかわった映画、テレビ映画の脚本を寄贈したいただいた件で、脚本アーカイブズとはどんなところか見て見たいとのことで、来訪された。
■鍛冶さんとお会いするのは20年ぶりではないのか。共通の知り合いなどの消息、日本映画界の現状などについて、7階のレストランでしばし話し合った。鍛冶さんは日活に監督第一期として入社した人で同期には吉永小百合のデビュー作である「キュープラの町」などを浦山桐郎監督などがいる。老後をカリフォルニアでおくるため渡米し、それなりに快適な生活を送っていたのだが、高い医療費に辟易して、日本にまいもどったということだ。
■ある年など夫婦で手術をうけたが、その医療費が二人で1500万円ほどになったとか。数年前、軽い脳梗塞にかかったが、アメリカで治療すると膨大な医療費をとられる恐れがあり、思い切って日本にもどったとのこと。
■マイケル・ムーア監督が描いた映画「シッコ」の世界が現実であり、健康であるうちは快適だが、いったん病気になると極めて住みにくい社会であると、鍛冶さんは述懐されていた。アメリカでは富裕層と底辺層には国家の手厚い保護があるのだが、中間層が厳しいとのこと。中間層はちょっとした不動産や株などをもっているので、すってんてんになって底辺層におちいらないと公的な援助が得られない。一方、富裕層は株そのほかで、さまざまな優遇措置があり、そもそも「異常」ともいえるくらい高額の所得があるので、病気などになっても、いっこうに困らない。
■竹中・小泉改革では、日本をアメリカ式システムに「改革」しようとしたのだが、医療ひとつとっても、そんなアメリカ式にしてはいけない。世論の大半は竹中・小泉改革に批判的になっているようで、悪しきアメリカの真似は、ぎりぎりのところで回避されたようだ。
■しかし、文化面ではアメリカ文化が日本を席巻しつつある。本日夕方、渋谷にいき、トイレにはいるため道玄坂にある109ビルにはいったのだが、ここは「どこの世界か」と思われるくらい「異様な空間」だった。一時代前であったら「娼婦の群れ」といった雰囲気の若い女性が、彼女たちむきのへんてこりんなファッションの衣料品店にあつまっている。音楽といい、彼女たちのハデハデの化粧といい、ぼくなどにはなじめない。
■そのあと、疲れていたので、気休めに映画「バーン・アフター・リーディング」をみた。名作ノーカントリーのコーエン兄弟監督作品なので、期待したのだが、アメリカ人の劣化、愚かさを浮き彫りにするのはいいが、なじめない展開と内容だった。