アニメ業界の惨状
2009年 07月 04日
■数少ない日本の文化・映像関連の輸出品として世界市場でたたかってきたアニメ産業が、かなり危険な状態に近づきつつあるようだ。このところ、アニメ制作会社の受注が減り、制作費も激減しているようだ。たとえば30分のテレビ・アニメ1話を約1800万円で請け負っていたのが、今は1300万円程度であるという。
■絵の緻密さを求められる作業が増えているのに、人件費も減らさざるをえなくなり、たとえば20代アニメーターの平均年収は約110万円程度。離職率は8~9割らしい。賃金の安いアジア各国への「業務委託」が増え、そういうことになっている。あまりに待遇が悪いので、多くのアニメーターが居着かず、スキルをもった若手がそだたない。結果として作品の質も劣化し、売れなくなる。収入も当然へるので、制作費も削られ……とマイナスのスパイラルにすでに陥っているようだ。
■アニメーター業界にかぎらず、ソフト制作会社の多くは、似たようなマイナスのスパイラルに陥っており、いつ倒産してもおかしくない状態である。麻生総理の打ち出した漫画とアニメの「殿堂」に117億円の税金が投入されることになっているが、そんな余分な金があるなら、制作現場の窮状を救うために税金を投入してほしい、と思っている関係者は多い。
■上記の件で文化庁長官が昨日、必ずしも新しい建物を建てるのではなく、既存の施設を利用することも考えていると記者会見で語ったそうだ。そうしたほうがいい。117億もあったら、もっと有効な使い方があるはずである。
本日、下北沢で「業界関係者」の飲み会。役者、脚本家、作家、プロデューサー、演出家、音楽関係者等々、ほとんどはフリーランスの面々。みんな何か新しい試みをしようという意欲に燃えていた。今後、期待できる分野は、テレビより海外の市場も視野にいれた映画である。歴史を読むとよくわかるが、人類は異なった文化がぶつかるところに新しいものを生み出してきた。
■雑談をしているうちおもしろいアイディアを思いついた。日本とイタリアを舞台した「サクセスストーリー」で隣のプロデューサー氏に話すと、面白いにでは……とのこと。
時間があったら、たとえばフィレンツェにでも飛びたいのだが。まずは頭の中でイメージをふくらませるしかない。映像作品をつくる上で、大事なのは企画であり、脚本である。このことが今の日本ではないがしろにされている。こういうところから何か新しいものが生まれるものと、期待したい。