コラム


by katorishu
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『利己主義』ではなく『利他主義』が日本を救う

 11月9日(月)
■相変わらず余り楽しいことのない時代で、鬱の人間が増えているようだ。そういうなかで、切なく悲しいことがありながら、懸命に、ひたむきに生き、「利己主義」ではなく「利他主義」つまり他人のために懸命につくす女性を主人公にした映画企画を考えた。弱い立場にある人のために尽くすことが、結局は自分にプラスの要素として返ってくる。そんなヒロインが主人公の作品で、本日、新宿で某映画プロデューサーに会い、打合せをした。

■企画が通るかどうかわからないが、某氏が「香取さん、これはいけますよ。今の時代にぴったりの話です」といってくれたことは嬉しいことだった。「数字優先」ではなく、社会性のあるメッセージをこめた作品として提案したいとのこと。こういう時代だからこそ、「ドラマティック」な素材はいくらでも転がっている。だが、みなさん、なかなか素材を生かし切れていないようだ。自分のことは脇において、創り手が真剣でわたりあっていないからだと思う。竹光では、もはやお客はだまされない。創り手に必要なのは、これだけは社会に訴えずに死ねるかという思いの丈である。それだけの思いをこめて創れば、必ず多くの人がついてくる、という自信が今ほど必要なときはない。

■ところが、テレビも映画も企画を取捨選択する立場にある人が、どうも「守りの姿勢」になって、自ら血を流そうとしていない。軍隊でいえば部隊長がそんな調子では、敗退を余儀なくされる。他の業界をふくめて冷静に眺めると、日本はほんとうに崖っぷちにある。心ある人は本気で危惧している。本日、打合せのあと紀伊國屋書店で『ネットビジネスの終わり』(山本一郎著)を買い帰りの電車内と喫茶店で拾い読みした。日本では「物づくり」がいわれ、それこそ日本の強みであり、良い物を創っていれば必ず売れるし、経済は回復するといった意見が多いが、著者はそれは間違いだと率直に指摘する。良いものをただ創っていても売れない時代になったということである。売るためのシステム創りが必要なのだが、日本は諸外国に比べてまったくそれが出来ていないとのこと。

■世界経済のパラダイムが変わっているし、過去の「成功体験」がまったく役立たず、むしろブレーキになる時代にはいっている。そのことに日本の大企業も中小企業も気づいていないと筆者は指摘する。このままだと日本はずるずる沈んでゆき、惨めな社会になってしまう。それを救うのは、世界との競争に勝てる新しいシステムを作ることが大事ということである。まだ全部読んだわけではないが、なかなか説得力のある論を展開していて興味深い。

■価値観がかつてないほど多様化し、「みんな一緒」ということが過去のものになった現在、人は「不確実性」という事態を生きなければならない。そこで生き残るための方策や提言なども抱負で、興味深い本である。
 いずれにしても、人類はこういう地点まで到達してしまったということである。多くの人間にとって、幸せではない時代、幸せになれない時代を迎えてしまったが、「進歩」の実態とは、こういうことである。

■今や、野生動物の生き残り同様、人もサバイバルのために全知全能を傾けなければならない。一種の「戦争状態」に入ったと認識しておいたほうがいいだろう。面妖な時代に遭遇してしまったものである。しかし、こういう時代に巡り合わせたことを、悲しむのではなく、逆におもしろがってやろうという余裕がほしい。一種落語の登場人物のような身軽さで対し、いずれやってくるはずの「春」を待ちたいものだ。冬きたりなば春遠からじ。含蓄のある言葉である。
by katorishu | 2009-11-09 23:07 | 社会問題