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天才的演劇人、つかこうへい

 7月12日(月)
■本日、都内某区役所で打合せのあと、文京区内の某社で仕事の打合せ。民主大敗でこれから政治が漂流し、なにも政策が決まらないのでは……といった懸念の声をきく。ほんとうに日本は今崖っぷちにある。表面は「きれい」に見えるが、会社も組織も個人も相当疲弊していて、ちょっとした一押しでがたがたになってしまいかねない。政治の強力なリーダーシップが今こそ必要なときなのに、そこに期待できない。これから、与野党いりまじって足の引っ張り合いがつづき、見たくない光景が展開するのだろう。

■先日の井上ひさし氏の逝去につづいて、劇作家、演出家、作家のつかこうへい氏が62歳の若さでなくなった。肺がんであったという。戦後日本の劇作家として群をぬいていた二人が、ともにガンでなくなられたわけで、日本の演劇界にとって大きなマイナスである。つかこうへい氏の芝居をそう多く見たわけではないが、つか氏の劇団で育った個性的な役者は何人か知っており、いずれもその人ならではの独特の表現力をもっている。つか氏の「演劇訓練」のたまものといっていいのだろう。

■本日、NHKのニュースに風間杜夫氏と松坂慶子氏がでて追悼の言葉を話していた。いずれも映画『蒲田行進曲』に主演した役者である。日本のエンターテインメント映画として、ぼくは『蒲田行進曲』をベスト5にいれたいと思っている。それほど見事に構築され、個性あふれる魅力的な人物が躍動していた。泣かせ笑わせ、最後に圧倒的な感動でせまる。大衆エンターテインメントの骨法をふまえたうえで、辛辣な人間批評も展開し、見る者の肺腑をつく。つか氏と個人的に面識はないが、口立てで芝居をつくっていくところなど、昔の大衆演劇そのままのやり方で、しかもいわゆる大衆演劇の境地から大きく踏み出している。そこがすごい。

■風間杜夫氏には以前、2時間ほどインタビューして、彼の子役のころからつかこうへい芝居での活躍あたりまでの話をじっくり聞いた。なにかの本を書くためのインタビューであったか、7,8年前なのに記憶が薄れている。ただ、風間氏が語った数々のエピソードは胸に残っている。つか氏の『幕末純情伝』ともう1本、岸田今日子氏の主演の舞台を見て以来、つか作品の舞台を見ていない。東京北区の区営の劇場を本拠に芝居をつづけていることは知っていたが、もっと見ておけばよかった、と氏の逝去を聞いて思った。

■氏は在日二世という「マイナスの条件」をバネに大変エネルギッシュな舞台空間を口立てでつくってきた。辛辣な人間観察からくりだされる毒のある台詞の豊穣さはすごい。天才でないと出来ないことだ、と脚本家のはしくれであるぼくなど、感嘆して遠くから眺めていた。以前、つか氏は「お客が劣化しているので、芝居がつくりにくくなった」といった意味のことを新聞に書いていたが、確かにそれはいえる、と思った。が、こういう時代になると、お金を払って見にきてくれるだけで、ありがたい。つか氏は娘に遺言を残しており、そこには葬儀などいらない、自分の骨は日本と朝鮮半島の間の対馬あたりに散骨して欲しいと書いていたという。ご冥福をお祈りしたい。
by katorishu | 2010-07-12 22:54 | 映画演劇