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レオナルド・デカプリオ主演『インセプション』を見たが……

 8月1日(日)
■猛暑で心身ともに良好ではない。こういうときには映画館にいって映画を見ることにしている。昨日、隅田川の花火大会があったが、こちらにはいかず銀座まででて丸ノ内ピカデリーでハリウッド映画『インセプション』を見た。クリストファー・ハラン監督でレオナルド・デカプリオ主演、渡辺謙出演ということでテレビなどでも大々的にPRをしていた。テレビで大宣伝を繰り返す作品に上質なものはほとんどないが、これも例外ではなかった。

■人の夢の中に入り込み、潜在意識の奥深くはいって相手のアイディアを盗むことをビジネスにしている主人公の物語で、妻と子どももからんでくるのだが……。どうもわかりにくく、中身にはいっていけない。個々の映像は凝っていて、スケール感もあり、夢の階層という概念も面白いのだが、別の見方をすると、なんでもありのメチャクチャな展開で、人物に感情移入できないので、感動に至らない。

■結局、アクションを描きたかったのだなと思った。「次世代アクション・エンターテインメント」というキャッチフレーズで、たしかにアクションシーンは面白かったが、それだけという作品。巨額のお金をかけて、こんなものをつくっても、実験としてならともかく、意味が薄いなと思ったことだった。しかし、テレビなどの宣伝につられたのか、お客はそれなりにはいっている。

■まとまったストーリーの展開の面白さを味わえなくなっている人が増え、瞬間瞬間の映像の面白さしか味わえない人も増えているときく。ゲーム脳という特殊な脳が形作られているようで、そのことの端的な表れなのか。アメリカ映画には最近、この手の鬼面人をおどろかすていの映像テクニック過多の作品が多い。不景気で陰にこもった人間が多くなっているから、こういうものが流行るのか。ここには「人間」が描かれていないし、癒しにもならない。しかし、見る人がいるからつくる。本当に面白いと思って見ている人がどのくらいいるか、知りたいものだ。

■全国学力テストの結果が発表された。ここ何年かの傾向として、文章の読解力、分析力の低下、空間把握力の低下が顕著だという。たとえば中学の国語の問題で、「私たちは全国大会出場にむけて練習をしていて、三年生にとって最大の目標です」という文を、わかりやすい二つの文章にわけて記せという設問にたいし、正答率は4割ほどであった。「私たちは全国大会出場にむけて練習をしています」と「全国大会出場は三年生にとって最大の目標です」と記すべきところを、2番目の文章について、「私は三年生にとって最大の目標です」と書いた生徒が多かったとか。

■主語と述語の基本的構造を理解していないのである。今の中学生の6割が理解していないというのは、驚きである。こんな調子では、ちょっと長い文章を正しく読解できないし、誤読、誤理解が多いことだろう。読解できなければ、分析力も育たない。識者はこの傾向の根底にあるのは「ゲームのやりすぎ」と指摘している。その場、その場に瞬間的な対処はできるが、まとまった意味のつながりを読み取れない。こういう若者(中高年にも多くなっている)が増えることは、文化や社会の劣化につながる。最近のハリウッド映画を見ていると、「ゲーム脳」になっているマス(大衆)が急増しているのだな、とあらためて思う。小さいころから読書の習慣をつけることが、ゲーム脳にならないための最上の方策なのだが――。

■今後は、本をよく読み、読解力、分析力、解析力などをもった層と、そういう訓練をへない、瞬間瞬間に動物的に対処する層の二極分解が起こるだろう。もちろん前者が社会をひっぱっていく層で、後者がそのあとからメディアの操作等によって「引きずられていく」層である。後者の層が一定数以上になると、ますますおかしな世の中になっていく。子どもの親はもちろん教育関係者や政治家、霞ヶ関の官僚は、現状を深刻に考え、文化の土壌の、これ以上の崩壊を防止するため、何ができるか、もっと真剣に考えて欲しいものだ。このままだと日本の劣化は急速にすすむ、とあらためて思ったことだった。
by katorishu | 2010-08-01 14:09 | 映画演劇