コラム


by katorishu
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ジュゼッペ・トルナトーレ監督の『シチリア!シチリア!』を見た

 12月21日(火)
■昨日、『ニュー・シネア・パラダイス』で少年と映画についての「人生賛歌」を感動的に描いたイタリア映画界の巨匠、ジュゼッペ・トルナトーレ監督の最近作『シチリア!シチリア!』を見た。マフィアの故郷でもありシチリアに羊飼いの子として生まれた主人公が、ムッソリーニの独裁政治、さらに第二次世界大戦後の激動の時代に、どのように生き、家族を形成していったかを、みずみずしい描写で描いていく。マフィアへの対抗心からイタリア共産党に入党、さらに議員になるが、他の国の共産党員にありがちは「教条主義」でも「原理主義」でもなく、イタリア人気質とでもいうのか、ある種のおめでたさ、いい加減さを底に宿した人物像で共感をもてる。

■なにより、シチリア人気質の陽気さ、いい加減さ、アバウトさについての描写がいい。思わず微笑してしまい、今の日本に欠けているのはこれだなと思ったりした。大胆な省略、時間経過の巧みさはさすがである。脚本もトルナトーレ監督が書いており、見習うべき点も多くあった。全編にただよう「シチリア情緒」の質感とでもいった空気がいい。さすが「イタリア映画の巨匠の作」と思った。

■ハリウッド的な起承転結のセオリーに従った盛り上げかたでないのもいい。淡々とした描写の羅列のなかに、確かな手応えをもって生きる男と、その家族、友人らの「暮らし」が浮かび上がる。随所の映画館がでてきて、父が息子をつれて見に行くシーンが効果的に挿入される。トルナトーレ監督は心底から映画がすきなのだなと改めて思う。150分もの長尺だが、長さを感じなかった。銀座の和光ビル裏のシネスイッチ銀座で年末から来年初めにかけてやっています。見て損のない作品として、推薦します。毎度のことながらこういう作品が「単館上映」というのも寂しいことである。
by katorishu | 2010-12-21 09:02 | 映画演劇