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中国映画『唐山大地震』は正当派のホームドラマの秀作

1月11日(火)
■松竹の試写室で中国映画の大作『唐山大地震』を見た。中国で空前の大ヒットを記録した作品で、見逃せないと思った。1976年、中国唐山市で起こった大地震で、たった23秒間の揺れで死者24万人という大被害をだした。

■当時、中国は毛沢東の支配下にあり、国内のマイナス要素はなるべく伝えないという方針のもと、情報は相当制限され、外国などからの支援を要請せず、救助に問題があり、その分被害者を増やした。いわば中国の汚点のひとつだが、今の中国の余裕なのだろう、敢えて映画化した。この地震で一家崩壊の危機におちいった家族に焦点をあて、極上の「ホームドラマ」に仕上げた。地震で町が破壊されるシーンはCGを巧みにつかい圧巻。中国映画の技術は相当なレベルにあると思った。1年前、北京にいき中国の映画関係者らと意見交換したが、その席に出席した著名な制作者などの関係者の名前がスーパーで流れた。

■中身だが――大地震で夫が死亡。双子の姉弟が瓦礫にはさまれ、母はどちらか一方を助けると、一人が圧死する状況に追い込まれる。母親が泣き叫ぶなか、激しく迷いながら息子を選択する。娘は「死亡」し、死体置き場に父親と放置される。ところが雨がふり娘は蘇生する。が、大混乱のなか母親らは娘の蘇生に気づかない。救助にきた人民解放軍の一人が娘を助ける。娘はショックのあまり記憶喪失になっている。解放軍の軍人夫婦は子供がいないので、愛らしい娘を養子として育てる。

■地震を契機に双子の姉弟の運命を宿した2つの家族の人間模様が進展する。20年ほどの時が流れ、四川大地震が発生。救助に赴いた双子の姉弟が瓦礫のなか、劇的な再会を果たす。構造はメロドラマっぽいが、ふたつの家族内の小さな物語が丁寧に描かれ、極上の「ホームドラマ」に仕上がっていた。なにより細部の描き方がじつに丁寧で、人物の機微にふれる描写もよく、心に残る台詞にあふれている。大胆な省略も効果をあげている。

■「失ったものの意味は、失ったあとにわかるの」という母親が何度もリフレーンする台詞が印象的だ。監督はフォン・シャオカンで『ミレニアム・ラブ』などヒット作を連発する逸材。脚本は日本でもヒットした『山の郵便配夫』『ションヤンの酒家』などを担当したヌー・シャオウエイ。母親役のシェイ・ファン、息子役のファン・ダー、娘役のファン・ドンともに素晴らしい演技をしていて、引きつける。

■試写室にすすり泣きが起きていた。とにかく泣かせる。人民解放軍の活躍などいかにも中国映画の匂いはするが、教条主義的なものは希薄。オーバーアクション過多で漫画的な描写の多い日本映画は負けている。これに匹敵する日本映画はこの1年間、作られていないのではないか。3月26日より丸の内ピカデリーほか全国でロードショー。見て損のない佳作である。終わって先日放送された大河ドラマ『江』の第1回を近くの喫茶店でパソコンで見た。比べるのもナンであるが、映像の質、深さともに、あまりのレベルの差に愕然とした。
by katorishu | 2011-01-11 23:01 | 映画演劇