コラム


by katorishu
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珍しい光景

12月28日(火)
 役所や会社は「仕事納め」のところが多いようだが、フリーの物書きには関係がない。
 渋谷で作曲家の如安さんと来年2月11日に上演されるハンセン病ミュージカルの打ち合わせ。電車の中で、ちょっと珍しい光景に出会った。田園都市線の中央部の車両に駒沢大学駅から乗ったところ、数人の人しか立っていず、ほとんどは座っていた。
珍しい光景_b0028235_3135151.jpgぼくの立っている前方の席には左右で14人の客がいたが、そのうち5人が本を読んでいて、携帯でメールをこちょこちょやっている人はゼロ。過日、駒澤大学駅のプラットホームに立っているお客、6人のうち5人が携帯をいじっていたが、それと極めて対象的だった。 
 若い人も年配の人もいて、文庫本や単行本を読んでいる。以前は当たり前の光景であったのだが、近頃ではひどく珍しいものになってしまった。年々、日本人の知力が落ちてきているようで、その原因は読書量の少なさ……と思っていただけに、ちょっと安堵した。
 その後、渋谷の旧東急文化会館裏にある本屋に入ったところ、以前、文芸書や人文科学関係の本のあった棚がすべて漫画にかわっていた。漫画と軽めの若い人向けの絵入りの本の棚だけで、3分の1以上をしめ、あとjはビジネス書ばかり。 文芸ものやちょっと堅い本は、ほとんどおいていない。新書本でさえ、片隅に追いやられていた。
 そうしないと本屋も生き残れないのだろう。それだけ、本を読まなくなった人が増えたということだ。電車の中で読者するひとと、漫画本に占領される本屋。どちらが日本の現実なのか……。(といって、漫画は俗悪などというつもりはなく、存在価値を認めているが、あまりに偏りすぎている)。
 じっさい、国際機関の各種の統計でも、日本の若者の知力、学力は低下の一途をたどっている。大人も、推して知るべしだろう。電車の中の光景は、たまたま遭遇した希有のことなのか、あるいは良い兆候なのか。
 思考力を養い脳を活性化させるには、読書ほど手軽で効果的な方法はないのだが、日々の習慣になっていないと、苦痛なのだろう。かくて、文化的にも日本は三流国への坂を下り降りていく…
by katorishu | 2004-12-29 03:17