ソフィー・マルソー主演の映画『マーガレットと素敵な何か』は心温まる佳作
2011年 08月 04日
■過日フランス映画『マーガレットと素敵な何か』(ソフィー・マルソー主演、ヤン・サミュエル脚本・監督)を試写で見た。かつて少女だった「私」から今のバリバリのキャリアウーマンとなった「私」に手紙が届く。そこから「私」の日常がゆらぎ、辛い過去があぶりだされ、あらためて「明日」を考えるといった作品。
■脚本を12回も改訂したという監督のヤン・サミュエル監督。ソフィー・マルソーのために書いた脚本だというが、これに彼女がのりにのって、仕上がった心温まる話。借金においたてられ住んでいた家を追われる惨めな少女時代。それを忘れようと上昇を目指し努力を重ねてある地位を得たマーガレット。そこに公証人がやってきて、あなたの誕生日に、と7歳の自分から手紙やら思い出の品々が届く。何十通もの手紙が、彼女の過去を掘り起こす。そこには彼女が失った「大事なもの」があった。まるで今の日本をシンボライズしているかのようだ。
■「失ったもののなかに大事なものがある」というメッセージが、素直につたわってきて、心が洗われる。ソフィー・マルソーの魅力が全編にあふれ、ファンには応えられない映画。波瀾万丈のハリウッド的な山あり谷ありの物語ではないが、巧緻に仕組まれた脚本、リズムのある演出、ソフィー・マルソーの魅力を十二分にひきだした監督術。ともに一級の、ヒューマン・コメディ。
■ハリウッド映画とはひと味ちがったフランス映画のエスプリも感じさせ、楽しく見ることができた。9月に銀座シネスイッチで公開。順次全国展開していくというが、こういう佳作が単館上映というのは寂しい。テレビなどでほとんどPRしないので、こういう映画があるということ自体を知らない人が多い。残念なことである。