コラム


by katorishu
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パチンコにはまる日本人

 5月2日(火)
■東京は雨。雨の日はどうも気持ちが暗くなる。犬ではないが歩かないとどうも体調が悪い。子供ころ「落ち着きのない子」といわれていた。それが習性になっているのか、動くこと、歩くことが好きである。かといって、スポーツジムなどに行く気にはならない。本日、雨天にもかかわらず、ふらふらと家をでて近くのコーヒー店にいった。隣の席に70年配の二人の男性がきて話し始めた。こちらは携帯パソコンをだしたり、スマホを指で操作したり、資料を読んだりしていたが、そのうち、「鬼平犯科帳のあそこが鍵だ」とか「いや、ルパン三世がいいよ。ありゃなかなかだ」といった話になった。テレビ番組のことを話しているのかと思ったら、なんとパチンコの話であった。パチンコの台にテレビ番組のキャラクターが登場し、それがお客を誘引しているのである。(やれやれ)

■昔、パチンコが手動であったころ、凝ったことがある。高田馬場や渋谷、神田あたりの「学生街」にはパチンコの景品に、文学全集それもドストエフスキー全集や哲学書があったのです。隔世の感ですね。ぼくはたいてい打ち止めするまで粘ることが多かったが、現金にかえたことは一度もなかった。よし今度は中央公論版の文学全集をとってやろうなどと思ってチャレンジした。全集そのものを買うより多くのお金を注ぎ込んだにちがいない。時間の無駄だと思って、ある時期からきっぱりとやめてしまったが。現在、駅前の一等地、以前であったら銀行があった場所に、派手な装いのパチンコ屋が多数出来ている。パチンコはひところ30兆円の売り上げがあり、自動車産業の全売り上げに匹敵するといわれた。今でも20兆円ほどの売り上げがあるそうだ。その儲けの一部は北朝鮮に渡っているらしい。





■70の暇なじいさんがパチンコにうつつをぬかす。自由時間をどう使おうが、その人の勝手だが、働き盛りの若者や壮年と思われる人が昼間からいりびたっているのは、感心しない。女性も意外と多い。久しぶりに喫茶店やコーヒー店でテレビドラマの話を聞いたので、テレビドラマ復権の兆しか、と一瞬思って耳をそばだてたのに、がっくりである。二人のじいさんは、パチンコの話を大声で1時間ほど話して出て行った。ウイークデーの午前中、チエーン店のコーヒー店にいってみるとよい。暇なご老人たちが多く、一人できている老人は比較的知的で読書をしている人が多いが、複数できているご老人の話す話題は――じいさんはパチンコ、ばあさんは旅行と食べ物の話が圧倒的に多い。あとは年金と病気の話。たまに小沢や野田がどうのこうのという話もでるが、「同じジジイ」であるぼくには(その類に関心がないので)まるで別の世界である。

■喫茶店や飲み屋では、ひところゴルフの話が多く、さらにその前はプロ野球や相撲の話が多かったが、いまやギャンブルであるパチンコが主流である。そこに投じられるお金の一部がまわりまわって北朝鮮という異様な国をささえる元になっている。悪い冗談かと思えてしまう。一方、パチンコ関連の企業が今や日本経済を支える柱の一つにもなっている。なにしろ20兆円の売り上げである。パチンコにからむ事業で生計を維持している人や企業も多いはず。娯楽として確かに面白いところもあり、現にぼく自身20代のころ、はまったことがあるので、多くの人が惹かれるのはわかるが……。

■1日、7,8時間もこの「遊技」に費やしている人のことを耳にすると、「ああ、もったいない」と思う。パチンコ関連業界には警察の天下りも多いようだし、率直にいって問題である。外国では日本のパチンコは「ギャンブル」と見られている。「駅前の一等地にあれだけ堂々とギャンブル施設が数多くある国はほかにないですね。日本の七不思議のひとつです」と以前、外国人からいわれたことがある。ちなみに、バブル時代、パチンコをヨーロッパやロシアなどにひろげようと試みた人もいたが、結局成功しなかった。パチンコがこれだけ隆盛を誇っている国は、世界中で日本だけである。なぜ、他の国でははやらず日本だけにはやるのか。もしかして、ここに日本と日本人を解く鍵があるかもしれない。
by katorishu | 2012-05-02 22:54 | 映画演劇