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スペイン映画『ブラック・ブレッド』は魂をゆさぶる佳作

 5月7日(月)
■京橋テアトルという試写室でスペイン映画『ブラック・ブレッド』を見た。スペイン映画の巨匠ペドロ・アルモドバル監督の作品をおしのけ、アカデミー賞外国語映画賞やスペイン・アカデミー賞を総なめした映画で、アグスティー・ビジャロンガ監督作品。スペイン内戦時代のカタルーニャ地方が舞台のカタルーニャ語の映画で、人間の心の奥底にひそむ「暗い影」に焦点をあてて描いている。

■少年アンドレウの目を通して、父子の殺人事件の背後にうごめく人間の悪意をするどくあぶりだす。ビジャロンガ監督はインタビューで、「内戦が引き起こした道徳観の荒廃を主軸にすえている」と語る。スペイン内乱の時代を描いたといっても、「人の感情を描いた作品なので、一定の時代の年代記にならないようにした」という。一部神話的ファンタジーの部分もあるが、手堅いリアリズムで正攻法でおしていく。鋭い映像描写で「スペインのデビッド・リンチ」とうたわれているという。

■戦争の一番の問題は人が殺され傷つくことより、理想をなくすことによって心がうつろになることだ、と主人公の少年の父が「政治犯」「殺人犯」として裁かれる前に話す台詞が強く印象に残った。ほとんどの邦画はテレビの影響故か、オーバーアクションで、軽く、わかりやすくに過剰に傾斜していて、この作のように重く深い表現を放棄してしまっている。関係者はこの作にみならって欲しいものである。6月23日より、東京では銀座テアトルシネマとヒューマントラストシネマ渋谷の2館のみで公開。これほどの佳作を2館でしか公開しない日本の映画供給システムは悲しい。
by katorishu | 2012-05-07 23:41 | 映画演劇