コラム


by katorishu
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1975年放送のドラマ『落下傘の青春』を見た。仁科明子宅の地下室で見つかった貴重なビデオ

2月5日(火)
■先日の日曜日、埼玉県川口にあるNHKアーカイブにいき、「アーカイブ映像はみんなの宝だ!」というシンポジウムに顔をだした。そこで1975年放送の単発ドラマ『落下傘の青春』をみた。なかなか立派なホールでちょっとした映画館並みである。夭折した山川方夫の短編『軍国歌謡集』を友人の矢代静一が脚色した作品。大学生である「私」(山本學)が映画俳優の大ちゃん(財津一郎)の下宿に居候。大ちゃんはその下宿の下の道を毎晩のように軍歌を歌って通り過ぎる女性(仁科明子)に密かに恋をしている。勘違いから、「私」と軍歌を歌う女性がデートをすることになり。さらに勘違いから感情がこじれーーといった「行き違い」で、面白く展開する青春コメディといったもの。

■山川方夫は僕の愛読していた短編作家で、20代のころ繰り返し読んだ。そのため一層興味深く見た。このビデオ、じつはNHKに残ってなく、仁科明子の父の岩井半四郎が録画していて、それが仁科宅の地下室で見つかりNHKに寄贈されたもので、日本でただ一本しか残っていない貴重な作品。冒頭の2分が欠けていて全体にノイズが入り画面もきれいではないが、充分鑑賞に値する佳品である。

■オールスタジオ撮りで、セットも4杯程度。出演者も限られているが、全編に「手作り」の良さがあふれており、引き込まれた。お金をかけなくとも、良い脚本、良い演技者、良い演出などのスタッフがいれば、人の心を打つ作品は作れる、と改めて思ったことだった。会場には仁科明子さんがきていて収録当時の思い出を含めインタビューに答えていた。デビュー時代の初々しかった仁科明子さんがすでに還暦ときいて、ああ時は流れたのだなと改めて実感。財津一郎の若々しい演技、山本學の今も変わらぬ誠実な演技等々。あまり技巧を使わずごくまっとうな撮り方。いまでも、こういうドラマのつくりは充分存在価値をもつと思ったことだった。

■後半はスペシャルゲストのトークショー。漫画家の里中満智子さんの卓見が印象に残った。同時にアーカイブの必要性、重要性を改めて感じた。知り合いの脚本家がいたので帰路、赤羽でおりて、知る人ぞ知る「まるます屋」に行ったが、日曜日なのに満員。仕方なく近くのホルモン焼きに入り、近頃のテレビドラマ等について率直に意見交換、歓談して帰宅。過ぎた日々を懐古する日であったが、時に立ち止まって過去を振り返ることも大事であるな、と思ったことだった。
by katorishu | 2013-02-05 11:00 | 映画演劇