コラム


by katorishu
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ハンセン病ミュージカル『チバリヨ』

 2月11日(金)。
 ハンセン病ミュージカル『チバリヨ』が、川越市民会館大ホールで行われた。ハンセン病患者で初めて実名で講演をし本をだした森元美代治さんをモデルにしたもの。公演に先立ち、森元さん本人の短い講演があった。
ハンセン病ミュージカル『チバリヨ』_b0028235_23425052.jpg社会はもちろん家族からも「亡き者」として扱われた、この病気への偏見、誤解を軸に、日本兵とインドネシア人女性との間に生まれた混血女性との結婚、母の死、出席できなかった葬儀、ようやくお墓参りを果たしたことなどを点描する台本にした。
 ミュージカルなので、あまり多くの情報をいれることはできない。それと準備の時間がすくなく、しかもプロとアマチュアの混成なので、正直いってどうなることか一抹の不安があったが、皆さんの努力で無事公演を終了した。
ハンセン病ミュージカル『チバリヨ』_b0028235_23431997.jpgNPOに対する川越市の文化助成事業の一環でもあり、完成度をどうこういうより、多くの人がそれぞれの力をだしあって、ひとつのイベントをなしとげたことの「価値」を評価したい。観客は400人ほど。
この種のイベントの場合、関係者だけの「自己満足」に陥りがちだが、回収された7,80枚のアンケートでも「感動した」「ハンセン病への差別がよくわかった」との感想が多かった。
 こういう作業を通して、これまで接することのなかった、いろいろの人たちと知り合いになれたことが、ぼくにとっては大きな収穫である。
 今回の公演はあくまで「ワンステップ」であり、ふくらましたり削ったりしながら、さらに感動的なハンセン病ミュージカルを……という点で関係者の気持ちは盛り上がった。
 いずれ都内公演、さらに地方公演を行い、最後は森元美代治さんの故郷の喜界島で公演をやりたいものである。そしてこれは「夢」のまた「夢」かもしれないが、インドで公演できれば、などと話し合った。
 森元さんは前日、南アフリカで行われたハンセン病患者の集会からもどったばかり。打ち上げの席で、ゆっくりとお話をしたが、南アフリカの最大の問題は「貧富の格差」であるという。
 黒人の患者は病気や誤解偏見との戦いと同時に貧との戦いに直面しており、悲惨さそのものだという。現在、ハンセン病は特効薬の改良で治りも早く、毎月数錠の薬を投与するだけで劇的に病状が改善するが、彼らは貧困故にその特効薬が手にはいらない。
「貧富の格差が極端になる社会は問題ですね」という森元さんの言葉には実感があった。戦後の日本の繁栄の基礎になったのは「平等社会」であり「中間層」の厚さであるが、この10年ほどで、日本でも経済格差はひろがり、富む者は更に富み、貧しいものはさらに貧しくなる傾向が顕著になっている。
 つまり「中間層」の激減である。貧富の差の拡大は、教育の機会均等も奪うことになるし、社会のモラルの荒廃にもつながる。少子化の遠因にもなっており、日本が直面している大きな問題のひとつである。
by katorishu | 2005-02-12 23:45