地球温暖化と大国のエゴ
2005年 02月 15日
「エスキモー」とばれてきたイヌイットが、「地球温暖化の影響で生存が脅かされている」として今年4月にも、アメリカの人権委員会に「人権侵害」だとして申し立てをするという。(朝日新聞記事)。
大量のエネルギー消費によって地球が温暖化すると数々の実害が地球にもたらされる。これをふせぐため、いろいろな国が集まって、二酸化化炭素などの廃棄ガスを削減させるため「京都議定書」ができたのだが、世界最大の排出国のアメリカが「経済活動に支障をもたらす」として離脱したままである。
自分たちが「高度の消費社会」を保てれば、他は少々犠牲をこうむってもいいというのだろう。大国のエゴイズム以外のなにものでもない。
イヌイットはアラスカ、カナダ、グリーンランド、ロシアに計約15万5000人が暮らし、狩猟によって生計を維持しているのだが、地球の温暖化によって、氷がとけたりして、彼らは生存を脅かされているという。
朝日の記事では、彼らの住んでいるカナダ北部では、海の氷結は昔は10月ごろだった。それが最近では12月下旬にずれ込んだうえ、氷も薄くなったため狩猟中の転落事故が増加。氷河が解けたため小川が激流に変わり、おぼれる人も出ている。永久凍土が解けるなどして沿岸部が浸食された結果、移転を迫られている集落もあるという。
また、朝日新聞の記事によれば、海底に閉じこめられていた有害物質が温暖化で海水中に溶け出し、それを体内に取り込んだ魚やアザラシを、人が食べて健康を害するという懸念もある。スズメバチなど本来南方に生息していた昆虫や鳥も増え、数年前の夏には30度前後の暑い日が1カ月も続いたという。
今はごく一部に限定されているが、このままアメリカ主導で大量のエネルギー消費が続けば、南極の氷なども溶け出し、海面は上昇し、世界の気候もかわり、多くの地域の人々の生活に甚大が影響がでてくる。
そうなってから手をうっても、もう遅いのである。環境を汚染するのは簡単だが、これを浄化するには膨大なエネルギーと時間がかかる。
「京都議定書」からの離脱を宣言したのは、ブッシュ政権だが、あの政権とこれを支えるネオコン・グループ、およびキリスト教福音派の人達は、自分たちだけの「幸福」を追求するあまり、どうも他への配慮、とりわけ「弱者」「少数者」への配慮に欠けているようだ。
地球温暖化がこのまま進めば、気候が激変し、海流の変化もあって、ヨーロッパがシベリアなみの寒さになると、かつてアメリカのペンタゴン文書でも指摘していた。
地上の寒暖には自然のサイクルがあり、すべてが人の消費活動の結果とはいえないが、アメリカや日本、そして急速に台頭する中国などが、大量にエネルギーを消費することによる、環境悪化については、研究者が早くから指摘し警告をしている。
しかし、経済の論理が先行し、目前の利益を追うあまり、「あとは野となれ山となれ」の気分で地球を痛めつづけている。
イヌイットの生活圏がおびやかされはじめているのは、一つの警鐘であり、やがてこれが全地球上におよぶことになる。
マスメディアもこの種のニュースを繰り返しとりあげ、「大量生産、大量消費」や「便利さ至上主義」のもたらすマイナスの面をもっと強調すべきではないか。それこそ連続キャンペーンをはってしかるべきことだ。
エネルギー消費を抑えるには、先進国の人間が率先して、便利さ至上主義を改めるところからはじめなければならない。車より自転車、自転車より歩くこと。一例をあげれば、そういうふうにライフスタイルを改めることだ。
じつはぼく自身、そのことを実践して「暖衣飽食」をできるだけ排しているが、健康的になったし、世の中の見方もかわったし、なんの支障もない。精神性が強くなり、世の中がよく見えてきたし、当然のことながら、書くものにも良い影響がでてきている。
過日受けた健康診断の担当の医師が話していたが、日本人の食生活は昭和39年の東京オリンピックのときが理想であるという。
あのころの食事をしていれば、糖尿病などの成人病も激減し、健康な人が増えるはず……と担当医は真剣な顔で話していた。
地球が今、重大な岐路にたっていることは確かなようだ。
50年100年後の人間などどうなっても、今の自分たちの生活が良ければそれでいい……というのは、あまりに無責任の事なかれ主義である。
まだ遅くはない。 国の為政者は経済人にはあまり期待できないにしても、一人一人の意識を変えていけば、彼らも変わらざるを得ない。
そうしなければ、人類は生き残れない時期にきているのである。