コラム


by katorishu
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平成25年度の創作テレビドラマ大賞、今年は佳作が誕生する予感

 7月7日(日)
■七夕である。ぼくが子供のころ、七夕もお祭りとならんで子供たちの楽しみのひとつで、どの家でも竹を切ってきて(東京にもけっこう竹藪がありほとんど自由にとることができた。もちろん買う場合もあったが)、そこに星や月やそのほか短冊に切ったものに願いをこめたもの等々をつけた。そんな工作のプロセスが大きな楽しみで、牽牛と織女の二星が年にこの日だけ会うという言い伝えに心をときめかしたものだ。家が織物業を営んでいたので、一層思い入れが強かったのかもしれないが。

■出来合の七夕など売っていなかったので、みんな自分の思い思いのものをつくり、自慢しあったりもした。さて、カミサンは湯河原方面に泊まりの旅行にいったので、久しぶりに一人を味わっている。といってもワーカーホリックなので、7月8月とかけて書く予定の書き下ろしの本の構想を練ったり資料読み。関係者と「とにかく売れて社会の役にたつ本をつくろう」ということで意見が一致。メディアミックスもかねて積極的に展開していく予定。某大手組織のそれなりの地位にある人が、過日の打ち合わせで「お互いビジネスパートナー」としておつきあい願いたいといってくれたので、張り切らざるを得ない。今後、取材等もして「画期的な」ものに仕上げたい。

■昨日は、珍しく1日で28編もの1時間もののドラマ脚本を8時間ほどぶっ続けで放送作家協会の事務局で読んだ。終わると目がしょぼしょぼ疲労困憊も極に達していた。日本放送作家協会とNHKが40年近く連携して実施している創作テレビドラマ大賞の第一審査を頼まれたのである。平成25年度の応募作は近年まれに見る多さで、読み手が足りないのでかり出された。有為の新人の発掘が主眼の「新人賞」であり、ここから何人もの著名脚本家が育っていった。応募作は言葉は悪いがドングリの背比べの作品が9割ほど。しかし、なかには見るべき作もある。昨日読んだ中に、素材といい発想といい構成、台詞といい、「プロ並み」か普通のプロを超えている作品があった。審査員にはタイトルと中身以外知らせない仕組みになっているので、どのような作者なのかわからない。この人は必ずプロとして立派にやっていけると思った。





■もっとも、数年前、最終審査の司会などを何度かやって驚いたことは、読む人の価値観、美意識、好みなどによって、善し悪しが大きく変わることだ。ある人がここが長所として強く押す作品が、ある人にとってはそこが短所であり面白くない、といったケースに毎回遭遇した。人の好み、判断の基準、価値観はこうも多用なのかと唖然としたことを思い出す。それを実体験したことが、この賞に「統括役」の一人として加わったことの最大の収穫であった。

■ともあれ、よくある「並」の作品、シナリオ教室・学校等で教わったマニュアル通りに書いているなと思える作品が圧倒的に多い中、そんなマニュアルを抜けた作品に出会うと嬉しくなる。ただ、それが最終審査作品(8本から10本)の中に残るかどうかは、わからない。竹山洋氏であったか、「脚本家は運だね」といっていたが、それも実感である。運も才能のうちという言葉もあるが。
 ともあれ、ドラマの基礎は脚本である。黒沢明監督がこんなことを書いていた。良いシナリオから良い映画が生まれるが、悪いシナリオから良い映画が生まれることは絶対にない。また今村昌平監督は筆者のインタビューに答え「映画の成否を決めるのは脚本です。脚本の比重が7割、役者が2割、監督の演出力は1割」と語っていた。

■今村監督の場合、作品をつくるとき、脚本家と一緒に旅館に何ヶ月もとまりこんで、一緒に本作りにエネルギーを費やすので、7割の中の半分近くに自分の思いがこもっているはず、という留保をつけなければならないが。いずれにしても、脚本重視が世界の常識である。日本のテレビドラマ界ではちかごろ、脚本軽視がまかり通っていると聞く。これでは世界市場に売ってでることはむずかしい。
以上のようなことは拙作『今村昌平伝説』(河出書房新社)に載っています。すでに絶版で中古品でしか(例えばアマゾン)手にいれることができないのですが。公共の図書館にはたいてい置いてあります。

■そのうち、電子書籍として独自に出そうかとも思っています。ついでながら、アマゾンのkindleで拙作の小説10編ほどだしています。すでに当ブログで紹介しましたが、女子医大生と男子中学生の「奇妙な愛」を描いた『愛を下さい』と、某大手版元から「右からも左からもクレームがつきそうなので出せない」といわれた『望郷異聞上中下巻』は、おすすめです。平成25年度の創作テレビドラマ大賞、今年は佳作が誕生する予感 _b0028235_10184154.jpg
そのほか「大人の童話」と総合タイトルした『貝殻の絵』や『春の雨』『秋の花見』もぜひ読んでほしい作品です。ほとんどPRしていないので、当ブログの読者におかれましては、ぜひアマゾンのキーワード検索で「香取俊介」の項目を見ていただけましたら、幸いです。
by katorishu | 2013-07-07 17:40